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コディの泉  作者: 天猫紅楼
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コディとの再会

 カカの木への道順など、もう覚えていない。

 あの時はひたすら自分の背中でぐったりしているコディを気に掛けていたので、道を覚えるどころではなかったのだ。

 それでは何故、シーノは城へと戻ることが出来たのか……それはシーノ本人にもわからなかった。 気が付いたら城の前に居たからだ。 だいたいコディの存在自体、不可思議なものだ。 何らかの力が働いたのか……全く分からない。

 だからシーノは、ただカカの木を思って走った。

 覚えている限りのカカの木の姿とコディを思って、全速力で走った。

 

 

 その時だった。ザンッと頭上の枝から何かが落ちてきた。

 

「!」

 

 身構えたシーノの前に何かの気配。

 

「コディ!」

 

 目の前には、あの時出会ったばかりの頃のいたずらっ子のような笑顔を見せたコディが立っていた。

 

「コディ……元気になったのか?」

 するとコディはクルクルっと回ってニッコリとした。

 《元気だ!》

 そうして、ガバッとシーノに襲い掛かってきた……と思った。

 

「!」

 

 無抵抗で目だけをきつく閉じたシーノは、しばらく経っても何も起こらないのに怪訝に思って、恐る恐る目を開けた。 シーノの両肩に手を掛けたコディは、大きな目をしばたいてシーノを見つめている。

 

 《どうした?》

 

 相変わらず、頭に直接入ってくる声だ。

 シーノは近すぎるコディに戸惑いながら言った。

 

「な……殴ったり、するんじゃないのか?」

 

 それを聞いたコディは、首を傾げた。

 《なんでだ?》

「なんでって……」

 シーノはもっと戸惑っていた。

「俺はお前にひどいことをしたんだぞ?」

 自分で言うのも変だが……そうなんだから仕方ない。

 

 コディはピョンッと離れた。

 

 《そうだけど、助けてくれた。 だから許せって、カカが言った》

「カカの木が?」

 《そうだよ。 だからコディはシーノとまた友達だ》

 コディは一点の曇りもない笑顔を見せた。

 だがシーノはまだ確かめなくてはならなかった。

「コディは、どう思ってるんだ?」

 また首を傾げた。

「カカの木がそう言ったかもしれないけど、コディ自身は、どう思ってる? 痛くて怖い思いをしたんだぞ」

 

 だから……自分で言うのもおかしい話だ。 まるで罰を欲しているみたいに……

 でも、カカの木の言葉は普通に嬉しい。 本当に素直に受け取っていいのか……そんな心境を察したように、コディは優しく笑った。

 

 

 《カカの言葉はコディの言葉。 それに、コディはシーノが大好きだ!》

 

 

 その瞬間、シーノはコディを抱き締めていた。

 懺悔の気持ちが溢れた。

「ごめん、コディ」

 

 なんでこんなに純情なのか……ていうか、自然には怒りや復讐といった負の心はないのか? そういえば以前言ってた。

 

『《見守るだけ。キズつけることは出来ないんだ》』

 

 それはきっと、尊いことなんだろう。

 そして、悲しいこと……

 

 

 変わらぬ瞳で見上げるコディが自分にはとても眩しくて、そして、とても大切に思える。 シーノの口から自然に言葉が流れだした。

 

「これからは、俺がコディを守るよ」

 コディは何も言わずにニッコリと微笑んだ。

 

 

 その時、ガサガサッと草を分け入る音がした。

 

「!」

 

 コディを守るように身構えたシーノの前に、汗だくのロックスが現れた。

「ロックス?」

 驚いているシーノを見ると目を見張り、そして嬉しそうに言った。

 

「シーノ! 良かった、大丈夫か!」

 すぐに、自分の身を案じて追ってきたのだと気付くと、シーノはフッと笑った。

「大丈夫だよ、ロックス」

 シーノの後ろからコディが顔を出した。 ロックスは驚いた。

「シーノ! 大丈夫なのか?」

「大丈夫だって、言ったろ? コディは許してくれたんだ」

 なだめるように言うシーノの肩ごしにコディを見るロックス。 そしてシーノの顔を見てやっと納得したように息を吐いた。

「そうか、良かった」

 やっと三人の間に笑顔が戻った。

 

 

 

 

 それからシーノとロックスの2人はたびたび森へと出向くようになった。

 勿論、コディに会うためだ。

 もうサージヤ ジュニア王もコディを思い出すことは無くなったようで、また以前の静かな森と国の平和が戻った。

 

 

 シーノはコダマの事を教えてくれた町の老婆の所へ行って、コディが森に戻ったことを伝えた。

 城のなかで何が起こっているか分からない老婆はただずっとコダマの身を案じていたという。 無事に森に帰ったと聞き、老婆はとても安心したように、涙を流してシーノに礼を言った。

 だが、そもそも城へと連れて行った張本人でもあるわけだし、かなり複雑な心境のシーノだった。

 


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