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政略結婚で継母になったけど、私は【断罪】がしたい ~義理の息子たちを教育しつつ、制裁の準備を進めます~  作者: 野菜ばたけ
【第二章】第二節:『禁止』との対峙

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第11話 貴方に選択肢をあげる



 もしかして私が彼の事を、ただの悪ガキだと思っているとでも思ったのか。

 だとしたら、何だか私に人を見る目がないと思われているようで、あまりいい気はしない。


「だって貴方、一度投げた石で窓ガラスを割った後から、石を投げる嫌がらせは止めたでしょう? あれって、自分でも思った以上に攻撃力があったから、攻撃手段を変えたのよね?」


 たとえばただ純粋に窓ガラスを割ってしまった事自体――屋敷を一部とはいえ破壊してしまった事に気を揉んだ結果だとすれば、庭を歩いていた時の攻撃手段は、別に石でも問題なかった。


 しかし、敢えて水にした。

 ホースなんて、届く範囲が限られるのだから、攻撃もしにくいだろうに。


「ホースが届かない場所には、わざわざ竹筒の水鉄砲まで作る徹底ぶりだもの。貴方の中には、きちんと相手にしてはいけない暴力の範囲がある。分別がないという訳ではないのよ」


 ならば、謝る事だってできる筈なのだ。


 なのにしない。

 理由は、おそらく。


「貴方は自分に正義があると思っている。だから謝る必要性を感じていない」

「そっ、そうだ!」

「だから私はあの時、貴方に『何か言いたい事があるなら、直接言いなさい』と言ったのよ。話をしないと私だって、貴方が謝る必要性がないかどうかなんて、分からないじゃない」

「そ、それは」


 私の言葉に反応したのは、子どもたちではなく傍観者の筈の男だ。


「私には、『リドリト様の『謝る必要性がない根拠』を聞いて、納得したら謝らなくても許す』という事を仰っているように聞こえるのですが」

「そう言っているわ、ノイマン」

「そんな、私はまさか夢でも見ているのでは……?」

「夢じゃあないと、こんな措置は取らないって? 私は正しくない事を正したい、ただそれだけよ。誰も正さないから、仕方がなく私が正しているんじゃない。貴方は私を何だと思っているの」


 ノイマンが目をパチクリとさせている。


 この執事は、私の事を『自分の気に食わない事は、どんなに謝っても許さないような人でなし』だとでも思っているのだろうか。

 だとしたら、激しく心外だ。


 まぁでもいいわ。

 とりあえず、今私が話をしている相手はリドリトなのだし。


 そう思い、改めてリドリトをまっすぐ見据える。


「今ので、私の言いたい事はすべてよ。一通り言い終えたわ。今の話を聞いてこれ以降私に何もしてこない・近づかないのなら、それでよし。今までの事は、一旦なしにしてあげる」


 結局のところ、謝罪を要求したとして、無理やり謝らせても意味はない。

 本人が謝る気にならなければ、よくなかった部分を自身できちんと認めなければ、謝罪もただの張りぼてだ。


 そもそも私の目指すところは、彼らに嫌がらせをする事でもなければ、彼らと良好な関係性を築く事ですらない。

 私の生活、ひいてはこれから本腰を入れようとしている両親周りの調べ物を、邪魔されなければ、事足りる。


 だからこれで接点がなくなるのなら、私としてもなんら問題はない。

 でも。


「それでももし貴方に何か言い分があったり、納得できなかったり、話す気になったりしたら――今度はああいう嫌がらせはなしに、普通に私のところに来なさい。質問には大抵答えるし、言い訳も、貴方が私を嫌う理由も、悪口だって聞いてあげる」


 まぁ、悪口を言われたら、同じだけこっちもやり返すけど。

 私は、逃げも隠れもしないわ。


 最後にそんな言葉を残して、私は彼らの部屋を出た。



 どうやら外では他の使用人たちも、聞き耳を立てていたらしい。

 棒立ちの障害物たちが地味に邪魔だったけど、一連の騒動を通して一つだけ分かった事がある。


 今この屋敷にいる使用人たちは、リドリトやニーケの事を気にかけている。

 おそらく心配しているし、健やかに育つよう、願ってもいるのだろう。


 でなければ、こんな主人たちの会話を盗み聞きするなんて、罰則ものな真似をこんなにも多くの人間がする訳がない。

 私を止めに来た使用人たちの数も、かなり多かった。


 つまりこの子たちは、旦那様にこそ気に留められてはいないけど、親身になる大人が誰も傍にいない訳ではないのだろう。



「まぁ、悪事を働かない限りは、子どもに罪はないわよね」

「何です? 情でも湧きましたか?」

「湧かないわよ。私そんなにお人よしじゃあないもの」

「どうでしょう。ゼリア様ってこう見えて、意外と情に流されやすいところがありますからね」


 でなければ、たとえ両親から「正しくあれ」と言われているとはいえ、他人同士のいざこざに割って入って虐げている側に制裁なんて、加えないでしょう?


 そんな事を言ってくるミリアンに、私はフンと鼻を鳴らしたのだった。



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