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第1章:序列一位の嘲笑と、最初の襲撃

朝のホームルームが始まり、担任が抑揚のない声で連絡事項を読み上げる。その声は、僕の意識の膜を通り抜けて、ただの遠い雑音になっていた。


陸は前の席で教師の話に真面目に耳を傾け、時折ノートに何かを書き込んでいる。密は僕の斜め後ろの席から、時折、心配そうに僕の背中を見つめているのが気配で分かった。彼らの存在だけが、昨夜僕の家に異形の悪魔が押し入ったという非日常の現実を、かろうじて押しとどめていた。


ベリアルは、僕の意識の奥底で冷たい沈黙を保っている。まるで、昨夜の襲撃も、僕の体内にいることも、下らない日常にすぎないかのように。その沈黙は、僕の生命線でありながら、同時に常に監視されているという不気味な感覚を僕に与えた。


二限目の古典の授業が始まってすぐ、僕は耐えきれず机に突っ伏した。激しい頭痛が僕の側頭部を圧迫している。体は鉛のように重く、一秒たりとも起きていることができなかった。


眠りの中でさえ、僕は安心できなかった。夢と現実の狭間で、銀髪の男が僕の心の闇を指さして嘲笑する声が聞こえる。「お前の闇は上質だ。最高の寝床だ」。その声は、僕の孤独と絶望を増幅させた。


どのくらいそうしていたのだろう。チャイムの音で、僕は勢いよく顔を上げた。昼休みだ。


周囲の生徒たちがガヤガヤと話し始め、僕の周りだけが、静かに異物として浮き上がっているように感じた。


「おい、憂、起きたか」


陸が立ち上がり、屈託なく僕を覗き込んだ。彼の瞳は明るく、澄んでいる。その目に、悪魔の影がちらついていないことに、僕は心底安堵した。


「腹減っただろ。購買行こうぜ。今日こそはカレーパンゲットだ」


「……うん」


力なく頷きながら、僕は机の下で、強く拳を握りしめていた。


昨日、ベリアルを狙った悪魔は**「蠅ども」と呼ばれた。そしてベリアルを封印した勢力が「結界」を張ったという。僕が生き残るには、その「結界」や「封印した勢力」**について、知らなければならない。ベリアルの知識は傲慢すぎて、全てを教えてはくれないだろう。


購買へ向かう途中、僕は陸の広い背中に向かって、絞り出すように尋ねた。


「あのね、陸」


「ん? なんだよ、憂。購買まで遠いんだから早く歩けよ」


陸は振り返らず、快活な声で答えた。僕が人と深く関わらない分、陸は学校の情報源であり日常の窓だった。


「陸って、いろんな噂話知ってるじゃない? だから、もし、もし変な噂とか見聞きしたら、僕に教えてほしいんだけど」


僕の切実さと、優しい口調の奥に隠された戸惑いが、陸には伝わらなかったようだ。


「変な噂ぁ? どんなのだよ。UFOとかか?」


陸は悪戯っぽく笑い、僕の肩をバシッと叩いた。その衝撃で、僕の全身がまた冷たく痺れる。


その時、陸の隣を歩いていた密が、鋭い視線を僕に向けた。


「憂、どうしたの? 急に変なこと言い出して」


密は僕の顔をじっと見つめ、不審を隠さない。そして、僕を変な方向に引っ張ろうとしているとでも言いたげに、陸を眉を潜めて睨んだ。


「陸、あんまり憂をからかわないでよ。憂は体調が悪いんだから、変なことを吹き込まないで」


「いや、俺は何も吹き込んでねーよ! 憂から聞いたんだって!」


陸は慌てて否定するが、密はまだ僕の土気色の顔と、僕の周りにあるはずの**「変な匂い」のことに気がかりなようだった。彼女の静かで鋭い観察眼が、僕の非日常の秘密**を執拗に追いかけている。


「ううん、大丈夫だよ、密。陸は悪くない。ちょっと気になることがあって。……本当に、もし何か聞いたら、また教えてね、陸」


僕は、二人の間で軋む空気を和らげようと努めて、陸に改めて念を押した。


「分かったよ。変な噂でも何でも、聞いたら教えてやるよ。それで憂の寝不足が治るならな!」


陸は快く頷いた。


承知いたしました。前回の続きから、主人公の蓮見 憂が泉田 陸から情報を受け取り、悪魔の脅威が続く中で、行動を起こす決意をするまでを描写します。


第1章:序列一位の嘲笑と、最初の襲撃(続き)

教室に入り、席に着く。ベリアルは黙っている。


僕の心の中で、「悪魔の代理戦争」は既に始まっている。そして、僕の「光」である彼らが、その戦争の標的になり得ることを、僕はまだ知らない。


教室と、沈黙の監視者

朝のホームルームが始まり、担任が抑揚のない声で連絡事項を読み上げる。その声は、僕の意識の膜を通り抜けて、ただの遠い雑音になっていた。


陸は前の席で教師の話に真面目に耳を傾け、時折ノートに何かを書き込んでいる。密は僕の斜め後ろの席から、時折、心配そうに僕の背中を見つめているのが気配で分かった。彼らの存在だけが、昨夜僕の家に異形の悪魔が押し入ったという非日常の現実を、かろうじて押しとどめていた。


ベリアルは、僕の意識の奥底で冷たい沈黙を保っている。まるで、昨夜の襲撃も、僕の体内にいることも、下らない日常にすぎないかのように。その沈黙は、僕の生命線でありながら、同時に常に監視されているという不気味な感覚を僕に与えた。


二限目の古典の授業が始まってすぐ、僕は耐えきれず机に突っ伏した。激しい頭痛が僕の側頭部を圧迫している。体は鉛のように重く、一秒たりとも起きていることができなかった。


眠りの中でさえ、僕は安心できなかった。夢と現実の狭間で、銀髪の男が僕の心の闇を指さして嘲笑する声が聞こえる。「お前の闇は上質だ。最高の寝床だ」。その声は、僕の孤独と絶望を増幅させた。


どのくらいそうしていたのだろう。チャイムの音で、僕は勢いよく顔を上げた。昼休みだ。


周囲の生徒たちがガヤガヤと話し始め、僕の周りだけが、静かに異物として浮き上がっているように感じた。


「おい、憂、起きたか」


陸が立ち上がり、屈託なく僕を覗き込んだ。彼の瞳は明るく、澄んでいる。その目に、悪魔の影がちらついていないことに、僕は心底安堵した。


「腹減っただろ。購買行こうぜ。今日こそはカレーパンゲットだ」


「……うん」


力なく頷きながら、僕は机の下で、強く拳を握りしめていた。


昨日、ベリアルを狙った悪魔は**「蠅ども」と呼ばれた。そしてベリアルを封印した勢力が「結界」を張ったという。僕が生き残るには、その「結界」や「封印した勢力」**について、知らなければならない。ベリアルの知識は傲慢すぎて、全てを教えてはくれないだろう。


購買へ向かう途中、僕は陸の広い背中に向かって、絞り出すように尋ねた。


「あのね、陸」


「ん? なんだよ、憂。購買まで遠いんだから早く歩けよ」


陸は振り返らず、快活な声で答えた。僕が人と深く関わらない分、陸は学校の情報源であり日常の窓だった。


「陸って、いろんな噂話知ってるじゃない? だから、もし、もし変な噂とか見聞きしたら、僕に教えてほしいんだけど」


僕の切実さと、優しい口調の奥に隠された戸惑いが、陸には伝わらなかったようだ。


「変な噂ぁ? どんなのだよ。UFOとかか?」


陸は悪戯っぽく笑い、僕の肩をバシッと叩いた。その衝撃で、僕の全身がまた冷たく痺れる。


その時、陸の隣を歩いていた密が、鋭い視線を僕に向けた。


「憂、どうしたの? 急に変なこと言い出して」


密は僕の顔をじっと見つめ、不審を隠さない。そして、僕を変な方向に引っ張ろうとしているとでも言いたげに、陸を眉を潜めて睨んだ。


「陸、あんまり憂をからかわないでよ。憂は体調が悪いんだから、変なことを吹き込まないで」


「いや、俺は何も吹き込んでねーよ! 憂から聞いたんだって!」


陸は慌てて否定するが、密はまだ僕の土気色の顔と、僕の周りにあるはずの**「変な匂い」のことに気がかりなようだった。彼女の静かで鋭い観察眼が、僕の非日常の秘密**を執拗に追いかけている。


「ううん、大丈夫だよ、密。陸は悪くない。ちょっと気になることがあって。……本当に、もし何か聞いたら、また教えてね、陸」


僕は、二人の間で軋む空気を和らげようと努めて、陸に改めて念を押した。


「分かったよ。変な噂でも何でも、聞いたら教えてやるよ。それで憂の寝不足が治るならな!」


陸は快く頷いた。


僕の**「最弱」で「臆病」な心は、生存のために、「神父」や「悪魔祓い」といった闇の情報を必死に求めていた。そして、その情報源が、最も「日常の光」**である幼馴染だという皮肉。


僕は、この光を、悪魔の闇に晒さぬよう、秘密を抱えたまま、重い足取りで昼休みを過ごした。


放課後、揺れる決意

その日の授業は、まともに集中できた時間はほとんどなかった。僕はひたすら机に突っ伏し、眠りと悪夢の境界をさまよっていた。


放課後、陸と密は部活動の用事で先に帰った。僕は立ち上がろうとするが、激しいめまいで体がふらつく。昨夜の悪魔の襲撃、ベリアルの存在、そして今夜また襲われるかもしれないという現実的な恐怖が、僕の疲労を極限まで押し上げていた。


重いリュックを肩にかけ、教室を出ようとしたとき、僕のスマートフォンが震えた。陸からのLINEだ。


「憂! 変な噂、思い出したぜ。前にジジイから聞いた話だけど、駅裏の山の方に、古い廃教会があるんだと。なんでも昔、すごい神父さんがいて、街の悪いもの全部あそこで祓ったってさ。ま、単なる作り話だろうけど、変な噂って言ったらこれしかねーな! 気をつけて帰れよ!」


僕はそのメッセージを、何度も何度も読み返した。


「廃教会」。「神父さん」。「祓った」。


その情報には、僕が求めていた全てが含まれていた。ベリアルを封印した勢力、悪魔と戦う力。それらが、この街の古い噂として、僕の目の前に提示されたのだ。


「フン。『神父』だと? おぞましい蠅の群れの巣窟に、自ら首を突っ込むつもりか」


ベリアルが、意識の奥底から冷たい嫌悪感を伴って囁いた。


「黙れ。他に、方法がないだろう」


僕の気弱さは、自力で悪魔と戦うことを許さない。このまま家にいて、夜が来るたびに異形の悪魔の襲撃に怯える生活に耐えられるはずがない。


僕の目の前には、二つの道があった。


一つは、臆病なまま、この家で静かに死を待つ道。

もう一つは、恐怖に震えながらも、神父という光にすがって生き延びる道。


僕はスマホを握りしめ、冷たい廊下を歩き始めた。体が、恐怖とは違う、切実な生存本能に従って動いていた。


ベリアルの嘲笑と、神父の十字架。


僕は、そのどちらも恐ろしい。だが、死ぬよりはマシだ。


僕の心の中で、最初の目的地が、定まった。


「……廃教会へ、行く」

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