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ボディメンテナンス師  作者: 藤村 託時


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4.乱される日常

 翌日、予定通りお客さん用の部品を受け取るため朝七時に起床した。

通常営業を開始するのが朝十時からのため九時前に起きる生活をしているため、普段と比べると早めの起床である。 

 起きてから二時間が経過した。

 既に受け取りの予定をしていた午前八時からは一時間が経過しているため、運送業者に確認することにした。

 ゴーグルと手袋を装着し電脳世界へ入り、業者へ通信を試みる。


「こちら運送会社虎足とらあしの田中です」

「今日の午前九時にボディの部品の受け取りを予定していた非田です。まだ部品が届いていないので状況を確認させていただけないでしょうか」

「連絡ができておらず申し訳ございません。現在そちらにお荷物を運んでいた担当の者に話を聞いておりました。どうやら運搬中に車のタイヤが急にパンクをしたということなのでタイヤを見ると穴が開いていたとのことです。銃で狙撃された跡がついていたので状況を確認していたところです。お荷物をそちらに届けられるのは午後になりそうなのでご了承ください」

「銃ですか…」


 現在、調査団以外の銃使用は認められておらず、わざわざ車のタイヤをパンクさせるためにそこまで犯すものがいるとは驚きだ。


「私たちも事件性がどのくらいあるのかがまだわかっていないので、調査団に被害を報告して調べていただいております」

「それじゃあ、とりあえず午後には配達お願いしますね」


 通話を終え、午前中には届かないことが分かったため、午後の営業に向けての準備を始める。

 まずお客さんの予約状況を整理することから始める。

 今日は予約が六件入っており、スケジュールは埋まっている。

 内容としては部品交換が四件とボディに関する相談が一件、後は検査が一件といった具合である。

 交換用の部品の確認と検査に使用する各器具の状態確認を行う。それらが終わり、少し時間が経つと最初の予約をしていたお客さんがいらっしゃったのでそちらの対応を行う。


「いらっしゃいませ、こちらへどうぞ」


業務の途中で無事に部品を受け取り、そのままこの日最後のお客さんの対応も無事終えることができた。


「お疲れ、部品が届くの遅れたみたいだな」

「お疲れ、父さん。そうなんだよ、本当は午前中に受け取る予定だったんだけど、なんか運送中の車のタイヤが銃で撃たれたとかなんとか」

「ん?よくわからないな」

「僕も状況はよくわかってないよ。ただ、結局犯人についてはまだ特定できてないらしい」

「そうか、早く犯人を捕まえてもらわないとな」

「そうだね、しばらく情報提供がなかったら自分なりに調べてみるつもり」


 その後、一週間が経ち、配達を妨害した犯人の情報は入ってこなかった。

 そして、その間も直接的な妨害をたびたび受けていた。

 取り寄せ予定の部品が移動中に破壊され使い物にならなくなることもあったため、業務にも悪影響が出ている。


「さすがに動かないとな…」


 今日は休日のため、犯人を自分でも探すことにした。

 情報を収集するため、電脳世界にアクセスする。


「まずは情報屋にあたるか」


 電脳世界には情報屋と呼ばれる人たちが存在する。

 普通に生活している限りあまり関わることはないだろうが、以前仕事で紹介してもらった。

 それ以来、どうしても調べてもらいたいことがある際に頼らせてもらっている。

 情報屋のいるワールドは普通の人がほとんど入ることのない隠れ家のような場所になっている。

 そのため、紹介してもらわない限りたどり着くことはないだろう。

僕がお世話になっている情報屋は大体そのワールドの中で同じ場所にいるため、とりあえずそこへ向かうことにした。


「お久しぶりです」

「久しぶり! ボディメンテナンス師君」

「はい、今日はトイトイさんに調べてもらいたいことがありまして」

「調査の依頼ね。まぁ今日は忙しくないし受けてあげるよ。前は確か中々手に入らないボディを手に入れるために、そのボディを持っている人を探してたんだっけ」

「あの時はありがとうございました」

「別に礼はいらないよ。ちゃんとそれに見合うだけの優先ポイントはもらったからね。ポイントさえもらえれば仕事をするよ。俺はポイントに関心がなくつつましく生活している人たちの気が知れなくてね、ポイントが無くても生きてはいける世の中ではあるけどやっぱりやりたいことを全部やろうとするとポイントなんていくらあっても足りないもんさ。欲が無いってのはそれだけつまらない人間ってことだと思ってるよ。俺は天才だから知能を持て余してるんだけど、ポイントはすぐ使っちゃって全然持て余さないんだ」

「僕はあんまり欲がある方ではない気がするので、つまらない人間かもしれません。トイトイさんはポイントを普段何に使用されているんですか?」

「俺はまず生命ドリンクってやつが好きじゃなくてね、いつもご飯はポイントを使って美味しいものを食べることにしてるよ。後は電脳世界でもポイントを使うといろいろと娯楽の幅が増えるってものでね、仲間内でポイントを賭けてしょっちゅうギャンブルをやってる」

「ギャンブルですか…、具体的にはどんなことをしてるんですか?」

「ギャンブルなんてものはね、中身は何でもいいのさ。メジャーなものであればスポーツの試合でどっちが勝つかとかだけど、特定のワールドにその日に何人来るかとかでもいいしね。ただ、ギャンブルの醍醐味ってのはお互いに大事なものを失う可能性があるっていう所でさ。ポイントに価値を見出している同士で賭けるのは面白いけど、どちらかがポイントに対して冷めたスタンスだとなにも面白くなくなっちゃうのさ」

「なるほど、僕にはあんまり向かないかもしれないですね…」

「価値観は人それぞれでいいとは思うよ。まぁそろそろ本題に入ろうか、今日は何を知りたいんだい?」

「ここ一週間で僕が仕事で使う部品の受け渡しを妨害している者がおりまして、犯人を捜しているんです」

「ふーん、ボディメンテナンスの仕事を妨害する奴ね…、とりあえず妨害の詳細を教えてもらえるかな。いつ起きたか、どんな手段だったか、調査団からはどのような説明を受けたかとかね」


 トイトイさんに今まで受けた被害について話した。また、僕が分かっている限りの情報を伝える。


「なるほどね…、調査団はやっぱり動きが遅いね。彼らは情報収集が遅い癖に確定してからじゃないと全然教えてくれないからね。分かったよ、今もらった情報を元に調べてみる。明日の二十時くらいにまたここに来てくれるかな? 調査結果をその時教えるよ。ポイントは全部終わってから請求するよ」

「ありがとうございます。それではまた明日」


 情報屋への依頼が済み、特にこれといった予定もなかったので、映画を見るために自分のワールドへ戻ることにした。

 自分のエリアに着き、どの映画を見るか調べている途中、自分の身体が揺れる感覚に襲われた。

 電脳世界ではゴーグルを通しての視覚・聴覚情報、グローブを通しての触覚情報以外を得ることはないため、身体全体が揺れる感覚は現実の身体への干渉が原因である。

 電脳世界へのアクセスを終了し、ゴーグルを外す。

 僕の身体を動かしていたのは母親だった。


「母さん、どうしたの?」


 普段生活していて自分の部屋に親が入ってくることはほとんどないため、なにか特別な理由があるのだろう。


「お父さんが…、お父さんが倒れちゃったの…、今救急車を呼んでるんだけど、ちょっとボディの状態を確認してくれないかしら」

「わかった、父さんは今どこにいるの?」

「仕事の調べ物をしている途中で倒れたみたい…、お父さんの作業部屋にいるわ」


 話を聞いた後、すぐに父の状態を確認するため作業部屋へ向かう。

 仕事用の店舗は普段生活している自宅の横に位置しているため、自宅を出て作業部屋に着くのに時間はかからなかった。

 父のボディを調べ異常がないか確認する。


「うん、ボディの状態に異常はない。ということは原因は脳か心臓ということになるね」

「そんな…」


 母は言葉を失い呆然としていた。

 程なくして救急隊員が父を病院へ運んでいった。

 母は父に寄り添い一緒に車へ乗り込む。車の中に入れる人数にも限りがあるので、僕は移送される病院へ飛行して向かうことにした。

 車の移動よりも飛行による移動の方が直線距離で向かえるため、僕の方が先に病院に到着した。

 待機室で両親が到着するのを待つ。

 待っている間は気持ちが中々落ち着かなかった。

 しばらくすると、救急隊員が病室へ父を搬送していった。


「これから診察が行われますので、もうしばらく待機室でお待ちいただくようお願いいたします」


 そう伝えられ、一時間程経過した。

 そして医師から診察結果を伝えられた。

 脳の機能低下が原因で意識を失ってしまったらしい。

 最低でも一ヵ月は病院で安静にする必要があるため、父が担当しているボディメンテナンス業務は自分が代わりに行うことになる。

 ボディメンテナンス業務を一旦休業することも考えたが、現在抱えているお客さんのうち、特に緊急性の高い方の対応を優先的に行い業務は継続することにした。

 病院から戻り、今後の仕事についての方針を考えながら一日を終えた。

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