第九章 〜逃亡の末に〜 17
ミレイの槍が雷を帯び、微細な火花を散らしながら構え直される。彼女の目は鋭く、既に戦闘態勢に入っていた。
「リヴィア、大丈夫?」
「……平気よ」
短く息を整えながら、リヴィアは剣を握り直す。だが、内心では悔しさが込み上げていた。冷静に仕掛けたつもりの一撃が、まるで子供の遊びのように退けられたのだ。
ガブリエルはゆっくりと剣を下ろし、二人を見据える。その目には、微塵の動揺もない。まるで、ただの確認作業をしているような、冷徹な光が宿っていた。
「二人がかりか……いいだろう、少しは楽しませてもらおうか」
その言葉が終わると同時に、ガブリエルの姿が霞む。次の瞬間には、既にミレイの間合いの内側に入り込んでいた。
「——速い!」
ミレイは即座に槍を振るった。雷を帯びた槍が、鋭い一閃を描きながらガブリエルを迎え撃つ。だが——
ガブリエルの剣が、最小の動きでそれを弾いた。
火花が散る。
「っ……!」
ミレイは即座に反撃に移る。槍を回転させ、二撃目、三撃目を立て続けに繰り出した。雷の軌跡が閃き、空気を震わせる。しかし——
すべてが、軽く受け流された。
「……なるほど。雷を纏わせた槍か。悪くはない」
ガブリエルは、まるで戦いを観察するかのように冷静だった。
「だが、見えている限りは、効かん。」
その言葉と同時に、ガブリエルの剣が一閃した。
ミレイの体が反射的に跳び退る。しかし、その刹那——
「——しまっ……!」
ガブリエルの足が僅かに動いた。
その一歩が、まるで運命を決めるかのように、彼の剣の軌道を変えた。
ミレイの防御が間に合わない。
その時——
「まだよ!」
リヴィアが動いた。
彼女の剣が、ガブリエルの斬撃を受け止める。衝撃が腕を伝い、骨を軋ませるような圧がかかる。それでも、彼女は歯を食いしばった。
「ほう……」
ガブリエルがわずかに目を細める。
リヴィアは踏み込む。
その刹那、ミレイが横に回り込み、槍を鋭く突き出した。雷の閃光が走り、鋭い音とともに空気を切り裂く。
ガブリエルは微動だにせず、その槍を最小限の動きで受け流す。
「悪くない。だが、まだ足りん」
低い声が響いた直後、彼の剣が唸るように放たれた。
リヴィアが反射的に防御に回る。しかし、圧倒的な剛剣が彼女を押し込んだ。
「くっ……!」
地面を滑るように後退しながら、ミレイの雷槍が割って入る。
槍と剣が交差し、火花が散る。雷撃がほとばしる中、ガブリエルの目には余裕があった。
「まだその程度か」
瞬間、ガブリエルの剣が弾かれるように流れ、重心を低くした突きを繰り出す。
それは、ミレイが対応するより速く——
「……!」
リヴィアが横から割り込んだ。
剣がぶつかり合い、力が拮抗する。
「ミレイ!」
「分かってる!」
ミレイの槍が一閃し、雷の輝きが闇を裂く。その瞬間、リヴィアが一歩踏み込む。
二人の連携が、かすかにガブリエルの動きを鈍らせた。
しかし——
「——遅い」
冷静な声が響き、ガブリエルの剣が軌道を変える。
ミレイとリヴィアの攻撃がすべて無駄にされたかのように、剣筋が消えた。
次の瞬間、鋭い衝撃が二人を襲う。
「……ぐっ!」
「く……!」
二人は吹き飛ばされ、瓦礫の上に転がった。
ガブリエルは無傷のまま、彼女たちを見下ろしていた。
「ようやく、形になってきたな」
彼の剣が、わずかに上がる。
「次は、少し本気を出してやろう」
その瞬間、空気が変わった。
ミレイとリヴィアは、息を整えながら立ち上がる。
ミレイの槍が一閃し、雷の輝きが闇を裂く。その瞬間、リヴィアが一歩踏み込む。
二人の連携が、かすかにガブリエルの動きを鈍らせた。
しかし——
「——遅い」
冷静な声が響き、ガブリエルの剣が軌道を変える。
ミレイとリヴィアの攻撃がすべて無駄にされたかのように、剣筋が消えた。
次の瞬間、鋭い衝撃が二人を襲う。
「……ぐっ!」
「く……!」
二人は吹き飛ばされ、瓦礫の上に転がった。
ガブリエルは無傷のまま、彼女たちを見下ろしていた。
「リヴィア」
彼の声が、低く響く。
リヴィアは息を整えながら剣を握り直す。
「お前が生き残ったことは、偶然ではない。お前の血は、世界にとってまだ意味を持つ存在だ」
「何を……言ってるの?」
リヴィアの眉がわずかにひそめられる。
ガブリエルの目には、冷酷な光とともに、何か別の感情が宿っていた。
「お前は知るべきだ。なぜ、ノルディスの王族が滅ぼされたのか。なぜ、魔王軍が王族の血を恐れたのか。そして、お前がいまだに生きている理由を」
リヴィアの胸がざわめく。
「……私が、生きている理由?」
「お前達の一族を魔王軍は排除しなければならなかった」
その言葉に、リヴィアの手がわずかに震えた。
ガブリエルはゆっくりと剣を下ろし、静かに告げる。
「お前が本当に復讐したいと願うなら、その血の意味を知れ。そして、俺を超えてみせろ」
リヴィアは息を呑んだ。
だが——ガブリエルは、ゆっくりと剣を構え直した。
「話はここまでだ。今度こそ、俺の戦いを見せてやろう」
その瞬間、空気が張り詰める。
ガブリエルの足元から、重圧が広がった。
瓦礫が微かに震える。風が止まり、場の温度すら変わるような錯覚に襲われる。
「——来る!」
ミレイが即座に槍を構えた。その雷撃が、一瞬にして空間を焼くような輝きを放つ。
だが、その一瞬——ガブリエルの姿が消えた。
「っ……!」
リヴィアが剣を握り締める。
視界に捉えたときには、もう遅かった。
衝撃が奔る。
ガブリエルの剣が、稲妻のように振るわれた。
それは、一撃ではない。剣が軌道を変えながら、連続する鋭い斬撃を繰り出す。
ミレイが槍を防御に回すが、その瞬間、ガブリエルの刃が彼女の頬をかすめた。
「……っ!」
リヴィアが割って入る。
しかし、ガブリエルは一歩下がり、圧倒的な速さで次の斬撃を繰り出す。
「まだまだ——足りない」
圧倒的な技量。完璧な間合い。リヴィアとミレイ、二人の戦士を同時に圧倒する、剣技の極地。
その刹那——
「くっ……!」
リヴィアは歯を食いしばりながら、剣を構え直した。
「私は——負けるわけにはいかない!」
ガブリエルが微かに目を細める。
「ならば、見せてみろ。お前たちの本気を、そしてノルディスの血の意味を——!」
その言葉とともに、ガブリエルの剣圧が爆発的に高まる。
リヴィアとミレイは即座に構え直し、二人同時に突撃する。




