エプローグ
朝。
静かな光が、部屋に差し込む。
カーテンの隙間から入る光が、やけにやわらかい。
「……朝か」
ゆっくり目を開ける。
体は少し痛い。
昨日のことが、夢じゃないって証拠みたいに。
「……ほんとに終わったんだな」
小さくつぶやく。
そのとき——
「起きました?」
聞き慣れた声。
振り向くと、陽菜がいた。
エプロン姿。
「……なんでいるんだよ」
「なんでって、いますよ普通に」
ちょっとムッとした顔。
思わず笑う。
「……普通、か」
その“普通”が、こんなに安心するなんて思わなかった。
「ごはん、できてます」
「おう」
立ち上がる。
少しふらつく。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫だって」
そう言いながら、テーブルへ向かう。
湯気の立つ朝ごはん。
なんでもない景色。
でも——
「……うまそう」
心から、そう思えた。
「ちゃんと食べてくださいね」
「わかってる」
向かいに座る陽菜。
昨日の緊張なんて、もうない。
ただの——日常。
しばらく、静かに食べる。
その静けさが、心地いい。
「……なあ」
「はい?」
「これから、どうする?」
少しだけ、考える。
未来のこと。
今までは、考えたこともなかった。
でも——
「……考えてねえ」
正直に言う。
「でも」
箸を置く。
「もう逃げない」
まっすぐ、陽菜を見る。
「ちゃんと選んで生きる」
その言葉に、陽菜はゆっくり笑う。
「……いいと思います」
「お前は?」
「私は——」
少しだけ間を置く。
「隣にいます」
シンプルな答え。
でも——
それで十分だった。
「……そっか」
自然と、笑う。
外に出る。
空は青い。
昨日と同じ場所とは思えないくらい、穏やかだ。
「……平和だな」
「ですね」
並んで歩く。
何も特別なことはない。
でも——
一歩一歩が、確かに前に進んでいる。
ふと、立ち止まる。
「……どうしました?」
「いや」
少しだけ、照れながら——
手を差し出す。
「……行くぞ」
陽菜は、一瞬驚いて——
すぐに、笑う。
「……はい」
手を取る。
しっかりと。
離れないように。
過去は消えない。
でも——
それでも進める。
誰かと一緒なら。
新しい一日が、始まる。
物語は終わった。
でも——
二人の未来は、これからだ。
これで終わりです。読んでいただきありがとうございました!




