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ボディメンテナンス師  作者: 藤村 託時


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8/18

8.作戦開始

 数分が経過すると、スピーカーから広間全体に誰かの声が響いた。


「お待たせしました。私はマディスト・ペパミントです。ボディを扱って世界中で店舗を持たせていただいております」


 自己紹介が行われると広間にいた人たちがざわついた。


「マディスト・ペパメントってめちゃくちゃ有名人じゃないっすか! 本物ですかね?」

「さすがにこんな大勢の前で偽物が話を始めないんじゃないか」

「でもわざわざE1のこんなところまで来るなんて信じられないですね」

「そんだけ今回の件はデカいってことじゃないっすか?」

いきなりの大物登場で僕たちも半ば信じられない状態だ。

「すみません、今は時間が惜しいので静かにしてもらえないでしょうか」


 そう落ち着いて口調で注意を受けたため、次第に場は静まっていく。


「まず、最初に軽く現状をお話ししないといけません。世界で起こってる被害状況と私たちがこれから乗り込む拠点にいる相手がどういった者たちであるかについてです。先に被害状況から説明しましょう。ここに集まっている皆さんは何かしら被害を受けた方、または被害を知った方だと思われます。そして、おそらくその被害内容はボディに関係していることでしょう。今、世界中でボディに対しての被害が増加しております。その内容は直接的なボディや部品の破壊であったり、ボディメンテナンスの仕事に関わる妨害がメインでした。ただ、そこからエスカレートしボディの破壊に加えて人間を拉致する動きも見せています。私が持っているいくつかの店舗も被害を受けております。従業員の中にはボディを傷つけられたり、攫われた者もいるのです。そのため、私は奴らの頭を抑えるため各地で同志たちに周知を行っているのです」


 なるほどボディメンテナンス界の大物が出てきた理由はこれか…

 調査団から世界中で被害が出ていると話は聞いていたがどうやら本当に敵は派手に動いているようだ。


「次に相手の素性についてですが、捕らえることのできた数名の話を聞く限り組織の思想としてはボディを排除することを目的としているようです。私たちはボディの破壊活動を行っていることから相手団体のことを”ボディブレイカーズ”と呼んでいます。まだ、組織のトップを捕らえることはできておりません。奴らのトップの名前は『木田蛇蛇きだじゃじゃ』という男です。世界中で被害が拡大する前に木田蛇蛇を何としてでも捕まえたいのです。そのため、あなたたちには自分や関係者に危害を加えた敵が構えている拠点へ向かっていただきます。できる限りの情報を収集して、あなたたちのそれぞれにとって最も関係性が高いであろうと推測される情報をこれから提供します。…今まで私たち人類はボディという便利な身体を得たことで、どこか危機感を失っていたのかもしれません。ただ、今は戦わなければいけないのです。どうかご協力をお願いいたします」


 マディスト・ペパメントさんが話し終えたタイミングで、携帯端末が振動したのでゴーグルとグローブを装着し確認する。言われていた通りこれから向かう拠点についての情報や注意事項の内容がまとめられたメッセージが届いていたため、それらを頭に叩き込む。


「じゃあもう拠点に向かえばいいんすかね?」

「GIGAさんに確認するので少し待っていてください」

「さっき話をしてた人っすね。その人がリーダー的な人なんですか?」

「僕に今回の集まりのことを教えてくれた人だよ。リーダーかどうかはわからないけど」


 今後の流れを確認するためGIGAさんの位置情報を確認し声をかけた。


「GIGAさん、拠点へ向かう際の流れってどうなってますか?」

「これから俺たちは2~4人単位で分かれて目的の拠点へ向かう。俺は既にパートナーがいるからお前たちは3人で移動を始めてくれ。この広間からにはテーマパークへとつながっているいくつかの出口が存在している。時間をばらけさせながら地上へ出てから、すみやかに移動を始めてくれ。テーマパーク内での飛行は禁止されているから外へ出てから飛行してくれ」

「わかりました。ただ、もし途中で”彼に”裏切られた場合に援護をお願いしてもよろしいでしょうか?」

「ああ、連絡してくれたらすぐにそちらへ向かう」


 GIGAさんは会話を終えると先に移動を開始した。

いろいろと不安はあるが、二人の元へ戻り先ほど伝えられた内容を二人にも共有する。

 周りの様子を見ながら地上へ出ると、周りには人気のアニメキャラクターたちが描かれているお店やアトラクション施設がたくさん並んでいた。


「二人はテーマパークとかって普段来たりしますか?」

「俺は彼女とたまに来たりしますよ。やっぱ電脳世界でデートするのと現実でデートするのだと感覚が違いますからね。現実の方は刺激があっていいっすよね」

「確かに電脳世界では基本的に視覚と聴覚以外の感覚は機能してないから、現実の方が刺激が大きくなる分記憶にも残りやすいよね」

「小難しいことはよくわかんないですけど、やっぱ外がいいっすね」

「布川さんはどうですか? テーマパーク来ますか?」

「私はあまりこういう所には来ないかな。普段アニメとかを見ないから来ても楽しめない気がするしね」

「布川さんは真面目そうっすよね」

「趣味が少ないだけだよ」


 軽く雑談をしている間にテーマパークの出口を過ぎた。

テーマパークを出た後はすぐに飛行し、拠点へと向かう。

拠点を指している地点へと向かうと、そこにはお寺が建っていた。


「このお寺に奴らがいるってことかな」

「まだ民間人が少しいるようだけど避難できているかどうか気になるな」

「事前の注意事項で先行して突入するのは代表者と他数名で、他は周辺で待機するようにと書いてあったからお寺には入らず周辺で様子を見ましょう」


 一旦、お寺には入らず周辺の人が少ないところへ着陸する。ここからではお寺の内部は見ることができない。


「寺の中の様子がわからないと動きづらいっすね」

「攫われた人たちの安全が確認され次第連絡が来る手筈になっているから、連絡が来るのを待つしかないですね。ただ、こいつを使って様子を確認しようと思います」

「なんすかそれ? 蚊?」

「ドローンですよ。これを動かして状況を確認します」


 きいには変なことに使うなと言われていたが、この緊急事態に使うのは許して欲しいところだ。

 ドローンの操作と映像を確認できるようにグローブとゴーグルを装着し早速お寺の内部へと移動させる。ドローンには周辺の生体反応を感知できる機能を搭載しているため、不自然に人が集まっている場所がないか確認していく。

 エリアを捜索していると収蔵(経典や仏教に関する典籍を収蔵されている蔵)の近くで不自然に多くの人間の存在が感知できた。

ドローンを中へと入れる。


「これが地下への入り口か…、中へ入るぞ」

「はしごがあるのでとりあえず下へ行きましょう」


 どうやら先行組がちょうど地下へ入っていくところに遭遇できたようだ。

先行組はどうやら四名のパーティで構成されているようだった。

 一人ずつ地下への入口に入っていき最後の四人目が入った後、入り口を閉めようとしたので慌ててドローンを中へ入れる。


「どうやら外で倒した見張りの奴らはちゃんと隔離できたようです」

「よかった、それなら後は攫われた人たちを助け出すだけだ」

「後は地下で外部との連絡が取れるかが気になるな」


 話をしながら四人は地下へ潜っていった。

はしごを下りた後、先へ進み数分ほど進むと人の声が聞こえてきたため、会話を止め静かに様子をうかがう。


「こいつらいつまで生かしておくんですかねぇ…」

「上の連中はこいつらをいろいろ使いたいらしいからまだ、生かしておくんだとよ」

「じゃあ、しばらくは見張ってないとダメなんすね~…、めんどくせぇ~」

「そろそろ代わりの奴らが来る時間だからあとちょっと我慢しろ」


 奥から聞こえる会話を聞く限り攫われていた人たちの命は無事のようだ。

しかし、交代する人員が来るとなるとそろそろ地下に入ったことがバレてしまうだろう。

 四人はどのようにバレずに救出するかの作戦会議をチャットで行っているようだ。


 ガタッ!


 上の方から扉が開く音が聞こえた。

 ドローンを扉の近くへ見つからないように移動させる。

 どうやら見張りの後退にやってきた者がこちらへ入ってきていた。

 人が近づいてくる気配を感じ、先行組の内二人が奥へ入っていく。


「なんだお前ら!」


 見張り役の内の一人がこちらに向かって叫ぶ。

奥に進んだ先には100名以上が手足を拘束され顔半分が黒いマスクのようなもので覆われている状態で横たわっていた。

 そして、見張り役と思われる男が三人いた。

 三人はサプレッサー付きの銃を入ってきた二人に向けている。

 だが、突入した二人は勢いそのまま見張り役に向かっていく。

向かってくる二人に対して銃が発砲されたが、銃弾を回避しながら先行組の二人はそれぞれ一人ずつ、相手の体勢を崩し、手の銃を打ち落とし拾えないように遠くへ飛ばす。

 しかし、残っていた見張り役は捕らえられている人たちの元へ移動する。


「オイお前ら! それ以上動いたらコイツを殺すぞ!」


 見張り役の最後の一人は横になっている人たちの中から女性を選び、首を掴み銃口を頭に向ける。

 見張り役の二人を無力化し、残りの一人の元へ向かおうとしていた先行組二人は人質を取られたことにより動けない状態となった。


「入ってきた奴らは倒したぞ!」


 どうやら地下へ入ってきた交代要員を撃退した二人がこちらへ入ってこようとしていた。


「お前らもこいつらの仲間か! 動くんじゃねぇ!」


 合流した二人も状況を察し、近づけない状態となった。

 銃を失っていた見張り役二人も立ち上がり、銃を拾いに動く。


 瞬間、人質を取っていた見張り役の顔面が弾けた。


「は…?」


 突然のことに、動けなくなっていた先行組の内の一人が気の抜けた声を出す。

その後も銃声が続く。

 銃を拾いに向かった二人の足には穴が空き、その場で丸くなりうずくまる。

 急な事態の変化に先行組の四人は誰も状況が理解できていない。

 もちろん、ドローンで映像を見ているだけの僕も状況を呑み込めていない。


「甘いんだよお前ら。それで人が救えると思ってんのか」


 横たわった人たちの中からサングラスと黒いマスクをした者がこちらへ向かって歩いてくる。

 声は加工されており若干聞き取りづらく、サングラスもかけているためとても怪しい見た目をしている。


「お前は誰だ? 俺たちの仲間か?」

「仲間か…、攫われたこの人たちを救うという目的は一緒だがお前たちのような考えなしの仲間というのはなんともな…」

「なんだよお前、こいつらの仲間じゃないのはわかったが、なんか俺たちを舐めてやがるな。銃を持ってるからっていい気になるなよ」

 そう言い放つと何故かサングラスの男に向かって、飛び掛かっていった。

「本当に救えないな」


 サングラスの男は銃を腰に収め、向かってきた相手の腕を掴みそのまま乱暴に床へと身体を叩きつけた。


「お前ら、落ち着いてくれ。寺の中に敵の仲間がまだ多くいる。今からメッセージを飛ばし、そいつらの退治を外の奴らに要請する。そして、俺たちは一刻も早くここに捕らえられた人たちを解放する必要がある」


 仲間の一人があっさり倒されたことで残りの三人も冷静になったのか、警戒を解いている。


「すまない、突然仲間が襲ってしまい…、でも、拘束を解くって言ったって拘束具の解除方法は分かっているのか?」

「それは既に解析済み…」


 地下室の奥からもぞもぞと誰かが立ち上がり、サングラスの男の元へ近づいていく。

 男と同様に加工されてはいるが声の高さと髪の長さから女性であると思われる。

キツネのお面を付けた女性は続けて話す。


「ここの人たちの拘束に使われている器具の材質は解析済み…、この拘束具を切れるヤツ作った…」


 キツネお面の女は白色のナイフを持ち、近くに横たわっていた者の手の拘束具へ当て、スッと下へ引くようにすると拘束具が切れ床に落ちる。

 足の拘束具も同じ要領で切断する。


「口の拘束具はまだ切らなくていいぞ。この人数が喋りだしたらうるさすぎるからな。全員を解放して落ち着かせてから喋れるようにさせろ」


 サングラスの男はキツネお面の女にそう伝えると、女は頷きながらナイフを男へ渡す。


「人手は多いに越したことはない、お前たちも手伝え」


 先行組の三人にナイフを投げる。


「あぶねぇな!」

「大丈夫だ、拘束具が切れるだけでボディを傷つける材質じゃない。あと、さっきも言ったように解除するのは手と足だけでいい。場を混乱させたくはないだろう」


 先行組もナイフを受け取ると、全員で拘束具の解除を始める。

サングラスの男は外した拘束具を襲ってきた先行組の一人の手足に付け、うずくまっていた見張り役にも拘束具を装着させる。


「俺を襲ってきたコイツは俺がここを出るまで拘束させてもらう。後で開放してくれ」

「…わかった」


 先行組も落ち着きを取り戻したため、まずは被害者たちの救助を優先することを考えているようだ。

 地下室内で拘束されている被害者たちを見て回ると、きいの姿を見つけることができた。

 作り物の身体が安堵で包まれる。

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