表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/107

閑話休題(薬師見習いリーナ) 2

 ある日。


 市場の喧騒の中、乾いた悲鳴が響いた。


「リーナ! こっちに来て!」


 リーナが慌てて走ると、そこには額から血を流した男が座っていた。どうやら市場で荷馬車にぶつかり、転倒したらしい。血が流れる額に手を当て、苦しそうに顔をしかめている。


「血……!」


 リーナの手が震える。今まで包帯の巻き方や薬の調合は学んできたが、実際に患者を治療するのは初めてだった。練習とは違う、生身の人間の痛み。それが目の前にある。


「落ち着きなさい。まずは傷口を見て、必要な処置を考えるのよ」


 エリサの冷静な声が響く。リーナは深呼吸し、男の傷を観察した。幸い、深い切り傷ではなく、表面の裂傷だ。だが、血はまだ滲み続けている。消毒し、止血すれば問題ない。


(できる……私にも、できる!)


 震える手を無理やり止め、清潔な布を手に取る。血に染まった男の額をそっと押さえると、彼がわずかに顔をしかめた。


「しみるけど、我慢してね」


 優しく声をかけながら、慎重に血を拭き取る。消毒薬を浸した布を傷口に当てると、男が息を呑んだ。


「ちょ、ちょっと待て、そんなに染みるもんなのか……?」

「大丈夫、すぐに痛みは和らぐから」


 そう言いながら、リーナは素早く包帯を取り出し、手際よく巻きつける。少し手が震えたが、なんとか形になった。


「……ふぅ」


「よくやったわね、リーナ」


 エリサが微笑む。リーナの顔が、誇らしげに綻んだ。


「ありがとうな、小娘。助かったよ」


 男が苦笑しながら頭をかく。リーナはまだ緊張した面持ちだったが、確かに一歩前に進んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ