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第4話 自主性

【自主性】

じしゅ‐せい

〘 名詞 〙 他に頼らず、自分の力で考えたり行なったりすることのできる性質。



 ――屋上。

 風が強い。

 そして、その風に逆らうように――

 バリリバリリリッ!!

モヒカン「や、やめてくださいぃぃ!!

それだけは!それだけはぁぁ!!」


 床に正座させられたモヒカンの頭から、

 自慢だったモヒカンが、容赦なく刈り上げられていく。

 爽やかな風にのって大空へ駆けていくモヒカンの残穢は、翼を広げ羽ばたくカモメのように…


番長A「ァァン!?

何よその泣き顔は!」


番長B「…それで?

不審者に注意したのに、おめおめ逃げ帰ってきたってわけかぁ?」


モヒカン「ひ、ひぃ……!

だ、だって暴力は許されてなくて……!」


番長C「…。」腕組み


 最後の一刈り。

 無残にも、輝くスキンヘッドが完成する。


番長A「そんなもん、組み手だとかなんだとか言えるじゃないの!」頭ペチーンッ


スキンヘッド(元モヒカン)「アイテッ」


番長B「ここは――

俺たちの学校だ。」


番長B「不審者に、好き勝手させんじゃねえぞ?」


番長A「良いから追い出してきなさい。

次はーーー無いわよ?」


スキンヘッド「は、はい!!

よ、喜んでぇ!!」


 スキンヘッドは床に頭を擦りつけ、そのまま転げ落ちるように屋上を後にした。


 屋上には

 ――超覚醒高校を支配する、三人の影。



 ――校長室。

校長「いやぁ!

来てくれて本当にありがとう、大風紀尊くん!!」


 満面の笑みで握手を求める校長。

校長「君はね、我が校の誇りだ!

世界大統領“直前”まで行った男!」


教頭「まさに英雄!

自慢のOBだよ!!」イヨッ!


ミコト「いえいえ、それほどでもないですよ。」


校長「そんな英雄が風紀を正してくれるとは!


…今の生徒には私たちも手を焼いていてね!

協力は惜しまない!

何でも言ってくれたまえ!!」


 横で、由美が少し緊張した面持ちで頭を下げる。

由美「……ありがとうございます」


校長「…さて」

 校長の表情が、少しだけ曇る。

校長「我が校の問題は……

“三人の番長”だ」



〜超覚醒高校 バババババ番長ォォォ!!!!〜

超覚醒高校に入学し、その強すぎる個性から日陰を歩いていた3人。

しかし、多様性時代になったことで"強烈な個性"は"激烈な主張"となり学校全体を支配したッッッ!


時代を盾にされ、注意出来ない教師陣

番長sを盾にして好き勝手できるため、彼らを支持する生徒たち

彼らの掲げる"多様性の矛"は、名門高校を容易く貫いたッッッ!


ーーーーーー


一人は、

女性が虐げられた歴史を糾弾する女男

通称「ヒステリックヒストリー」!!


ガンマ!!!!


ーーーーーー


生命を尊び、血と肉を嫌悪する男!!

動物由来の物は使わないッ!

通称「食彩の異教徒(マッド菜園ティスト)」

ベータ!!!!!


ーーーーーー


コイツの声は誰も聞いたことがないー。

彼が放つ殺気に、ヤクザも道を開けたという。


授業中、教師に当てられても無言を貫き、数多の授業を崩壊させたッッッ!

通称「無言の門番ノーアンロックマウスゲートガーディアン


オメガッッッ!!!!!


ーーーーーー


校長「……気づけば、

学校は彼らのものになっていたのであるッッッ!!!」


ミコト「な、なるほど」

 静かに頷くミコト。

由美「校長…なんか凄い熱気の説明、ありがとうございます。」


ミコト「まぁ、早速――

会いにいこう」


教頭「番長たちは、基本屋上にいます。

…どうか、お気をつけて。」



ガラガララッッッ!


 ――その瞬間。

 ドアが勢いよく開いた。


スキンヘッド「邪魔するぜえ!!」

 スキンヘッドになったモヒカンが校長室に乱入する。


教頭「こ、こら!勝手に入るとはーーー。」

スキンヘッド「うるせえ!部屋に入りたいって言う俺の権利を妨げるのかぁぁん!?

何かやましいことでもしてんのか!?!」


教頭「ぐっ…そ、それは」


 スキンヘッドは、一直線にヤミへ突進する。

モヒカン「いいかぁ!?

これは暴力じゃねえ!!

“試合”だァ!!」


スキンヘッド「可愛い後輩に、

指導してくれよ、OBさんよォ!!」


ヤミ「…フッ…良いだろう。

愚か者め」


 ヤミが一歩前に出る。

 スキンヘッドは猛々しい闘牛のように勢いよく拳を前に出す。


その瞬間。


 ――前に突き出したスキンヘッドの手首をミコトが握り、動きを止める。


モヒカン「うッ…!な、なんだてめぇ!」


モヒカンが反対の手を豪快に振りかぶりミコトへ殴りかかる。


ミコト「…指導ならば任せておけ。」


そして殴ろうとするモヒカンヘナタトゥーの右手をを抱え込み、背中に担ぎ上げた。


モヒカンの袖を握り直し、脇の下から抱え込むようにして肘で挟む、

引き手の力で前に引き出しながら体を回転させる。


回転の力と、膝を伸ばす勢いを使う

(以上、『分かりやすい一本背負いの方法』より引用)


モヒカン「おっ?おお…?」


ミコト「そして…

あとは相手の身体の勢いを利用して…ッッッ!」


そして投げた。

それはもう豪快に。美しい芸術のように


校長「イッポォォォ〜ン゙!!」


ミコト「OBはヤミではなく僕だ。


ついでに言うと、女性に手を上げないというのは規律以前に…品性だ。覚えておけ。」


ヤミ「キュゥウン/////」


屋上


ミコト「君たちが、この学校の番長たちか?」


 和式便所を使用するときの姿勢で背を向けた男が、こちらに振り向き睨みつける

ベータ「モヒカンの野郎、結局しくじったのか」


 もう一人、黒髪を粗雑に伸ばしっぱなしにした口紅を塗った男?が薄く微笑みながら答える

ガンマ「あぁら、いいオトコじゃないの。」


 2人の番長が、ゆっくりとミコトたちに近づき向かい合う。

ベータ「仕方ねえな…。俺に任せろ」

ミコト「それなら、まずは君の話を聞かせてくれないか?」


空を揺蕩うカモメに見守られ、

超覚醒高校の決戦が

今、始まるーーーー


◆ 


 最初に前へ出たベータという男は、学ランの袖を豪快に引きちぎった斬新なファッションの大男。


ベータ「俺はベータ」

ベータ「アンタ…普段肉、食うか?


ミコト「…?

ま、まぁ人並みには食べると思うが…。」


ベータ「ふっ。

肉を食うやつってのは、

“無自覚な加害者”だ」


ミコト「加害者?」


ベータ「牛さんにも豚さんにも、生命があんだろッ!

死にたくねえに決まってんだろッ!


でもお前らは気にせず殺し、喰らう!!」


ミコト「…。」

ベータ「これが加害じゃなくてなんだって言うんだ?」


 一拍。


ミコト「では質問だが…」

ミコト「野菜さんの生命を奪ってる君も加害者ではないか?」


ベータ「……は?」


ミコト「野菜さんだって、生命だろう。お魚さんもそうだな。」


ミコト「大切なのは生命への感謝。」


ミコト「そして生命を無駄にしないための規則づくりではないか?」


ベータ「……っ」

 即、沈黙。

ベータ「……。」ダッ


ベータ、逃亡ッッッ

 しかし後にベータは南アジア圏にてブレサリアン(呼吸と水のみで生きる)の道に目覚め、

改めてミコトに戦いを挑むのだが、それはまた別のお話ーーーー。


 次に出てきたのは、腕を組んだ女子。

ガンマ「私はガンマ」

ガンマ「性的弱者である女性の権利を守りたいの。」


ガンマ「あなたのような、男だからという理由だけで優越感に浸り、他者を抑圧していくヤツの言葉なんて、聞こえないわ。」


ミコト「なるほど…。確かに男女の違いは間違いなくある。

ただ、それだけで女性を"弱者"と決めつけるのは早計ではーー。」


ガンマ「アァアアアアア!!聞こえないわァァァァ゙ァ゙!

社会的強者の言葉は聞こえないわァァァ!!!!」


ガンマ「あなたは"男だから優れている"の!!!!

男だからそうやって他者を規則で縛ろうとしているの!!!!」


由美「えぇ…。あなたも確か男性だったはずでは…。」


ガンマ「わ!た!し!は!!

社会的強者でありながら、弱者の女性にも寄り添えるの。


いわば超越者なのよ!!

私しかこの世界から女性は守れないわ。」


ヤミ「ミコト様。ここは私が…。


ガンマと言ったな、ならば女性である私が相手だ。」

 ヤミが即座に前へ。


ヤミ「本来であれば、ミコト様の話を遮った時点で、即断罪なのだが、今回はミコト様の前だ。

正々堂々と貴様を打ちのめしてやろう。」


ガンマ「……へぇ。おもしろいじゃない。

社会的弱者のあなたが、どうしようっての?」


ヤミ「超越者なのだろう?

であれば、社会的弱者の私に、まさか腕力ですら勝てないということはあるまいな。


腕相撲で勝負…はどうだ?」


ガンマ「……ぷぷーーっ!

う、腕相撲…!?

そんなの結果は分かりきってるじゃない!!!


そんなか細い腕で何が出来るのよ!」


 ブチッ

 三秒沈黙の後、ヤミは黙ってドラム缶に肘をつく。


ヤミ「私が優しく言ってるうちが華だ。

さっさと来い。」


ガンマ「……ハァ。

まぁ分からないわよね。

だからこそ私が守ってあげないとダメよね。


いいわ。その代わり私が勝てば全員即刻退場。

二度と口出さないでちょうだい。」


ミコト「し、失礼だが大丈夫なのかヤミ?

奴は結構な巨漢だが…。」


 ヤミはミコトの方へ振り返り、暖かく微笑みながら敬礼をする。


校長「では僭越ながら私が合図を出させていただきます」


 ガンマとヤミ

 両者の手が交わされる。


校長「それでは…


レディ…


ゴォォォォォ!!!!」


 合図と共に、ガンマは全身の力を右腕に集中し、全体重を乗せる。


 丸太ほどの太さの手から闘気が溢れ、筋肉が脈動する。

ガンマ「フンゴォオポボポボボボボボ!!!!」


ヤミ「…ふぅ。ミコト様。

見ていてください!」


刹那ーーー


ドラム缶が弾ける爆音と共に、

ガンマは犬神家の格好でコンクリートの屋上床へ突き刺さっていた。


校長「勝者ァァア!

ヤァァァミィィ!!!」


 最後に残ったのは――

 番長の中でも最も最強かつ最狂と言われる男。オメガ。


 目の前で番長2人がやられる様を見て、表情も変えず何も言わない。


ヤミ「ふっ…。奴だけは私にもなかなか測れないな。

由美、奴の情報はあるか?」


由美「……彼は、、オメガは、全てが謎の男。

多様性の時代ということで、番長は一人に絞らず、三人で決まったけれど…」


由美「"真の番長はオメガだ"って、皆が口を揃えて言ってます。」


ミコト「そうか…。一旦、僕が話を聞いてみよう」


由美「待ってください!!」


歩き出そうとしたミコトを制止する由美

由美「…この学校の生徒会長は、


私です…ッッッ!」


由美「お二人に頼りきりじゃ…

本当に私はただのお飾りになっちゃいます。」


〜やりたくないというのなら、代わってやろう〜


由美「ミコトさんの言葉で、思い出しました。

私は本当は…この高校に憧れて、入学しました。


日本圏でも最高といわれるこの超覚醒高校の生徒会長になりたくて…

誇れる自分になりたかったんだって!」


 由美が、自らの震える足を一発しばきあげ、静かに一歩前に出る。


由美「対話で、分かり合えると思います」

由美「……私は、生徒会長だから」


 オメガが、ゆっくり顔を上げる。


由美(なんて凄まじい眼力、そして津波のようなプレッシャー…!)


オメガ「……。」ウデクミ


由美(怖い…恐い…!

でも…負けたら駄目だ!)


オメガ「………。」


由美「あなたの話を、聞かせてください。」

 由美は一歩ずつ、ゆっくりとオメガに歩み寄る。


オメガ「……。………。…。」


由美「生徒会長として、少しでも寄り添いたいんです!

校則は守るべきです。


でも変えた方が良い校則があれば、話合って、変えていきましょう!」


オメガ「…。……!……。」


 もはや由美とオメガの距離は手の届くところへと近づいた。

ヤミ「ぐっ…あの距離だと

もしオメガが由美に襲いかかれば、さすがに間に合わんぞ。」


ミコト「…いや、信じよう。

彼女の決意を。そしてオメガくんの心を」


由美「あなたの考えを…聞かせてくれないかな?」


オメガ「…ェイヤ校則ハカエナクテモイイデスケド。」


!?!?

蚊の羽音よりも微かな声。

イルカの鳴き声よりも細い声。

しかし超高速ジェット新幹線よりも早口な声。


オメガ「イヤトイウカベツニナンカ…ボクマキコマレタダケデ、フツウニヨクワカンナイトイウカ。

ガッコウッテアンマリワカラナイシコンナモンジヤワナイノ?」


ミコト「…。」

ヤミ「…。」

 由美とオメガは、何やら話をしているようだ。しかもどうやら盛り上がっている。


由美とオメガは、しばらく楽しそうに話して、振り向き笑顔で手を振った。


由美「オメガくん、生徒会に入ることになりました!!」


オメガ「……。……!」


ミコト・ヤミ「ん?」

由美「よ、よく近づいてください!」


オメガ「生徒会庶務ニナリマシタ。

ジ・シューセイデスッ。友達からはオメガトヨバレテマスッ」

 オメガは、超覚醒高校生徒会庶務となった。

 

 暖かい風が頬を撫でる。

 風に吹かれたカモメはもう、どこかへ飛び去っていったようだった。


◆ 




ヤミ「…?待て。ジ・シューセイ(日本圏名 秀正)と言ったか?」


ミコト「どうした?」


ヤミ「ジ・シューセイといえば、

現世界大統領のタ・ヨーセイの一人息子であります!」


ミコト「ななな、なんだってぇ〜!」


 第四話・終わり。

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