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第25話 聖女さま、ソロウェディングする。(3)

「まずは赤ーーー!」


 まずは私服に変身しまして、からの白い光の粒になって弾け飛んで、謎のキラキラ虹色加工で、ウェディングドレスのスカートがぶわっさぁ……! で、腰から胸元もドレス生地がふわっさぁ……! で、右に左にと腕を伸ばせばウェディンググローブが現れて、右に左にと足をのばせばストッキングが足を包み込んで、ウェディングシューズにヘッドドレスも装着して、空中にポン! と現れたウェディングブーケをキャッチして――。


「決めポーーーズッ!」


 アシンメトリーで大きく波打つサイドフリルが豪華な深紅色のウェディングドレスに変身した私は――。


「……からのぉ、青ーーー!」


 まずは私服に変身しまして、からの白い光の粒になって弾け飛んで、謎のキラキラ虹色加工で、ウェディングドレスのスカートがぶわっさぁ……! で、腰から胸元もドレス生地がふわっさぁ……! で、右に左にと腕を伸ばせばウェディンググローブが現れて、右に左にと足をのばせばストッキングが足を包み込んで、以下略――。


「決めポーーーズッ!」


 高級感のあるサテン生地が大人っぽくシックなネイビーのウェディングドレスに変身した私は――。


「……からのぉ、黄色ーーー!」


 まだまだ止まらない。

 まずは私服に変身しまして、からの白い光の粒になって弾け飛んで、謎のキラキラ虹色加工で、ウェディングドレスのスカートがぶわっさぁ……! で、腰から胸元もドレス生地がふわっさぁ……! で、以下略――。


「決めポーーーズッ!」


 スカートのリボン刺繍にバラを施したエレガントさもかわいらしさもある菜の花色のウェディングドレスに変身した私は――。


「……からのぉ、緑ーーー!」


 まだまだ、まだまだ止まらない。

 まずは私服に変身しまして、からの白い光の粒になって弾け飛んで、謎のキラキラ虹色加工で、ウェディングドレスのスカートがぶわっさぁ……! で、腰から胸元もドレス生地がふわっさぁ……! で、以下略――。


「決めポーーーズッ!」


 白のブライトチュールを重ねたやわらかな気品漂うオリーブグリーン色のウェディングドレスに変身した私は――。


「まだまだぁ! 続いて紫ーーー!」


 まずは私服に変身しまして、からの白い光の粒になって弾け飛んで、謎のキラキラ虹色加工で、ウェディングドレスのスカートがぶわっさぁ……! で、以下略――。


「決めポーーーズッ!」


 チュール生地を何枚も重ねたスカートとトップスの白の刺繍が清楚で落ち着いた雰囲気をかもし出すパープルグレー色のウェディングドレスに変身した私は――。


「そして、そして……なんやかんやあって紫色ちゃんが闇堕ちした結果、ラスボス直前最後の壁となって立ちふさがる展開で闇堕ち変身するわけですよぉーな、黒ーーー!」


 うひゃうひゃうひょうひょと笑い声をあげながら腰をみょんとふった。

 パープルグレー色のウェディングドレスが灰紫色の光の粒になって弾け飛んで、謎のキラキラ虹色加工で、ウェディングドレスのスカートがぶわっさぁ……! で、以下略――。


「決めポーーーズッ!」


 チュール生地を何枚も重ねたスカートといい、トップスに刺繍があるところといい、全体的なシルエットはパープルグレー色のウェディングドレスとあまり変わらない。だけど、チュール生地は黒、トップスの下地は白だけど刺繍は黒とシックな色合いのウェディングドレスに変わる。

 淡い灰色の産毛だったひなが漆黒のコクチョウへと姿を変えるようなお色直しに――。


「うぐっふ、うぐふふふっ! ヤバい、黒色ウェディングドレス最高……! 闇堕ちお色直し、最っっっ高……!」


 テンションがだだあがってぐふぐふと笑う。せっかくの上品な漆黒ドレスが台無しな笑い方だけど止まらない。


「子供の頃から大好きだったんだよねー、闇堕ち展開! ……まあ、大っぴらには言えなかったけど」


 乾いた声で笑いながら教会の長椅子に腰かけて思い切り伸びをする。万能聖女さまの万能魔法でウェディングドレスに着替えるのも一瞬とはいえ、ちょっと疲れた。というか、はしゃぎ過ぎた。高い高い天井を仰ぎ見て、ほぉーっと息を吐き出す。

 すると――。


 ぐぅきゅる、ぎゅる、きゅるきゅるきゅるーーー。


「……おう」


 お腹が盛大な音を立てて空腹を訴えた。誰もいなくてよかった。人が聞いていなくてよかった。


「危ない、危ない。誰かに聞かれてたら恥ずか死んでたところだよー。あるいは聖女として社会的に死んでたところだよー」


 とか言いながらバンザーイ、からの、ピッカーーーン!


「ウェディングドレスもいいけれど、結婚式と言えば食事! 料理!」


 まばゆい光があたりを包み込んだかと思うとエレガントぉーな感じの教会からだだっ広い披露宴会場に変わっていた。ホワイトグレーのテーブルクロスがかけられた四人掛けの丸いテーブルがいくつも置かれ、吹き抜けの高い天井にはスワロフスキーのシャンデリアがきらめいている。

 ザ・披露宴会場という感じだけど――。


「いや、一人で食事するのにこの広さは落ち着かないわー」


 なのである。


 バンザーイ、からの、ピッカーーーン!


 今度はホテルのスイートルームくらいの広さに二十人ほどが座れそうな長テーブルが置かれた部屋に変わった。さっきの会場は百人、二百人のゲストを呼ぶサイズ。ここは数人、数十人のゲストを呼ぶサイズの会場だろうか。


「一人で食事するにはやっぱり広いけど、さっきに比べたら全然落ち着いて食べられるし披露宴っぽさもある。ばっちり、ばっちりー」


 なんて言いながら着席。ちなみにウェディングドレスだと動きにくいし食べにくいしなので結婚式にお呼ばれしました風の明るい紫みのある青色のワンピースドレスに着替えている。


『お料理をお持ちしましたにゃー』


 黒タイツ姿のネコ型ロボットがテーブルに料理を置いた。


『前菜のマグロのミ・キュイ、グリーンクスクス、ロックチャイプ、イエローパプリカと燻製トマトのドレッシングですにゃ』


「来たな、呪文料理……ぶひゅ、ぶひゅひゅ……! 誰もいない、誰も見てないのをいいことに遠慮なくおはしでいただいちゃうぞ、いただいちゃうぞーーー! ぶひゃ、ぶひゃひゃ!」


 なんて言いながら表面が軽く炙られているマグロやらイエローパプリカやら、たぶん、きっと、恐らくグリーンクスクスとロックチャイプなのだろう緑色がオシャレぇーな感じでお皿に盛られている料理を一口。


「うんまぁー……」


 私はうっとりとつぶやいた、かと思うと――。


「うんま、うんま、うんまぁぁぁーーー!」


 ガツガツとほお張って、あっという間に完食。すぐさま、黒タイツ姿のネコ型ロボットが次の料理を運んでくる。


『続きまして、スープですにゃ。オマール海老のロブスタービスク、色鮮やかな野菜とルッコラのフランとともに、ですにゃー』


「呪文だ! 呪文料理だ! うひ、うひひ……香ばしいエビの風味のスープがうんまいってことくらいしかわからない……! うひゃ、うひゃひゃひゃ……うんまい!」


『続きまして、魚料理ですにゃ。真鯛のポワレ、ポテトラビオリ、トマトコンフィとアーティチョーク、バルサミコ酢のソースですにゃ』


「うんまい、うんまい、うんまい! うひひひっ! うんまい、うんまい、うんまい! うひゃひゃひゃっ!」


 なんて、きれいなワンピースドレスにも、おいしいだけじゃなくて見た目も美しい料理にも、まったく似つかわしくない笑い声をあげながらガツガツと料理をほお張っていく。


「結婚式の料理がこんなにおいしいなんて……はぁー、前世で食べたときももっとしっかり、がっつり、ゆっくり味わえばよかったなぁー」


 お箸をくわえてため息まじりに言う。

 前世の横山美姫わたしも結婚式には何度か出たことがある。学生時代の友人たちやいとこたちの結婚式。当然、〝結婚式の料理〟というものも食べているのだけど――。


「誰それのあいさつだのウエディングケーキ入刀だのゲストスピーチだのお色直し行ってきますだの演出盛りだくさんだし、同じテーブルの人たちとしゃべりながらの食事だし、テーブルマナーとかよくわかんないし慣れないしで全っっっ然、落ち着いて食べれないんだよねー」


 帰り道にあれがおいしかった、どれの盛り付けのがきれいだったなんて言ってる友人にテキトーにあいづちを打ちながら心の中では絶叫していた。


「あの状況で料理の記憶があるってどういうこと? 料理の記憶があるどころか、しっかり味わってるってどういうこと!? こちとら料理の記憶なんて一切、残ってないどころか食べた記憶すら残ってないんですけどぉーーー!!?」


 誰の目もないのをいいことに全力絶叫して、遠い目をして、ため息を一つ。そういうところが結婚できる、できないの分かれ目。誰の目も気にしないおひとりさまやりたい放題わがまま生活でうきうきしちゃうか、うつうつしちゃうかの分かれ目だよなー、なんて考えながら真鯛のうんちゃらな呪文料理をぱくり。


「……うんまーーーい」


 今度はおいしさにため息をもらす。前世の横山美姫わたしが結婚式で食べた料理もいつかやり直し、食べ直しをしよう。

 そう心に決めたのだった。

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