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二人の世界 萌咲side

——とりあえず、自分の家へ行ってみたけれども。

たぶんお母さんはこの私のことを知らないだろうから、このまま行くと不審者扱いされそうだし……。とりあえず私は、このまま、琴乃が出てくるのを待っておくしかない……。

表札の前、誰に見られても不審者にしか思えないような恰好で琴乃を待つ私。

すると、いきなりガチャっとドアが開いて、私の顔をした琴乃が出てきた。

「えっ……??」

そういって驚く琴乃。たぶん、この場に私がいるとは思いもしなかったんだろう。

やっぱり、入れ替わってる……声も琴乃が私の声になって、私が琴乃の声に。

「初めまして。えっと、柊琴乃ちゃんだよね??」

そういうと、琴乃は目をかっと見開いて、

「なんで私の名前を知ってるんですか?あっ、そっか、制服のネームプレートか……っていうか、本当に私の顔してる。やっぱり萌咲ちゃんと入れ替わったってこと??」

入れ替わりということが話に出てきて、私は再び口を開く。

「そうそう、その事なんだけど、私のこと知ってる??」

私のこと知ってる??なんて、自意識過剰な人みたい。だけど、今回はそれを確認せざるを得なかった。

「もちろん知ってます……!!!私、Sweet♡→Princess水主萌咲ちゃんのファンクラブ第一号なんですよ……!!!!!!」

わぁ、スイプリを推してくれてたんだ……。

「えぇと、私のことを推してくれててすごくうれしいんだけど、もうお仕事始まってるよ??」

私の言葉に、え?という顔をする琴乃。

「始まってる、って、今、7時ですよ……?」

ありえないというような表情。

だけど今は、体育番組の収録のはず。あと15分で終わるから無理かも……。

「とりあえず、連絡先交換しよ?今日のスケジュール送るから。TV局とかも詳しく描くよ」

こんな状況なのに、歓喜を顔に表す琴乃。いったい、どうしたの……??

「嘘……あこがれの萌咲ちゃんと連絡先交換なんて嘘みたい。それに、一緒に話してる。これ夢じゃないかな????頬をつねってもいたい。これ夢じゃないの?ほんとなの?」

なぜか頬を勢いよくつねりはじめた琴乃を何とか止める。

「琴乃、これ夢じゃないよ。QRコード出して」

おどおどとスマホを取り出し、コードを出す琴乃。私はすぐさまそれを読み取り、友達追加した。

「……よし。これで大丈夫。じゃあこれからスケジュール送るから、〇□テレビ局に移動してね」

まだおどおどしている琴乃に言い聞かせ、〇□テレビ局へ移動させる。

と、マネージャーから電話がきた。

『ちょっと萌咲!なんで体育番組出なかったの!?』

顔が見えないけれど、声だけど鬼の形相をしていることがわかる。

「すみません。実はちょっとのどが痛くて」

琴乃と入れ替わったなんて言えないから、嘘を吐く。

『あら?そう?萌咲にしては珍しいわね。いっつも風邪ひいても仕事をするのに。というか、萌咲声代わったわね。のどが痛いからかしら』

あ……そっか、今の私は琴乃の声だから、怪しまれちゃう。のどが痛いって言ってよかった……。だけど、これからはそうも言えない。琴乃に、しっかり言い訳を考えてもらわなきゃ……。

「次のお仕事から参加するので、□□テレビ局で会いましょう」

『えぇ、わかったわ。お大事に』

そういって、プツッと切れた電話。

私は、琴乃に自分の携帯を渡した。

「え?なんで……?」

驚いている琴乃に、私は説明する。

「私のスマホの方にマネージャーとかメンバーの連絡先が入ってるから、逆にしないとマネージャーの電話に出られないでしょう?パスワードは00519。じゃあ、琴乃のスマホかして」

すっかり納得した琴乃。私は、琴乃からスマホをもらって、ポケットにしまった。

「パスワードは00324だよ」

00324……忘れないように、手帳にメモをしておく。

「ところで萌咲ちゃん。私、今、中学1年生なんだけどさ。学校行かないとだめだから、私の代わりに学校に行ってくれない?代わりと言ったらなんだけど、私がお仕事をするから。あと、実は私、特待生で学校に入学してるから、学年の総合ランキングTOP3には入らなくちゃいけないんだけど」

嘘……本当に、私が学校に通えるの?

Star学園には、お仕事が忙しいからほぼ行っていなかった。だけど、クイズ番組とか、そういうのがあるかもしれないから、帰ってからの勉強は続けていたのだ。

マネージャーやメンバーには別に勉強しなくてもいいといわれていたけど……そんなことが、今、こんなことに役立つなんて。

「うん。それ、引き受ける」

「よかったぁ~じゃあ、こっちも“うまく”やっとくね。スケジュール毎回チャットで教えてね。あと、私の学校、玉川学園っていう名門で、8時30分までに行けば遅刻じゃないから!スクールバッグの中に時間割とか学校に必要なものが入ってるよ。あと、30分で学校着くよ!」

バイバイ、といって□□テレビ局に行った琴乃を見送り、私も琴乃の家に帰る。

今は8時……と、いうことは……??もう玉川学園に行かなきゃ遅刻する…….。

急いで玉川学園の制服に着替え、スクールバッグを持つ。それから、琴乃のお母さんが準備してくれた朝ご飯を3分で食べた。味わえなかったけど……でも、しょうがない……。というか、いつぶりだろう……お母さんの手料理を食べたのは。なんか妙に懐かしくなったけど、ゆっくりしてる暇はないので、せっせと向かう。

私、友達出来るかな……???Star学園にもほぼ登校できていなかったし……初めての普通の生活・学校にうれしさを抱きながら、私は遅刻しないようにダッシュで玉川学園へ走ったのであった——


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