第二章 〜異世界転移 - 極限サバイバルの幕開け〜 3
喉が焼けるように乾く。口の中が張りつき、唾液すらまともに出ない。身体は熱を持ち、意識は霞みがかる。
「……水、探さなきゃ……」
朦朧とした頭で必死に考える。何よりも今は水だ。血を流しすぎたし、体力もない。水がなければ生き延びられない。
耳を澄ます。夜の静寂の中、かすかに——
「……水の音……?」
微かに、小川のせせらぎのような音が聞こえる気がした。
這うようにして前進する。手のひらに湿った土の感触。草の葉が皮膚をかすめ、髪にまとわりつく。動くだけで息が上がる。たった数メートル進むだけで視界が揺れ、倒れそうになる。
「……あと、少し……っ」
額に汗が滲む。喉の渇きは限界だった。そして——冷たい水の匂いが漂ってきた。
目を開けると、目の前に小さな小川が流れていた。
「……あった……!」
喜びに声を上げそうになったが、すぐに冷静さを取り戻す。
「……待って、これ……安全?」
目の前に広がる水面が、月の光にきらめく。でも——安易に飛びつくわけにはいかない。もし汚染されていたら? 毒が含まれていたら?
ループの経験が、身体に染みついている。確認せずに行動したら、死ぬ確率が上がる。
慎重に手を伸ばし、水の匂いを嗅ぐ。土と石の微かな匂い。腐敗臭はない。
手ですくい、指先に少しだけつける。——変化なし。次に、唇にほんの少しだけつける。——異常なし。
「……よし。」
ようやく、少しずつ口に含む。冷たい水が喉を潤した瞬間、全身に生気が戻る気がした。
「……はぁ……っ、生き返る……っ。」
水を確保したが、次は食べ物。飢えが限界だった。だが、この身体では狩りや探索は無理。動くだけで意識が遠のく。
川辺に目を凝らし、周囲を探る。すると、すぐ近くの低木に、小さな果実が実っているのを見つけた。月明かりに照らされ、淡い赤紫色を帯びている。
「……食べられるのかな……?」
ループで培った経験が警鐘を鳴らす。「不明なものを口にするのはリスクが高い」。慎重に指で果実の皮をこすり、匂いを嗅ぐ。甘い香り——特に異常はない。
次に、舌先でほんの少し舐める。ピリピリする刺激も、苦味もない。
「……いける、かも……?」
恐る恐る、一口かじる。——渋い。
「……まずっ。でも……死ぬよりマシ。」
少しずつ食べ進める。空腹が和らぎ、ほんのわずかに力が戻る。なんとか、生き延びるための最低限の準備は整った。
だが、まだここは安全とは言えない。
「……休める場所を……探さなきゃ……」
衰弱しきった体を引きずりながら、次の目標へと向かう。
夜の森は冷たい。風が枝を揺らし、ざわざわと囁き声のような音を立てる。葉擦れの音が途切れるたびに、不気味な静寂が押し寄せ、肌が粟立つ。夜露が草に滲み、ひんやりとした湿気が肌を覆う。冷えた風が傷口をなでるたびに、ヒリヒリとした痛みが走る。
足元の土は柔らかく、裸足で歩けば沈み込むような感触がある。だが、それを確かめる余裕もない。視界はぼやけ、足を踏み出すたびに意識が遠のきそうになる。
「……どこか、身を隠せる場所……」
口にした言葉は、夜の静寂に吸い込まれる。声に出していなければ、自分が生きているという実感さえ危うくなりそうだった。
ふと、木々の間から、岩が重なり合う小さな陰が見えた。そこは、倒木と苔に覆われた天然のくぼみ。
「……あそこなら……」
半ば這うようにして、ゆっくりと進む。体中に土と草がまとわりつき、冷たい泥が傷口に染みる。ようやく辿り着き、倒木の影に身を滑り込ませた。
冷え切った地面が、背中をじわりと冷やす。それでも、何もない場所で寝るよりは安全だろう。深く息を吐き、遠くで唸る風の音を聞いた。
どこか遠くで獣の鳴き声が響く。だが、ここまで這ってきた身体には、もう警戒する余力も残っていない。
「……少しだけ……休もう……」
瞼が重くなる。眠ってしまえば、また朝を迎えられるだろうか。それとも——。
意識が、静かに闇へと沈んでいく。
ミレイ
武術の才能 [A]Lv.-
- あらゆる武術に適応しやすく、成長速度が異常に速い。
- ただし、訓練なしでは発揮されず、実践が必要。
魔術の才能 [A]Lv.-
- 魔力制御、呪文理解、発動速度が飛躍的に向上する素質。
- ただし、学習と訓練が不可欠。
スキル獲得率向上 [S]Lv.-
- 彼女の行動からスキルが発生しやすく、成長速度も速い。
- ただし、努力なしでは何も得られない。
NEW
生存本能向上 [B] Lv.3
- 生存確率を最大化する行動を無意識に選べる。
- 危険察知能力が向上し、敵の動きや環境の変化を先読みできる。
- 極限状態でも最適な選択を取れるが、身体能力が追いつかない場合がある。
精神攻撃無効 [A] Lv.4
- 恐怖や幻覚、精神支配系の攻撃を完全無効化。
- どんな状況でもパニックにならない。
- ただし、痛み・疲労・飢えなどの肉体的苦痛は普通に感じる。
火魔法 [C] Lv.1
- 火を発生させる魔法を使える。
- ただし、魔力制御が未熟で、出力調整が難しい。
食材選別 [E] Lv.1
- 直感的に食べられる食材を選別できる。
- ただし、毒物の判別精度は低い。