第2話 多様性
【多様性】
たよう‐せい〔タヤウ‐〕
いろいろな種類や傾向のものがあること。変化に富むこと。「生物の—を保つ」
◆
世界が一つになってから、二十年あまり。
世界国・日本圏は、表向きは平和そのものだった。
争いは減り、法律は統一され、通貨も言語も一本化された。
様々な効率は上がり、人々は「便利な世界」を手に入れた。
教授「まぁそんなこんなで世界は統合には成功したが、、未だに一部地域での反対活動は残っておる。
他にも宗教観のすり合わせ⋯。世界法律もまだまだ甘い。
更にはコカ・コー◯派とペ◯シ派の争いは今後益々激化していくものと見られ〜ウンタラカンタラ」
ミコト「そうだ⋯。まだまだ世界規律は正しくない⋯。
少子化対策も風紀を乱すような乱雑なものばかりだ。」メモメモ
世界国日本圏で最優秀の大学
【最高大学】
日本圏都会県にある、世界国でも有数の名門
大風 紀尊(おおかぜ みこと通称ミコト)はそんな最高大学の入試試験を首席で合格。
ノートは几帳面。
姿勢は直立。まさに金剛力士像。
整った容姿に負けず劣らず、美しい黒髪の七三分けは一ミリの乱れもない。
彼は神童として、世界大統領になる準備をキッチリバッチリ進めていた。
キーンコーンカーンコーンソーサーイ
教授「おっともう時間か。
今日のところは試験には出ないので。心しておくように〜。
ほんじゃ。」
足早に講義室を出ていく教授
ミコト「さて、、次の講義は“多様性進化論Ⅸ”か……」
ミコトは小さくつぶやく。
多様性。
世界国として統合されてから、よく口にされるようになった言葉。
だが、その定義は曖昧で、人によって都合よく使われているのが現状である。
――多様性は否定しない。
だが⋯規律なき多様性は、ただの混沌ではないだろうか。
ミコトはそう考えていた。
大風家家訓第一条。
「ミコトはとりあえず世界大統領になるべし」
世界大統領になるためには、知識だけでは足りない。
より世界の流れを知り、思想を知り、多くの人の心を知らねばならない。
そう決め、立ち上がる。
次の講義室まで歩く廊下で、たくさんの友人が声をかけてくる。
チャラそうな奴「お、ミコト!この前は本当にありがとな!まじ助かったぜ!」
ミコト「ああ!また困ったときはいつでも言ってくれ!」
チャラ奴「おっふ⋯!///」
文学系っぽい眼鏡少女「あ、ミコトさ⋯くん。」
ミコト「おお!眼鏡ちゃん!
この前は都会県大会決勝見させてもらったよ!本当に素晴らしかった!
あの最後のグラウンドテクニックには魅了された!
日本圏大会も頑張ってくれ!
応援行くからさ!」
眼鏡少女「おっふ⋯!!////」
ヲタキング「おっ、おっ、ミコト氏。この前話していたプリンセスモモキュアの新しいフィギュアを手に入れましたぞ⋯!」
ミコト「おお!なんと素晴らしい造形か⋯!8話は涙が止まらなかったよ。
また今度ゆっくり話そう!」
ヲタキング「おっふ⋯!!!/////」
文武両道、才色兼備
しかし奢らず、人を想い人に想われる男
あまりにも完璧すぎるその男には、もはや嫉妬の余地もない。
ミコト「大風家家訓第55条 ⋯"よくわからんけどとにかく良い人であれ"⋯。
父さん、今日も家訓を遵守してるよ⋯と。」メールポチー
【大風家家訓ゥウウウンン!!!】
別段深い歴史もなけりゃ学もない大風家だが、ミコトを世界大統領とするべく手当たり次第に両親が作ったルールである!
なんかあったらルールにしとけば、生まれながらに規律を守るミコトは徹底的に遵守してきた!!!
ちなみに適当につくっているため家訓内にはたくさんの矛盾があるが⋯ミコトは天性の優しさと鈍感さと頭脳で都合よく解釈してなんやかんや上手くいってるのである!!
カァーカァー
ミコト「さて、今日の風紀部は終わりです!
とりあえず最後の議題"学内の購買について風紀が乱れている件について"は各々案を考えて、来週までに提出してほしい!
学内の風紀を正すために、皆の力が必要です。
どうか、よろしくお願いします。」頭ペコー
風紀部A「はい!ミコト部長!」
風紀部B「僕たちで最高大学をもっと最高の大学にしましょう!」
最高大学学長「ミコトくん!どうか!今後ともよろしく頼むよ!」
ミコト「さて、家に帰って日課のフルマラソンをしなければ⋯ん?」
二度と登場しないモブ男「なあ〜。
なんでお前はそんなにキャワイイんだぁーい?」
二度と登場しないモブ女「ちょ、やーめーてーよ〜」
男女チュッチュ
ミコト「ふう⋯。
おーいお二人さん!」
二度と〜以下略モブ「んー?
⋯み、ミコトくぅん!!?」
ミコト「2人の時間を邪魔してしまって申し訳ありません。
少し良いですか?」
二度モブ「人前でイチャイチャして風紀を乱してすみませんでした!!」ドゲザ⋯
ミコト「おっと、やめてください!
服が汚れてしまいます!」
ミコト「それに⋯愛を育んではならないという規律はありません。
むしろ、少子化が叫ばれる今です。
もっと2人には幸せになってほしいんです。」
モブ「「ミコトくん⋯///」」
ミコト「お二人は18歳を超えていますし⋯
誰かを不快な思いにさせなければ大丈夫です。
そうじゃなくて⋯」
ミコトはモブたちの足元に落ちていたゴミを拾う。
ミコト「君がゴミをポイ捨てしたのを見ました。
公共の場を汚していますし、
これは⋯学内で許可なく廃棄してはならないという規律を破り風紀を乱していますね⋯。」
ゴゴゴゴゴ
モブ「「ひ、ひぇえ〜!今から学内掃除して周りますゥゥゥ」」
ミコト「ふふっ、それはありがたいです!
どうか、よろしくお願いします!」ニコニコ
大風家家訓第5条ォォォ
「異性交遊を無闇に邪魔するべからず。
⋯理由?そんなもん、少子化対策や!」
ミコトが中学生のとき、風紀の乱れとして18歳未満の男女交際をやたら取り締まっていたのを見かねた母・俗子が決めた家訓である!!!
ミコト「さて、僕も帰りますか。」
〜夜。ミコトの部屋〜
ミコト「さて、今日のフルマラソンも終わったし⋯。明々後日の講義の予習をするかな⋯。」
ゴソ…ゴソ…ゴソ…
部屋のどこかから、聞き慣れない音がした。
ミコトは即座に振り返る。
間違いなく、隣の勉強部屋の方から音がする。
ミコト「……誰だ?」
素早く動き、勉強部屋の扉を開ける。
部屋には誰もいない。
ゴソゴソ⋯ゴソゴソ
だが、音は確かにする
――机の方から聞こえていた。
世界最強家具メーカー・ニトロ社の机
素晴らしい機能的な設計と洗練されたデザインが、最高の勉学パフォーマンスを発揮する
36,000セカイマネー(世界通貨以下SM)
ミコトの愛用する机だ。
「まさか……動物でも迷い込んだのかな?」
次の瞬間。
世界最高家具メーカー・ニトロ社の上段引き出しが、内側から勢いよく開いた。
―ガラッ!!
―ドンッ!カッ
「アイタタタ……!」
飛び出してきたのは、青い猫型ロボット⋯ではなく。
軍服のような制服に身を包み黒い眼帯を装着した、黒髪の女の子だった。
◆
飛び出してきた際にぶつけたであろう頭を押さえ、床に転がりながら、少女はぶつぶつと呟く。
「やはりこのタイムマシンはまだまだダメでありますね……
着地衝撃の吸収が…改善の余地が…」ブツブツ
ミコト「……。」
見知らぬ少女。
まるで軍服のような制服。
机から不法侵入
ミコト「――まず、誰だーーー!!」
「君。説明をしてもらおうか」
少女はその声を聞いて、はっと顔を上げる
そして――。
「……あ…あああ!!」
じっと、ミコトの顔を見つめ口をあんぐりと開く
目は見開かれ、口元が震えている。
「そ、その麗しいお目々……!
寸分の狂いもない七三分け……!」
少女は震える手を必死に制御し、俊敏な動きでミコトの前に跪き、祈るようなポーズをとる。
「ま、間違いないであります……!!
世界副大統領ミコト様……!
――の、若かりしお姿!!」
ミコト「……え?」
ミコトの思考が止まる。
「ウォォ。と、尊い……!
若かりしミコト様と対面できるなど……
未来冥利に尽きるであります……!!」
ミコト「いやだから誰だよ!!」
少女は立ち上がりその場で敬礼した。
ヤミ「失礼しました!
私は世界風紀党所属 兼 ミコト様親衛隊二番隊隊長!
所属No.6666
山本ヤミー・デリシャス!
通称ヤミであります!!」
ミコト「……世界風紀党?」
聞き覚えのない単語だった。
どこか誇らしげに、しかし真っ直ぐとミコトを見つめ敬礼の姿勢は崩さない。
ショートボブの黒髪、少しあどけなさが残る顔つきだが自信と規律を感じさせるキリリとした眼。
不審者とは思えないほど凛とした寸分の狂いなき直立。
黒と銀を基調とした制服の着こなしも様になっている。
襟元に輝くバッジには一文字
「風紀」と刻まれていた。
◆
時は21XX+10年ーーーーーー。
7代目世界大統領選挙戦ッッッ!!
世界大統領の選挙ともなると世界国はお祭り騒ぎにどんちゃん騒ぎ!!
パット見平和だが裏では様々な思惑が錯綜し、混沌と無法の争いッッッ!!!
敵対政党との熾烈な票争いに足の引っ張り合いッッッ!!
だが7代目の大統領はもはや投票をするまでもなくほぼ当確とされる人物がいたッッッ
しかし!!!!!
突然の事故により選挙直前に急逝ッッッ!!
次点の候補が繰り上がった…!!!
世界大統領の座、世界法律立法権、世界大統領権力・・・
この世のすべてを手に入れた男
7代目新世界大統領タ・ヨーセイッッッ!!!!
彼が世界大統領就任時に放った一言は、人々を多様性へとかり立てた。
「同性婚して、タトゥーを彫りたい?
やりたきゃやっちまえぇい!
この世のすべては自由!
…あ、暴力は駄目よ。ワシ怖いもん。」
人々は"他の人とは違うこと"を目指し夢を追い続ける。
世はまさに、大多様性時代!!
ドゥンドゥクドゥクドゥンドコドコドコ
アリッタ ケノォ〜…」
ミコト「長い。」ゲシッ
ヤミ「あいたっ!」
ヤミ「こ、ここからが良いところでありますのに⋯」頭ナデナデ
ミコト「意 味 が わ か ら な い !!」
ヤミ「ガーーンッ」白目
ミコト「なんだ君は!
10年後の未来だとかありったけだとかなんだとか…
新手の詐欺なのか!?」
ヤミ「み、ミコト様…!
私のような雑兵に"美しく飛翔する新たな鷺のようだ"などと…!
もったいないお言葉であります!」
ミコト「言ってないな。」
ヤミ「それよりも大変なのであります!!
10年後、悲劇的な事故により亡くなってしまった7代目世界大統領当確のお方こそ、
風紀党総裁 大風 紀尊様!
まさにアナタなのです!
この未来を変えるため、私は秘密超便利機械タイムマシーンで過去に来たのであります!」
ミコト「な、何を言っているんだ…。」
――言ってることは支離滅裂で荒唐無稽。
だが、目の前の少女の必死さと風紀を刻まれたこの少女は演技には見えない。
大風家家訓第3条ォォォ
「いきなり相手の言うことを否定せず、しっかりと話を聞くべしィィ!!!
…だから父さんの話を落ち着いて聞いて?ね?ママ?ちょっとその包丁置いて?」
大切な家訓を思い出し、ミコトは、静かに息を吐いた。
ミコト「……つまり君は、
僕が事故で死んでしまった未来を変えるため、僕に会いに来たと?」
ヤミ「その通りであります!
さすがはミコト様。理解と飲み込みの早さはまさに9Gのネット回線のよう…!」キラキラ
ミコト「それで、事故を防ぐために僕はどうしたら良いんだ?」
ヤミ「はいっ!!車にお気をつけください!!」
ミコト「…ん?」
ヤミ「ミコト様は速度超過して地上ギリギリを飛び奔る車に引かれますので、車にお気をつけください!」
ミコト「え…?それだけ?」
ヤミ「え…?はい。」
アリッタケノォォォ〜
ミコト「いやいや!
他にもあるんじゃないのか!?
そもそも今も車には気をつけている!」
ヤミ「でも轢かれてしまったのであります!!」ギンッ
ミコト「んぐっ…。
ま、まぁ分かった。それだけなら良い。気をつける。
じゃあ君はもう帰りなさい。」
ヤミ「いえ!せっかくなので10年後までこちらの世界を観光、ミコト様のお世話や家事洗濯、風紀の乱れを共に正しながら、私と一緒に未来の課題である少子化対策について議論を…
あっ、でもあれですよ私はまだ経験なくて、突然言われてもああでもミコト様の指令とあらばゴニョゴニ…」
ミコト「何をゴニョゴニョ言っている。
…帰れええええい!」
ヤミ「い、いやでありまぁぁす!せめてまずお写真をォォォ」
ミコト「せめて に まず をつけるなぁぁ」
次の瞬間。
押し合うヤミとミコトの背後で、機械が嫌な音を立て始めた。
ギギ…ギギギ……
ミコト「ん?」
ヤミ「……あ」
ヤミの顔が、みるみる青くなる。
ヤミ「ま、まずいであります……
キックバック……」
光が溢れ、空間が歪む。
ミコト「キックバック?」
ヤミ「説明いたします!
キックバックとは、古代の刈払機(草刈り機)や古代の丸ノコなどが障害物に当たった際に発生する、刃の跳ね返り現象のことで〜」
ミコト「いや意味は知ってるがーーー。」
ギュギュギュオオォオオオオオンガーピーガーシー
激しい音とともに、二人の視界は、白に塗り潰された。
◆
「..サマ....コトサマ...
ミコト様!!!」
ミコト「はっ…!」
――ミコトが目を開けたとき。
そこは21XX年+10年だった。




