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12.新戦力

 そして、午後になると通話がかかってきた。


「ボディ屋、運がよかったな。あいつと連絡が取れたぜ」

「待ってましたよ。今日会えますか?」

「ああ! じゃあ集合場所を送るからそこに来てくれ」


 頼みの綱に会いに行くため、指定された場所へすぐに向かった。

 到着してしばらくすると、背が165センチほどの男と2メートルを超えたクマのようなシルエットをした大男がこちらへ向かって来る。

 小さい方は甚大さんだが、もう一人の方とは初対面だ。


「紹介するぜ、こいつが昨日話をした男だ」

「はじめまして、俺は天王山てんのうざん らくだ」

「初めまして、非田章介です」

「非田さんは今何歳?」

「25歳ですけど」

「俺は21歳だから非田さんの方が年上だな」

「年上ってわかったんなら敬語くらい使えよ! ボディ屋の方だけ敬語使ってたらおかしいだろうが」

「いや、敬語とかめんどいから嫌だよ。非田さんも別に敬語使わなくていいよ。そういえば足柄さんから聞いたけど、非田さんは俺の彼女を殺した奴らについて知ってるんだよね? 皆殺しにするから居場所教えてよ」

「おい烙、いきなり話を進めるんじゃねぇよ」

「俺はあいつらを殺すことしか今は考えられないから。ただ、居場所がわかんねーことにはどうしようもねぇし…」

「君の力を貸してくれるなら情報は共有するよ。ただ、君には僕が作成したスーツを着用して戦って欲しい」

「スーツ? そんなもんいらねぇよ。誰だろうがぶっ飛ばす」

「天王山君、今まで人を殺したことってある?」

「いや、殺したことはないけど」

「生身の人間がボディの相手を倒すにはいくら強くても限界がある。ボディには刀のような刃物で切りかかっても跡がつく程度で大して効果はない。だから関節技、締め技で動きを封じるかボディを破壊する威力の銃を使用する必要があるんだ。ボディにも関節は付けてあるから、構造を学べば外すことはできる。天王山君は格闘技の経験はある?」

「いや、人から習ったことはないよ。でも、生身の奴もボディの奴もみんなぶっ飛ばしてきた。ボディ使ってる奴は確かに頑丈だけど、脳をしつこく叩いてやればさすがに効くから根を上げるまで叩けば倒せる」

「なるほど、脳を攻めるのか。確かにそれなら一定の効果はあると思う。ただ、今度の相手は武器も持っていて、戦闘スキルも高いだろう。その人たちを相手にどこまで通用するかな」

「ボディ屋、こいつは身体能力に関しては大したもんだと思うぜ。生身で気の荒い奴らもこいつには敵わねぇんだ」

「…そうですか。天王山君、一度格闘家を連れてくるから戦ってみてほしい。それを見てスーツが不要そうなら生身のままで構わないよ」

「わかったよ、実際に戦うのが手っ取り早いからな」

「それと、また連絡が取れなくなると困るからメッセージにはちゃんと返信してほしい」

「…まぁ、できるだけ確認するよ。今はあいつらをぶっ倒すのが一番大事だしな」

「じゃあ烙とボディ屋で直接連絡取れそうだから俺はもう関わらなくていいか?」

「甚大さん、ありがとうございました。天王山君とは僕から連絡を取らせていただきます」

「いいってことよ。俺も知り合いに被害が出てるから、今暴れてるって奴らを早く何とかしてほしいと思ってるからよ」


 甚大さんたちとは一旦別れ、天王山君との試合相手を見繕うことにした。

 家町さんに連絡をして対戦をお願いしてみたが、やはりまだ戦える状態でないとのことだったので代わりに他のプロの格闘家を紹介していただいた。

 そうして、天王山君との試合は明日の夜に調整することができた。


 試合当日、一時的に利用させていただく武道場に到着する。

 そこには先に一人到着している者がいたので声をかける。


「はじめまして、家町さんから紹介していただいた平田ひらたタンタンさんで合ってますか?」

「はい、家町の友人の平田です」

「すみません、突然変なことお願いしてしまって」

「別に大丈夫ですよ。生身の人と戦うなんて面白そうですし」


 軽く挨拶をしていると天王山君が到着した。


「お待たせしました」

「天王山君、こちらが今回試合をしてくれる平田さんだ」

「どうも平田です」

「試合を始める前にルールについて説明します。まず、今回は生身とボディが戦うため、ボディ側から生身側への打撃は禁止とさせていただきます。ボディ側は十カウントするまで相手の動きを無力化できたら勝利とします。逆に生身側は基本何でもありです。勝利条件はボディ側がダウンしてから十カウントした場合とします」

「俺は別に打撃ありでもいいけど」

「さすがに安全面を考慮して認められない」

「そうですね、生身の方を相手にするのは初めてなので何かあっても困りますし」

「ちっ、まぁ速攻で倒せば関係ないからいいよ」

「それでは、もう始めてしまいましょう」


 お互いにある程度距離を取ってもらい試合開始の合図を出す。

 始まってすぐに天王山君が平田さんへ突っ込んで行った。

 勢いそのままに平田さんの側頭部へ向かって掌底を繰り出すが、その手は上手く捌かれ届くことはない。

 続けて天王山君は足払いを試みるが、プロの格闘家である平田さんに通じることはない。


「生身とは思えないスピードですね。ボディの格闘家と比べても速さだけなら遜色ないかもしれません。ただ、そろそろこちらも反撃させていただきましょう」


 そう宣言すると平田さんは天王山君の腕を掴み、関節技を決めながら床に押し倒す。

 押し倒された天王山君は力業で腕を振りほどき、相手との距離を取る。


「すごい力ですね、生身とはとても思えない。ただ、強引に振りほどいたことで腕を痛めたはずです。無茶はやめた方がいい」

「うるせぇな…」


 天王山君は頭に向けて足を高く蹴り上げるが、その蹴りも腕でガードされ残った片足を崩され、身体は床に倒れる。

 そして、今度は首を抑えられ完全に動きを封じ込められる。


「…十カウント経ちました。天王山君、君の負けだ」

「クソッ!」

「今まで君が倒したボディの人はおそらく格闘家じゃなかったんだと思う。プロの格闘家を相手に生身で戦うのはやはり限界があるんだよ。敵にはプロの格闘家もいるからね」

「でも、動き出しだけならボディより早かったかもしれないですね」

「ボディの動きは脳の信号を読み取ってから反映させるまでに少しラグがありますからね。反射神経の良い生身の人の方が動き出しに関しては早くてもおかしくないです。天王山君、約束通り僕が作成するスーツを着てもらうよ」

「…わかったよ。それはどのくらいでできるんだ?」

「もう既に君の身体のサイズに合わせて作り終わっている」

「なんでだよ。身体測られたりしてないぜ?」

「サイズも筋力も前にゴーグルを付けて君を見た時にデータを取っている。時間がないから先に作らせてもらったよ」

「へぇ、そのスーツを着た状態の彼とも戦ってみたいですね」

「ちょっとそれは難しいですね。作成したスーツはボディを破壊することができるほどの性能になっているんで、だいぶ危険です」

「それを着れば俺は強くなれんのか?」

「スーツに慣れれば段違いに強くなるよ。明日早速持ってくるから身体を慣らしていってほしい」

「わかった」


 そうして、平田さんにはお礼のポイントを渡し、その場は解散することにした。


 翌日、天王山君に僕の店へ来てもらいスーツを渡す。


「これを着ればいいんだな」

「あとこの靴とマスクも着けてね」


 天王山君は渋い顔をしながらもスーツ、マスク、靴を装着していく。

 スーツもマスクも薄い透明な素材でできているため、見た目は特に変わることはない。


「着替え終わったぜ、非田さん」

「それじゃあ、ちょっと軽く性能を実感してもらおうかな。このボディ用の腕パーツを強く握ってみてほしい」

「ん」


 天王山君が腕を握ると、ぐしゃっと音を立てて腕は細く潰れた。


「マジかよ…」

「今の君の力はボディの耐久力を超えている。60キロで走る自動車にぶつかっても平気なボディを傷つけることができる。でも、そのスーツのパワーは僕が制御できるようになっている。敵と戦う時以外は基本的にパワーを抑えさせてもらうよ。しばらくは慣れてもらうために僕が見ている間は力を解放する。君にはスーツの性能を限界まで引き出して欲しい」

「仕方ねぇ、この前負けちまったのは確かだからな。この際手段は選んでられねぇ、奴らを倒せるならなんでもいい」


 そこからはGIGAさんとの約束の日まで身体にスーツを馴染ませることに専念してもらった。

 そして時が経ち、約束の日が来る。


「GIGAさん、戦力を連れてきました」

「随分とでかいな。顔もあんまり見ない造形だな」

「この人は生身ですからね。今は僕の作成したスーツを着てもらってます」

「あんたの話は聞いてるぜ。あんたが敵の情報を持ってるんだろ?」

「ああ、情報は各地から集まってきている。ボディブレイカーズのまとめ役”木田蛇蛇”の居場所も掴めているからそろそろ確実に奴を叩きたい。だから、今は半端な奴はいらない」

「半端かどうかは試してみてください」

「じゃあ、試しにこいつを倒してみろ」


 GIGAの後方から鞭を持った男がこちらへ向かってくる。


「俺が育てた弟子の一人だ。こいつと戦ってみてくれ」

「GIGAさん、このでかい奴をやっちゃえばいいんですね?」


 GIGAさんが頷くと、鞭を持った男は天王寺君に向かって鞭をふるう。

鞭は天王寺君の腕に絡まり、そのまま引き付けようとする。

 だが、天王寺君が腕を引くと鞭を持った男が逆に引っ張られる形で前へ姿勢を崩す。

 そして、天王山君は男の後頭部へ手刀を繰り出す。

 鞭は手から離れ、男は床に倒れる。


「加減はしたぜ」


 床に倒れた男を見ながらGIGAさんは口角を上げる。


「なるほど、ある程度戦える奴のようだな。いいだろう、こいつの身元を調べてから木田蛇蛇潰しに加わってもらおうか」


 こうして、新しい戦力を加え僕たちの復讐は始まった。

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