第五章 〜城塞都市ファル=ガルド〜 9
討伐を終えたミレイは、ゴブリンの耳を証拠として回収し、ギルドへ戻った。夕方のギルド内は活気に満ち、多くの冒険者たちが依頼を終えて談笑している。
「ただいま戻りました。ゴブリン討伐の報告をします」
受付嬢に依頼書と討伐証拠を提出する。彼女は証拠の耳を数えながら確認し、微笑んだ。
「お疲れさまでした。報告内容に問題はありませんね。……あら?」
彼女の手がぴたりと止まり、驚いたように目を瞬く。
「ゴブリンリーダーの耳もありますね。通常のゴブリンとは比べものにならない強敵だったはずですが……あなたが単独で討伐されたのですか?」
受付嬢の言葉に、周囲の冒険者たちがざわめき始める。
「え、ゴブリンリーダー? あの子が?」「新人じゃなかったのか?」
ミレイは静かに頷いた。
「はい。リーダーを含め、群れを全て討伐しました」
受付嬢は感心したように頷き、改めて報酬の計算を始める。
「今回の報酬は、基準額の四十ゴールド。そして、迅速な討伐を評価し五ゴールドを上乗せ……さらにゴブリンリーダーの討伐により三十ゴールドを追加し、合計七十五ゴールドとなります」
思った以上の報酬に、ミレイは少し驚いた。金貨の詰まった袋を受け取りながら、内心でほっと息をつく。これでしばらくの間、生活の資金には困らない。
「ありがとうございます」
報酬を受け取るミレイを、周囲の冒険者たちがちらりと見やる。Cランクになったばかりの少女が単独で依頼をこなしたことに、驚きと興味が入り混じった視線を向けている。
「おお、あの子、新人なのに一人でゴブリン討伐か?」
「それだけじゃない、ゴブリンリーダーまで倒したって……」
「俺たちでも厄介な相手なのに、凄いな……」
ささやき声が耳に届くが、ミレイはあえて気にしないようにした。
受付嬢が書類を整理しながら、優しく微笑む。
「初めてのギルド依頼、お疲れさまでした。あなたの実力は本物のようですね。今後の活躍を期待しています」
ミレイは軽く会釈し、受付を離れた。これで、初仕事は無事に完了した。冒険者としての第一歩を踏み出したばかりだが、ここからが本当の戦いになる。
夜になり、二人は宿舎の部屋で過ごしていた。リーナは慣れない仕事に疲れたのか、布団にくるまりながら欠伸をしている。
「今日は色々あったね」
「そうだね。でも、思ったよりちゃんと働けそうでよかった」
ミレイは布団の中で静かに天井を見つめた。これから先、リーナとどこまで一緒にいられるのか。
「私、もう少し強くなったら……」
リーナがぽつりと呟く。
「ミレイと一緒に旅ができるようになれるかな」
ミレイはそっと目を閉じた。
「……その時が来たらね」
リーナが完全に眠りについたのを確認すると、ミレイは深く息をついた。いつか、リーナをこの街に残していく日が来る。それまでに、できることをしておかなければならない。
明日から本格的に動き出そう。そう心に決めながら、ミレイも静かに目を閉じた。
基準: 1G ≒ 500円~1500円(市場変動あり)
1G = 約1000円(一般市場価値)
10G = 1万~1.5万円(庶民の1ヶ月の最低生活費)
100G = 10万~15万円(都市住まいの中流層の月収)
1000G = 100万~150万円(貴族や商人の財力レベル)
今回の報酬75G = 約7.5万~11.25万円
これは一般庶民の約3ヶ月分の生活費に相当
ゴブリンリーダー討伐報酬が追加され、相場よりも高め
受付嬢
「この金額が一度に支払われるのは、通常なら熟練の冒険者か、小規模の隊で討伐する依頼ですね。あなたの実力が認められた証拠です」




