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貞操逆転世界のメンズエステで働くことになった  作者: カラスあげます


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10/17

密室の暴走と悪戯の代償

「じゃあ……次は仰向けでお願いしますね~」


俺の言葉に、コトネさんはビクッと身体を跳ねさせた。


「あっ……は、はい……っ」


彼女は力を無くした四つん両腕でなんとか身体を支え直すと、恐る恐る体勢を変え始めた。乱れた髪が頬にまとわりつき、上気した肌は朱を差したように赤く染まっている。


ゆっくりと翻された身体がマットの上に横たわり、彼女は仰向けの姿勢になった。


荒い呼吸に合わせて、薄い布一枚で包まれた胸元が大きく上下している。呼吸はまだ全く整っていない。肩を揺らし、ハァー、ハァーと熱い吐息を漏らすたびに、部屋の中に満ちたアロマの香りが揺れるようだった。


潤んだ瞳はどこか焦点を結ばず、天井の柔らかい間接照明を映してキラキラと輝いている。


汗とオイルが混ざり合い、彼女のスレンダーで滑らかな肌に艶やかな光沢を与えていた。華奢な鎖骨、キュッと引き締まったウエスト、そしてそこからしなやかに伸びる美しい脚。間接照明の橙色の光がその起伏を浮き彫りにし、言葉にできないほど官能的な魅力を放っている。


慶明大学医学部生、そして超一流企業の社長令嬢。そんな雲の上の存在であるはずの彼女が、今や俺の眼下で無防備に体躯を晒し、荒い息を吐いているのだ。


俺は横側に腰を下ろすと、手のひらにたっぷりとオイルを注いだ。


トポトポと小さな音を立てて滴るオイルの感覚が、俺の背徳感をさらに煽り立てる。


「……それじゃあ、前側のケアもしていきますね」


俺は白々しいほど優しく声をかけながら、彼女の肌に手を滑らせた。


指先を羽のように軽く滑らせるフェザータッチ。オイルのぬめりと肌の温もりが混ざり合い、滑らかな刺激を生み出す。胸元からお腹、そして股関節の周りへと、ゆっくりと円を描くように指を滑らせていく。


その指先は、絶妙な距離感で彼女の紐ブラジャーと紐パンツの境界線を撫でまわした。


触れそうで触れない。だが、オイルの滑らかな感触と手のひらから発せられる体温が、下着の僅かな隙間を伝って彼女の皮膚を撫でていく。


「んぁ……っ! あ……っ、ふぁ……っ!」


コトネさんは、もはやなすすべもなく反応した。


指先が僅かに紐の結び目に触れるだけで、彼女の太ももがキュッと強張り、爪先がピンと伸びる。背中をわずかに浮かせ、熱い吐息とともに甘い悲鳴が口から漏れ出していた。


(……おいおい、マジかよ)


俺は心の底から興奮し、そして同時に強烈な優越感を覚えていた。


触れているのは、あくまで下着の周辺や太ももの付け根だ。直接的な部位には指一本触れていない。それなのに、彼女の身体はまるで電流が流れたかのように過剰に跳ね、喘ぎ声を抑えきれずにいる。


(この人、流石に感じすぎているだろ……。男経験がないって言ってたけど……もしかして、自分一人でめちゃくちゃ開発してんじゃないのか……?)


清楚でおしとやかな超お嬢様という外見。その裏に隠された、あまりにも素直で過敏すぎる身体の反応。


俺の脳裏に、ひとつの推測が浮かび上がった。


(もしかしてこの人……かなりMっぽいのか……?)


自分をいたずらに焦らし、翻弄してくる存在に対して、抵抗するどころかどんどん快感に流されていく。その無防備で服従的な姿が、俺の中にある歪んだ支配欲をさらに加速させた。


「……ふふ、ちょっとお顔の近く失礼しますねー」


俺はわざとらしく軽いトーンでそう言った。


そして、施術の体勢を変えるフリをして、彼女の顔の上に跨がるような格好を取った。俗にいう「69」の姿勢だ。


俺の腰が、コトネさんの顔面からわずか10センチほどの至近距離に位置する。


「っ……!? え……っ!?」


コトネさんが驚愕に目を見開いた。


目の前に突如として現れた光景に、彼女の思考は完全にフリーズしたようだった。


それもそのはずだ。興奮と背徳感で完全に滾りきっていた俺の股間は、薄い紙パンツ越しにもはっきりと分かるほど大きく膨らみ、怒張していた。それが、彼女の鼻先、唇のすぐ目と鼻の先に鎮座しているのだ。


元の世界線であれば、こんな行為は一発で逮捕案件、即刻警察行きのアウト行為である。


だが、貞操観念が逆転したこの世界、そしてこのメンズエステの密室においては、俺が主導権を握る絶対的なセラピストだった。


俺は横にある大きな壁鏡越しに、彼女の表情を観察した。


鏡の中で、コトネさんは信じられないといった様子で目を見開いている。そして、その瞳は困惑しながらも、目の前に突きつけられた男の熱く大きく膨らんだ輪郭から目を離せずにいた。釘付けになっているのだ。


(くくっ……最高だな……)


圧倒的な愉悦が全身を駆け巡る。


俺はその体勢を維持したまま、手元では彼女の紙パンツ周りを重点的に焦らし始めた。太ももの内側から恥丘のギリギリのラインまで、オイルをまとわせた指先で滑らかに、そして緩急をつけて刺激していく。


「あ……っ、ふぅ……っ! んく……っ!」


顔の至近距離に突きつけられた男の熱気と、下半身を襲う焦らしの拷問。


二重の刺激に、彼女の理性はボロボロと崩れ落ちていくのが分かった。


5分ほど、じっくりと、生殺しにするように焦らし続けた。


ふと、俺は再び横の鏡に視線を向けた。


そこには、恐ろしいほど官能的な光景が映し出されていた。


「へっ……へっ……っ……」


コトネさんは浅い息を繰り返し、熱に浮かされたような虚ろな目をしていた。そして、目の前にある俺の膨らみに対して、必死に唇を寄せ、小さな舌をペロリと伸ばそうとしていたのだ。


少しでも届かせようと、喉を鳴らしながら必死に顔を近づけようとするその姿。


純粋なお嬢様が、欲望に抗えず、男のパンツに自ら触れようとしている。


強烈な優越感と快感が俺の脳内物質を爆発させた。


俺はふと思いつき、その体勢のまま、どこか白々しい世間話のようなトーンで話しかけた。


「そういえば……言ってませんでしたけど、このお店にはさらに追加のオプションというものがありましてね……」


「っ……!? ふぁ……え……?」


コトネさんはピクッと肩を跳ねさせ、我に返ったように瞳を泳がせた。舌を引っ込め、ハッとした様子で相槌を打つ。


「追……加……オプション……ですか……っ?」


「ええ。追加で4000円ほど払っていただくと、女性のお客様とセラピストが双方全裸になる『フルオプション』というものがあるんですよ」


俺は鏡越しの彼女の反応を見つめながら、ゆったりと言葉を続けた。


「他のセラピストさんとかだと……その体勢のまま、行くとこまで行っちゃうこともあるみたいですよ……?」


その言葉を聞いた瞬間、コトネさんの顔がパッと上気し、瞳に強い光が宿った。


「っ……! フ、フルオプション……っ! 私、それ入れたいです……っ! いれたいです……!!」


彼女は焦ったように声を張り上げた。荒い息を吐きながら、必死に俺を見上げようとする。


「お金……お金なら払います……! いくらでも払いますから……っ!!」


案の定の反応だった。


快感の波に呑まれ、焦らしの拷問に耐えかねた彼女は、喉から手が出るほどその「先」を欲していたのだ。


だが、俺はクスクスと意悪く笑った。


「えー?w ダメですよー」


「な……っ!? なんでですか……っ!? お金なら、ちゃんとお支払いします……っ!」


拒絶されたコトネさんは、信じられないものを見るような目でショックを受け、声を震わせた。今にも泣き出しそうな、すがるような表情だ。


俺はニヤリと嫌らしい笑みを浮かべ、彼女に聞こえるように低く囁いた。


「だってさっきから……僕のパンツ舐めようとして、必死でしたよねえ?」


「っ―――!?」


コトネさんの身体が、凍りついたように固まった。


「それに……コトネさん、こんなに敏感なんですから。オプションなんて作らなくても、このままで十分満足できそうじゃないですかw」


「あ……っ! そ、それは……っ! 違っ……私、そんな……っ!」


ばれていた。自分の痴態が、すべて鏡越しに見破られていたのだと悟った瞬間、彼女の顔はゆでダコのように真っ赤に染まった。


しどろもどろになりながら、必死に言い訳を口にしようとするコトネさん。


「ち、違くて……ただ、目の前にあったから……うっかり……っ!」


「はいはい、わかってますよ~笑」


パニックになって弁明を続ける彼女を見ていて、俺は少しだけかわいそうになってきた。


(ま、最後くらいサービスしてあげないとな)


「それじゃあ……そろそろ時間もあんまりないので、仕上げに行きますねー」


「え……っ、あ……っ」


俺は腰をわずかに下ろし、紙パンツの膨らみの部分を、コトネさんの顔面、唇へとドッシリと思い切り押し付けた。


「むぐっ……!? んんーーーっ!?」


彼女の口元が、俺の熱い膨らみで完全に塞がれた。


声を封じ込められた彼女の上で、俺は下半身への手の動きを一気に加速させた。


それまでの優しく撫でるようなタッチから一転、滑らかなオイルを絡めた手つきで、彼女の紙パンツの隙間に指をグイグイと侵入させていく。


「むぐううっ!? ん、んんーーーっ!?」


直接触れられる秘部の熱と、顔を覆う男の体温。


コトネさんは目を見開き、全身を激しく震わせた。逃げようにも、顔の上に乗せられた俺の重みと、下半身を支配する強烈な快感の手つきに、身動き一つ取れない。


「んむ……っ! んーっ! んーっ!」


そして最後の仕上げとして、俺は身をかがめると、彼女の薄い下腹部から恥丘のラインにかけて、自身の舌でれろーっと一気に舐め上げてやった。


「―――――っっっっ!??!?!?」


電撃が走ったかのように、コトネさんの腰が跳ね上がった。


「ふぐううううっ……!!!!」


声にならない悲鳴とともに、彼女の身体がピンと硬直し、弓なりにしなった。


限界を超えた快感の波が彼女を飲み込み、一瞬で絶頂へと叩き落とされたのだ。ガクガクと足先まで震え、彼女はあっけなく崩れ去るようにマットの上で脱力した。


その直後。


ピピピピ、ピピピピ……。


部屋の隅に置かれたタイマーが、無機質な電子音を鳴らした。


「あ、終わりましたw」


俺はポンと手を叩き、すっと彼女の上から退いた。


「……ふぅ。じゃあ、シャワー浴びてきてくださいねー」


俺は何事もなかったかのように爽やかな笑みを浮かべ、バスタオルを差し出した。


マットの上で横たわるコトネさんは、ハァ……ハァ……と途切れ途切れの息を吐きながら、どこか茫然とした様子で空を見つめていた。


「…………」


彼女は愕然とした表情のまま、感情が抜け落ちたかのような足取りでフラフラと立ち上がり、シャワー室へと消えていった。


(……あれ? さすがにやりすぎたか……?)


シャワーの水の音が聞こえてくる中、俺は急に冷め始めた頭で自分のおこなった行為を振り返った。


(いや、でもサービスの一環だしな……。あっちも気持ちよくなってたわけだし……)


自分に言い聞かせながら、上がってきた彼女のために温かいハーブティーを準備した。


しばらくして、着替えを終えたコトネさんがシャワー室から出てきた。髪はまだ少し湿っており、顔にはうっすらと赤みが残っている。


彼女はソファに腰掛けると、差し出されたお茶のカップを両手で包み込み、じっと手元を見つめて黙り込んでいた。


重苦しい静寂が部屋を包む。


(やばい、怒ってるのかな……。クレーム入れられたらどうしよう……)


俺が内心で焦り始めた、その時だった。


コトネさんが、ふっと顔を上げた。


そこには、先ほどまでの呆然とした様子はなく、満面の、どこか恐ろしいほどに純粋な笑顔が浮かべられていた。


「コウさん……今日は、本当にありがとうございました」


「え……? あ、はい……」


「私……こんな経験、生まれて初めてでした。すごく、すごく……良い経験になりました」


彼女は萌え袖にした袖口でカップをぎゅっと握りしめ、まっすぐな瞳で俺を見つめてきた。


「絶対に、また来ますので……っ。私のこと、覚えていてくださいね……?」


その笑顔と、言葉の奥に潜む底知れぬ執着のような響きに、俺は背筋にひやっとした冷たいものを感じた。


「あ……はい、勿論です……」


コトネさんは満足そうに微笑むと、深く一礼して部屋を去っていった。


彼女が去り、静まり返った室内で、俺はポツンと取り残された。


部屋に残されたアロマの香りと、先ほどまでの熱気。


冷や汗がタラリと額を伝った。


(やばい……俺、とんでもないことをしちゃったんじゃないか……?)


改めて冷静になると、恐ろしさが押し寄せてきた。


相手は慶明大学医学部生。実家は超金持ちの社長令嬢だ。


そんな本物のお嬢様に対して、いくらメンズエステの密室とはいえ、合意も曖昧なままあそこまで無茶苦茶な施術をし、パンツ越しとはいえ、男性器を顔面に押し付けたのだ。


もし彼女が冷静になり、親や警察に相談したら?


「メンズエステで過剰な猥褻行為をされた」と訴えられたら、俺の人生は一発で終了する。退学どころか逮捕だ。


(あかん、これは絶対にヤバい……! 距離を置かないと命に関わる……!)


俺はすぐさまスマホを取り出し、店長の神崎さんにメッセージを送った。


『お疲れ様です。本日担当したコトネ様ですが、相性が良くないと感じたため、大変申し訳ありませんが次回からNG指名(NG担当)に設定していただけないでしょうか』


店長からはすぐに返信が来た。


『お疲れ様。コウ君がNG出すなんて珍しいね! 分かった、システムに登録しておくよ。お疲れ様~』


店長にとっては、単なる指名拒否の軽いやり取りに過ぎない。


(よし……これでいい。これで彼女と会うことは二度とないはずだ……)


俺は大きく安堵の息を吐き出し、胸を撫でおろしたのだった。



◇



それから、3週間が経過した。


季節はすっかり深まり、街を行く人々の装いも長袖が目立つようになっていた。


休日の午後。俺は大学近くの落ち着いた喫茶店にいた。


店内はレトロな木目調の内装で、ジャズが静かに流れている。ボックス席のふかふかしたソファに一人で腰掛け、最近奮発して買ったノートパソコンを開いて大学の課題をこなしていた。


(ふぅ……何とか課題も目処がついたな)


キーボードを叩く指を止め、俺はコーヒーを一口すすった。


この3週間で、俺の生活は劇的に変化していた。


メンズエステの仕事にもすっかり慣れ、リピーターの客も増えたことで、1回の出勤で2万から3万円は手硬く稼げるようになった。


自分から主導権を握って積極的に攻めていく施術スタイルを身につけたおかげで、波長が合って素直に身体を委ねてくれるお客様が増えたのも大きかった。あるいは単に、日常の疲れを癒やす本格的なマッサージや、俺との何気ない会話そのものを楽しみに通ってくれる落ち着いたお客様も増えてきている。


仕事を始めたばかりの頃のように、客からの過剰なセクハラにヒヤヒヤしながら必死で躱し、なんとかやり過ごすような綱渡りの勤務はめっきり減っていたのだ。


週に4日ほど出勤すれば、1週間で10万円。月収にすれば40万円近くになる。


貧乏学生だった頃には考えられない金額だ。


着ている服も、以前のようなヨレヨレのファストファッションではなく、少し高めのブランドのものを選べるようになった。ノートパソコンも最新型だ。


金銭的な余裕は、心と外見に明らかな自信をもたらしていた。自分の人生が、確実に良い方向へと好転しているという強い実感がそこにはあった。


「……あ」


スマホの出勤スケジュール画面を確認していた俺は、思わず眉をひそめた。


(げ……明日、吉田さんの予約が入ってんじゃん……)


吉田さん。常連の太客だが、施術のたびに猛烈なアプローチをかけてくる肉食系の女性客だ。


(そろそろ本当に押し倒されそうで怖いんだよな……。いや、待てよ? 逆にこっちから攻めて主導権を握るのもアリか……?)


そんな風に、仕事の攻略法を呑気に考えていた、その時だった。


「横、失礼しますねー」


柔らかく、どこか聞き覚えのある鈴を転がすような声が頭上から降ってきた。


(……? ボックス席で横……?)


俺は首をかしげた。


ここは4人掛けのボックス席だ。しかも店内の混雑率は3割程度で、他に空いている席はいくらでもある。わざわざ一人でPCを開いている男の隣に座ってくる理由がない。


違和感を覚えながら、俺は声のした横へと視線を向けた。


そこに立っていた人物の顔を見た瞬間、俺の思考は完全に停止した。


「―――――……!?」


白く透明感のある肌。整った鼻筋。上品で可憐な容姿。


慶明大学医学部生、コトネさんだった。


(な………………に………………!??!?!?!)


心臓がドクンと嫌な音を立てて跳ね上がった。


声すら出ない。驚愕と混乱で喉が張り付き、息が止まる。


「え……っ、あ……っ」


パニックに陥った俺は、反射的にソファから立ち上がろうとした。


しかし、彼女の華奢な手が、すっと俺の肩に置かれた。


見た目からは想像もつかないほど強く、確実な力で、俺の身体はソファへと押し戻された。


「静かにしてくださいね……コウさん……?」


コトネさんは、唇の端に美しい微笑みを浮かべていた。


だが、その瞳には一切の光が宿っておらず、氷のように冷ややかだった。


彼女は俺の隣にすべり込むように腰掛けると、自身の最新型のスマートフォンを操作し、その画面をさっと俺の目の前に突き出してきた。


画面で再生された動画を見て、俺の血の気が一気に引き引いていくのが分かった。


そこに映っていたのは――。


俺が普段出勤している、あのメンズエステの隠れ家マンションの入り口だった。


画面の中の俺は、私服姿で慣れた様子でマンションのカギを開け、エントランスへと入っていく。日付と時刻がしっかりと記録された、明瞭な防犯カメラのようなアングルの映像。


それだけではない。スワイプされた次の画面には、俺が大学のキャンパスを歩いている姿、そしてこの喫茶店に入っていく後ろ姿までが、バッチリと写真に収められていた。


「っ……!? な……これ……っ!?」


絶句する俺の耳元に、コトネさんの甘く、そして逃げ場を完全に塞ぐような低い声が吹きかけられた。


「いろいろ……お話ししたいことがあるので……」


コトネさんは、冷酷なまでに美しい笑みを深めた。


NGを出して逃げ切ったはずの過去が、最悪の形で目の前に突きつけられた。


(あ……あ……あ…………っ)


頭の中が真っ白になり、圧倒的な絶望感が俺の全身を支配していった。

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