閑話休題(薬師見習いリーナ) 1
「ここが薬屋……?」
リーナが戸口の前で、緊張した面持ちで呟く。目の前の建物は、石と木でできたしっかりとした作りで、扉の上には草木を模した看板が掛かっている。店の奥からは、独特な薬草の香りが漂っていた。
「そう。ここで預かってもらうことになってるって」
ミレイが軽く背中を押すと、リーナは少し足を踏み出し、こくりと頷いた。
「……大丈夫、できるよね?」
「うん。がんばる」
扉を押して中へ入ると、薬草の香りが一層濃くなった。棚には無数の瓶や草が並び、壁際には細かな器具が整然と並べられている。その奥に、ひとりの女性が座っていた。
「君たちが、ギルドから紹介された子たちか?」
声をかけてきたのは、年の頃四十代ほどの女性だった。背筋がぴんと伸びており、厳格な雰囲気を漂わせている。
「はい。この子、リーナを預けたいんです」
ミレイが言うと、女性はリーナをじっと見つめた。まるで値踏みするような視線に、リーナが小さく身をすくめる。
「……ふむ、手は小さいが、指先は器用そうだな。だが、大切なのは根気と集中力だ」
「が、がんばります!」
リーナが慌てて答えると、女性は満足げに頷いた。
「よろしい。私の名はエリサ。この店を任されている。ここでは薬の調合だけでなく、治療の基礎も学んでもらう。簡単な仕事ではないが、それでもいいか?」
「はい!」
リーナの声が震えながらも力強く響く。それを聞いて、ミレイはわずかに笑みを浮かべた。
「じゃあ、私はそろそろ行くよ。リーナも頑張ってね」
「うん……ミレイも、気をつけてね」
扉を開け、店を出る。振り返ると、リーナが緊張しながらも真剣な眼差しでエリサの話を聞いていた。
「……よし」
ミレイは軽く息を吐き、街の雑踏へと足を踏み出した。




