【Scene01:一騎打ち/剣士 vs 剣士】
【Scene01:一騎打ち/剣士 vs 剣士】
夕暮れ。山間の古戦場に、風が鳴いていた。
倒れた木々、割れた岩、いずれも過去の戦いの残骸。だが今、その場に残るのは、二人の剣士だけだった。
「……もう喋ることはないな」
低く響く声とともに、片方の剣士――漆黒の羽織をまとった男が、一歩、足を踏み出す。
それに応じるように、対峙する青年が口元を歪めた。
「そっか。じゃあ、斬るだけだな」
抜刀は、音にならないほど早かった。
鋼が風を裂き、二条の閃光が交差する。
第一撃――空振り。だが、互いの間合いは計り終えた。
再び踏み込んだのは羽織の男。だが剣先は青年の刃に弾かれ、衣の袖が裂ける。
「チッ……」
舌打ちとともに後退する男。その瞬間、青年の足が地を蹴った。
跳ぶ。
風に逆らって舞うように。
だが、それを読んでいた羽織の男は低く身を屈め、地を滑るように突き上げた。
見えた――青年の目が、初めてわずかに揺らぐ。
刃が肌を掠める。血が散った。
痛みによるものか、それとも快感か。青年の口角が吊り上がる。
「おもしれぇ……!」
言葉と同時に剣が火花を散らす。今度は真正面。打ち合いの連続。
一合、二合、三合。刃が打たれるたびに、空気が爆ぜる。
「強いな、お前」
「貴様こそ……まだまだ余力があるようだ」
汗が額を伝い、呼吸が荒くなる。だが、どちらも後退しない。
膠着――だが、一瞬だけ、男の目が逸れた。
そこだった。
青年の踏み込み。
剣が斜めに走る。時間が、切り裂かれる。
羽織の男は防御の姿勢を取るが――遅い。
衣を割き、皮膚を裂く鋭い一撃。
男が膝をついた。
……だが、その表情は、笑っていた。
「……やっと、面白くなってきたじゃないか」
地面に落ちた血が、夕陽を受けて赤く光った。




