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第二章 〜異世界転移 - 極限サバイバルの幕開け〜 4

 意識がゆっくりと浮上する。身体は鉛のように重く、全身が軋むような痛みに包まれている。喉は乾き、胃は空っぽのまま縮こまっていた。それでも、冷たい地面の感触を確かめることで、自分がまだ生きていることを実感する。


 森は夜の静寂を抜け、朝の気配に包まれつつあった。頭上の木々の隙間から微かに差し込む陽光が、霧がかった空気を淡く照らし、湿った土の匂いが鼻をくすぐる。遠くでは小さな鳥のさえずりが響く。


「……生きてる……」


 かすれた声が、冷たい空気に溶ける。夜の寒さ、疲労、飢え——すべてを耐え抜いた。しかし、安堵に浸る時間はない。生存本能が囁く。


 ——このままでは、いずれ消耗して死ぬ。今はまだ「生き延びているだけ」だ。真の生存とは、自ら生存を維持する力を得ること。水は確保できた。最低限の食料も口にした。だが、私はまだ「戦う手段」を持たない。


「……武器を作らなきゃ。」


 身体をゆっくりと起こす。筋肉が悲鳴を上げるが、それでも動かなければ死が待っているだけだ。森の中を慎重に見渡す。木々の間から、わずかに光が漏れている。朝の柔らかい光は幻想的な雰囲気を醸し出しているが、それに気を取られている暇はない。


 何か使えるものはないか——視線を走らせる。強くて丈夫な枝、鋭利な石、昨晩倒した狼の遺体。使えそうな選択肢を並べ、冷静に考える。


「槍なら、ある程度の距離を取れる。でも、刺突の威力が足りないかも……。」


 丈夫そうな木の枝を拾い上げる。握りやすい太さで、長さも適度だ。これなら槍として十分に使えそうだ。次に、狼の亡骸へ視線を向ける。血の匂いはもう薄れ、死後硬直が始まっている。牙や骨を利用すれば、短剣として加工できるかもしれない。


「……でも、接近戦はまだ怖い。余裕がない。」


 最後に、地面のあちこちに散らばる石を拾い上げた。手に取ると、表面が滑らかなものや、鋭いエッジを持つものがある。石器を作れれば、武器だけでなく道具としても役立つはずだ。


「どれを選ぶべきか……。」


 短く息を吐き、結論を出した。


「槍を主軸にして、万が一のためにナイフも持っておく。」


 槍で距離を取りながら戦い、どうしようもない時のために骨のナイフを用意する。最善ではないかもしれないが、今の自分にとってはこれが最適解だった。


 地面に座り込み、作業に取り掛かる。石を使って枝の先端を削り、鋭くする。狼の骨から歯を取り出し、石で丁寧に形を整える。指先が痛むが、止まるわけにはいかない。


 どれほどの時間が過ぎたのか。ようやく、簡易的な槍と骨のナイフが完成した。


「……これで……少しは戦える……!」


 手にした槍を強く握りしめる。この感触が、ほんの僅かでも安心を与えてくれる。

スキル獲得:即席武器作成 [E] Lv.1

 - 自然のものを使い、最低限の武器を作るスキル。

 - 槍やナイフなどの簡易武器を加工しやすくなる。

 - ただし、武器としての精度や耐久性はまだ低い。

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