閑話休題(薬師見習いリーナ) 3
ある日。
「また無茶したでしょ?」
「してないし」
「してる。腕の傷、見せて?」
リーナが腕を引き寄せると、そこには擦り傷ができていた。戦闘訓練の最中にできた小さな傷だが、リーナの視線は鋭い。
「うん、こんなのただのかすり傷だって」
「はい、じっとしてて」
リーナが慣れた手つきで薬を塗る。以前ならおどおどしていたが、今では手際がいい。ミレイは少し眉をひそめたが、痛みはほとんど感じなかった。
「痛くない?」
「全然」
「ならよかった」
リーナは満足げに頷いた。その手はもう迷いなく、手際よく包帯を巻き、傷口をしっかりと保護する。
「ほら、ちゃんと治せるようになったでしょ?」
「……ほんとだね」
ミレイは微かに笑った。
「前だったらさ、リーナ、手震えてたよね」
「そ、そんなことないし!」
「いやいや、めっちゃ震えてたって。包帯ぐるぐる巻きになって、結局エリサさんにやり直しさせられてたの、忘れた?」
「うぅ……それは……」
リーナが少し頬を膨らませる。ミレイはクスクスと笑いながら、巻かれた包帯を軽く撫でた。
「でも、ちゃんとできるようになったね。もう安心して任せられる」
「ふふ、当然でしょ?」
リーナは胸を張る。ミレイはそんな彼女を見て、ふと感慨深くなる。少し前まで、不安そうにミレイの背中を追いかけていたリーナが、今は堂々と自分の腕で誰かを治そうとしている。
「……ま、でも無茶しないでよね。ミレイが倒れたら、私が困るんだから」
「はいはい、気をつけますよ」
ミレイは軽く肩をすくめた。リーナの成長を感じながら、なんとなく心が軽くなった気がした。




