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第3章:最強のチャラ男と、父性の眼差し

「グラツィエ(ありがとう)、シドー。よろしくね、憂くん。怖がらないで。僕たちは、君を助けるためにいるんだ。さあ、まずは君の抱えているものを、僕たちに正直に話してくれないかな?」


ルカから発せられる強大で温かい力は、僕の体内のベリアルを明確に刺激した。


「……貴様。まさか、この男が、この教会にいるとは。神父よ。貴様は、私への嫌がらせとして、歴代最強の『切り札』を呼んだのか?」


ベリアルは、ルカという神父に、特別な警戒心を抱いているようだった。僕の体は、獅堂とはまた違う、ルカから発せられる力に、心地よさと恐ろしさを同時に感じていた。


「ディートロ(後ろ)の悪魔が随分と騒がしいね。君の恐怖を食らって、元気を回復したんだろう」


ルカは、僕の背後を指さしながら、悪魔の存在を確信した口調で言った。その明るい声が、僕にはあまりにも残酷に響いた。


僕の地獄は、二人に増えたが、そのうちの一人は、「助ける」という光を差し伸べてくれていた。僕は、混乱した頭で、ルカの温かい瞳と、獅堂の冷たい瞳を、交互に見つめた。


「デジデリオ(願い)。それが、僕が君に最初に尋ねたいことだ、憂くん」


ルカは、机の前にあった椅子を僕に勧め、自身も椅子に座った。その動作は、まるで古い友人を迎え入れるかのようだった。


「君は、序列一位の悪魔をその体に宿したまま、自らの意志でこの教会に避難してきた。僕たちが君を助けたいと思っているのは真実だ。だから、君が一番何を望んでいるのかを教えてほしい。悪魔から解放されたいのか?それとも、悪魔の力を手に入れ、守るべきものを守りたいのか?」


その問いは、僕が最も避けていた問いだった。


「ルカ、それは誘導尋問だ。この子に悪魔の力などという汚物に言及させるな」


獅堂は、静かにルカを非難した。彼の瞳は、僕の体内の悪魔に向けられたまま、微動だにしない。


「カリシモ(愛しい人)。現実を見よう。この少年は、ベリアルを呼び寄せたほどの闇を持っているんだ。彼の願いが悪魔の力と結びつくのは当然だろう。でも、願いを持つことは、生きる力だ。彼の本当の核を見つける必要がある」


ルカは、僕から視線を逸らさずに、獅堂と対立した。獅堂は、ルカの言葉に強く反論したいようだったが、ルカの穏やかな圧力に押し黙った。


僕は、ルカの瞳から、嘘偽りのない心配を感じていた。


「僕は……僕は元の生活に戻りたい」


僕の声は、震えながらも、はっきりとそう答えた。


「悪魔の力なんて、欲しくない。あんな恐ろしいもの、毎日僕を狙ってくる怪物なんて、いらない。僕は、ただ、普通の少年。陸や密と、何事もない日常を過ごしたいだけなんです」


僕が幼馴染の名前を口にした瞬間、僕の体内にいるベリアルが、冷たい皮肉を吐き出した。


「フン。『普通の少年』だと? お前の本質は、すでに『悪魔の宿主』だ。その愚かな幻想は捨てろ。どうせ、この神父どもも、お前を実験材料としか見ていない」


しかし、ルカは、僕のその素朴で切実な願いを聞いて、悲しそうに目を閉じた。


「そうか。ノン・チンクエッターレ(心配しないで)。君の願いは、僕たちが全力で叶えてあげるよ」


ルカはそう言うと、真剣な面持ちで獅堂の方を向いた。


「シドー。君が僕を呼んだのは、僕の知識と術式が必要だからだろう? 憂くんの願いは『解放』だ。僕たちは悪魔祓い師だ。彼の願いのために、今すぐ協力しよう」


獅堂は、ルカの前向きさと軽やかさに、不満を隠せないようだったが、反論はしなかった。


「……良いでしょう。ですが、彼の体内の悪魔を完全に駆逐するためには、貴方の知識だけでは不十分だ。貴方の言う『解放』は、まずこの少年の闇の核を深く理解することから始まります」


獅堂は、僕の視線を一瞥し、机の上の資料を広げた。


「昨夜、貴方の体から放たれたエネルギーの波動は、ベリアルという悪魔の核が、貴方の心臓の近くに深く根を張っていることを示しました。そして、貴方の精神力は、その悪魔の力を封じ込めると同時に、悪魔の憎悪を増幅させている。貴方の体は、極めて不安定な結界なのです」


獅堂の言葉は、専門的で冷徹だった。僕は、自分が人間ではなく、爆弾のようなものだと宣告された気分だった。


「そこで、憂」


ルカは、雰囲気を和ませるように、笑顔で僕を見た。


「君には、まず僕たちに全てを話してほしい。ベリアルが現れた経緯、君の孤独、そして、昨夜の襲撃の詳細を。全てを把握しなければ、僕たちは**適切な『祝福』**を与えることができないからね」


僕は、混乱した頭で、ルカの温かい瞳と、獅堂の冷たい瞳を、交互に見つめながら、自分の暗い運命を、この二人の神父に委ねるしかなかった。

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