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13.突入

 数日後、身元調査の終わった天王寺君と共にGIGAさんに連れられ、ホテルの部屋に入る。

 ホテルには既に女性が一人待機していたみたいだ。


「初めまして…、私はTIA…」

「こいつは俺の相棒で情報収集を専門にしてる。それじゃあ、これからの動きについて話をしよう」


 この女性の話し方、どこかで聞いた覚えがある。

 確かきいを助けにお寺に行った時に…

 まぁ、そのことについては今確認することではないだろう。


「はじめまして、非田章介です」

「天王山烙だ」

「時間が惜しい、とっとと話を進めようか。まず、蛇蛇についてだが北海道の南部に拠点を構えている。ここにはボディブレイカーズの主要メンバーが集まっている」

「こっちの戦力はどのくらいなんですか?」

「今回は調査団の奴らと協力体制になってるからな、500人以上で拠点に乗り込む想定だ」

「この規模だと連携取れるか不安…、数が多ければいいわけじゃない…」

「俺は自分で実力を確かめた奴らとしか一緒に行動しないつもりだ。どうせ調査団の奴らは外部の連中とは素直に連携するつもりはないだろうからな。そういえば非田、お前は天王山と一緒に前線に出るのか?」

「いえ、前にも話した通り僕は後方支援に専念しようと思ってます。戦闘になったら足を引っ張るだけでしょうから」


 きいの救出の際、自分の無力さを痛感した。

 あの時は自分がきいを救わなければいけないという思いで前に出てしまったが、格闘スキルのない自分が前線に出る必要はないのだ。


「そうか。じゃあTIAから敵の情報を共有してもらって後方支援に回ってもらおう。天王山には敵の拠点のマップを頭に入れてもらう」

「あんまり覚えるのは得意じゃねぇけど、まぁ仕方ねぇか」


 天王山君と僕はTIAさんたちから敵に関する情報を共有してもらった。

 ボディブレイカーズの拠点を攻めるのは来週とのことなので、僕はもらった情報をもとに作戦を練る。

 天王山君はGIGAさんと共に戦いに備えて体を慣らすことになった。

 父の病院が襲われた後も奴らによる被害は増え続けており、既に国中で奴らの存在は知られてきている。

 僕が生まれてから、今回のような大勢の犠牲者が出る事件は初めてのことだった。

生身の身体からボディへ人間の器が代わってからは殺人というものが起こりにくくなっていたので人々は恐怖に鈍感になっている。

 そして、奴らが一体なぜ病院を襲うのかが僕には全く理解ができない。

 ただ、いち早く奴らを止めないとなんの罪もない人たちが犠牲になってしまう。

 それだけは阻止しないといけないのだ。


 自分なりに考えを巡らせている内、一週間が経過した。

 これからGIGAさんや天王山君は敵の拠点へ向かう。

 天王山君のスーツにドローンを付ける。

 周囲の様子を確認できるように蚊の形をしたドローンが飛ばせるよう天王山君の首裏に忍ばせておいた。

 僕は念のため現地から40キロほど離れた場所でカメラの映像を確認し、通話ができるよう準備をした。

 今回の作戦に加わっている他のメンバーはすでに北海道の広大な農地へと向かう。

 農地の下が敵の拠点となっているため、複数ある入り口からそれぞれ突入する手はずになっている。

 拠点に関する情報は捕らえた敵から手段を選ばず聞き出したらしく、その際に認証コードも入手済みとのことだ。

 天王寺君とGIGAさんは別のチームに分かれているため、天王山君はGIGAさんの知り合い五人とチームを組んで動くことになっている。

 リーダー役の人は長い金髪の男で身長170センチほど、サブリーダーは180センチほどの身長で黒髪坊主頭、手足が長く少し猫背気味の男だ。

 六人が入口地点の土を軽く掘ると、金属の底が見えてくる。

また、数値を入力する箇所へ入手していた認証コードの数字を入力していく。

入力が終わると金属の扉が開き地下への道が開かれる。

天王山君は最後尾からチームメンバーを追うように地下へ入り、しばらく進んでいくと人の声が聞こえた。


「おらぁ! もういっちょ!」


 部屋の中に入ると、倉庫のような部屋の床には血痕のようなものが至る所に付着していた。

 部屋をドローンのカメラで見渡すと下着一枚の状態で鎖に吊るされた人間がざっと並べられており、四人の男たちは吊るされている人間に対して殴ったり蹴ったり暴行を加えている。


「お前ら何してんだよ」


 天王山君はそこにいた男たちに問いかける。


「てめぇら誰だよ! ここに誰か来るなんて聞いてねぇぞ」

「俺らはお前らを駆除しに来た」


 金髪のリーダー役の男が答える。

 それに他の仲間たちも臨戦態勢に入る。

 部屋にいた四人の男たちも敵だと認識し、侵入者に対して向き合い態勢を整えた。

その中で一番早く動きを見せたのは天王山君だった。

 近くにいた敵に素早く接近すると相手の両手首を掴み、そのまま握りつぶした。

痛みと困惑で声を上げた相手は蹴りを繰り出すが、天王山君は足を受け止める。

 続いてその足をそのまま握りつぶす。

 天王山君が敵を無力化している間に他の仲間たちも戦闘を始めていた。

 金髪の男は二人を相手にしていたため防御に専念することを強いられていたが、天王山君がそのうちの一人の肩を引っ張り仲間と引きはがすことで一人引き受ける形に。

 その後、天王山君は両足を潰し、動きを封じていた。

 残った敵と味方は実力が拮抗していたため、天王山君が片方ずつに加勢していき敵を鎮圧する。


「お前めちゃくちゃ強いな…、助かったぜ」

「サンキュー」


 仲間たちは想像以上の強さを見せた天王山君に驚いている様子を見せた。

 天王山君はぶら下げられていた人たちの鎖を鋭い蹴りで切断していく。

 鎖から解放された人たちの多くは体中に痣を付け、意識もない状態であった。

 その中でまだ身体が比較的きれいな男が口を開く。


「あんたは誰だ? 助けに来てくれたのか?」

「助けに来たわけじゃない。ここにいる奴らを始末しに来ただけだ。あんたたちは見たところ生身のようだな… あいつらに何されてたんだ?」

「俺たちはあいつらに攫われてここに連れてこられてよ… 鎖に吊るされてサンドバッグにされてたんだ」

「どういうことなんだ、意味が分からねぇ」


 話を聞いていた金髪のリーダーは状況が理解できず困惑した様子だ。

 天王山君は部屋を見渡し、吊るされていた人間を全て解放したことを確認すると、僕に対して怪我人の救助を手配するよう頼んできた。

 頼みを受け、僕はTIAさんや調査団の後方支援の人たちに連絡を取り状況を説明した。

 どうやら他のチームも同様のサンドバッグ状態の人たちを目撃したようなので、救助の動きはすでに整っていた。

 その旨を天王山君のチームへ伝えると、彼らは怪我人たちを一か所にまとめ、回収しやすいようにしてくれた。


「俺たちは先に進まなきゃいけないけど、こいつらを放っておくわけにもいかない。二人ここに残って回収組が来るまで見張っててほしい」


 天王山君は先ほどの戦いでの実力が認められ、先に進むメンバーに加わった。

 そして、そのまま奥へ進み新たな部屋に入る。

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