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第五章 〜城塞都市ファル=ガルド〜 10

 都市での日常が流れ始めていた。


 ギルドでの討伐依頼を数件こなし、ミレイは確実に経験を積んでいた。都市の生活にも慣れ、宿舎での暮らしにも少しずつ馴染んできた。リカルドとの交流も増え、彼の指導のもとで槍の扱いを磨いている。戦闘技術は確実に向上していた。


 リーナもまた、薬師見習いとして忙しい日々を送っていた。朝早くから仕事に出かけ、薬草の仕分けや調合の手伝いをしている。最初は不安そうだった彼女も、今ではすっかり仕事に慣れ、頼もしい表情を見せるようになった。ある日、ミレイが訪れると、リーナは誇らしげに言った。


「今日ね、自分で作った薬が初めて売れたの!」


 ミレイは目を細め、彼女の成長を実感した。


「すごいじゃん。これで一人でも生きていけるね」


 リーナは少し寂しそうに笑いながらも、しっかりと頷いた。


 ミレイの方も、リカルドの指導の下でさらなる訓練を重ねていた。彼は厳しいながらも的確な指導をしてくれる。実戦に即した立ち回りや槍の応用技術、相手の隙を突く動きなど、学ぶべきことは多い。ある日の訓練後、リカルドは彼女の成長を見て、静かに呟いた。


「お前、本当に短期間で強くなったな……。でも、それだけじゃない。お前の戦い方には、どこか切迫したものを感じる」


 ミレイは一瞬、言葉に詰まった。リカルドの言葉は鋭く、核心を突いている。


「……かもね。でも、私は止まれないんだ」


 リカルドはしばらく彼女を見つめた後、深く頷いた。


「ならば、俺も全力で教えてやる」


 その日から、ミレイの訓練はさらに厳しさを増した。


 そして、ギルドでの依頼をこなしながら数週間が過ぎた。





 ——静かな夜だった。


 ギルド宿舎の一室。窓の外には都市の灯りが瞬き、遠くには市場の名残のざわめきがかすかに聞こえている。部屋の隅では暖炉の火が小さく燃え、ゆらゆらと影を揺らしていた。


 その影の中で、ミレイは静かに言葉を紡いだ。


「——そろそろ、ここを出ようと思う」


 火の爆ぜる音が、やけに大きく響いた。


 リーナの顔が凍りつく。


「……もう、行っちゃうの?」


 掠れた声。まるでその言葉を口にした瞬間、現実になってしまうことを恐れるように。


「リーナはもう大丈夫でしょ? ちゃんと仕事もしてるし、自分の力で生きていけるようになった」


「……そんなの……わかってる……」


 震える声が、唇を噛む音にかき消された。


 リーナは知っていた。

 ミレイがずっと、この街に留まるつもりがないことも。

 彼女が何かを追っていることも。

 けれど、今ここで別れるなんて、思っていた以上に耐えられない。


「でも、やっぱり寂しいよ……!」


 小さな手が、ぐっと布団を握りしめる。爪が白くなるほど強く。


 その言葉に、ミレイの胸が少しだけ締めつけられた。

 彼女もまた、リーナとの時間が特別だったことを理解していた。


 ——けれど。


「私、黒い者の情報を掴んだの」


 リーナの肩が跳ねる。


「私がここに留まっていても、進展はない。だから、行くしかない」


「……そんなの……そんなの……!」


 リーナの喉が詰まり、声が途切れる。

 わかってる。わかってる。でも。


 ミレイは、彼女の背をそっと撫でた。


「私は、前に進まなきゃいけない」


「……っ」


「だから——」


「置いていかないで!!」


 リーナが叫んだ。


 熱いものが頬を伝う。目を見開いたまま、リーナは泣いていた。

 何度も何度もこらえてきた涙が、とうとう堰を切ってあふれ出した。


「……ミレイがいなくなったら、もう……」


 言葉にならない想いが、空気を震わせる。


 ミレイは、リーナの両肩をそっと掴み、まっすぐにその瞳を見た。


「……リーナ。あなたは強くなったよ」


「……嘘……」


「嘘じゃない」


 優しい声だった。でも、強い響きがあった。


「この街で、一人で生きていけるだけの力をちゃんとつけた。それは、あなたが頑張った証拠」


 リーナの唇が震える。


「……でも」


「私が、ここでずっと守り続けるよりも——あなたが、自分で立ち上がるほうが、きっと強くなれる」


 リーナの涙が、一筋頬を伝い、ぽたぽたと床に落ちる。

 でも、その瞳には、微かに別の色が宿り始めていた。


「……ねぇ……私も……強くなったら……ミレイを追いかけてもいい?」


 精一杯の声だった。


 ミレイは、微笑んだ。


「その時は、私より強くなってるかもね」


 リーナは拳を握りしめた。

 まるで、その言葉を絶対に実現する、と誓うように。


 そして、一歩踏み出し、ミレイに飛びついた。


 ぎゅっと抱きしめる。


「絶対、また会おうね!!」


 ミレイは、一瞬、戸惑った。

 でも、静かに腕を回し、その温もりを受け止めた。


「……うん。また会おう」


 暖炉の炎が、ぱちんと爆ぜた。

 二人の約束が、夜の静寂に溶けていった——。

槍術適性 [A] Lv.5(B→A、Lv.4→Lv.5)

 - 間合い管理・連撃・変則攻撃の精度がさらに研ぎ澄まされ、熟練者クラスでも容易には対処できない。

 - 剣士の師匠の剣技から学んだ「敵の死角をつく運用」が加わり、槍の強みを一段と活かせるようになった。

 - 依然として鍛錬や実戦次第で、さらなる高みを目指せる余地がある。


火魔法 [C] Lv.4(Lv.2→Lv.4)

 - 天賦の才による爆発的成長で、火炎弾・小火球などの威力と制御が格段に向上。

 - 暴発リスクも大幅に低減し、中~やや大規模な火炎を短時間なら扱える。

 - まだ魔力消費は大きめで、集中を切らすと制御が乱れる可能性がある。


受け流し [C] Lv.3(Lv.2→Lv.3)

 - 攻撃を最小限の動きでいなし、防御時の消耗を抑える。

 - 剣士の師匠が教える「返し技」へのスムーズな移行が身につき、カウンターの成功率が上昇。

 - 極端な重量武器や高度な武技にはまだ対応が難しい。


魔力干渉 [C] Lv.2(D→C、Lv.1→Lv.2)

 - 触れた魔法陣や結界への干渉がしやすくなり、低~中位の術式や障壁なら解除・破壊が可能に。

 - 無理に高位の魔法構造を破壊しようとすると反動を受けるリスクが依然として高い。


獲得スキル:

剣術適性 [C] Lv.1

 - 剣士の師匠の基礎教練により、「剣による攻撃・防御」の大枠を即座に習得。

 - 槍メインの戦闘においても、剣への理解が深まることで剣士との対峙が楽になる。

 - ただし、まだ「基本を覚えたばかりのCランク相当」で、剣主体の達人相手には不利。


雷魔法 [C] Lv.2

 - 槍の柄や穂先に雷の魔力を帯電させ、「雷槍」のような一撃を繰り出せる。

 - 対象に電撃を与えて痺れや硬直効果を狙えるため、突き技と非常に相性が良い。

 - 現在はLv.2のため、強力な落雷や大範囲攻撃は難しいが、点・線攻撃としては優秀。

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