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第五章 〜城塞都市ファル=ガルド〜 8

 ゴブリンたちは一斉に叫び声を上げ、武器を振りかざして突進してきた。粗末な棍棒や錆びた短剣を握りしめ、その動きは決して洗練されているわけではない。それでも、数の暴力は侮れない。以前の戦いで、ミレイはそれを痛感していた。


 だからこそ——。


 彼女は無駄な動きをせず、最も合理的な方法で戦うことを選んだ。


 飛びかかってきた一体を、槍の長さを活かして突き伏せる。鋭い槍先が腹部を貫き、ゴブリンが血を吐きながら崩れ落ちた。同時に、右側から襲い掛かってくる別の個体を察知し、すかさず槍を横に薙ぐ。


 だが、その動きを見ていたのか、ゴブリンは咄嗟に身を引いた。刃先が僅かに空を切る。


(……避けた?)


 単なる雑魚と思っていたが、無意識のうちに回避行動を取るとは——。


 ミレイの脳裏を警戒の念がよぎる。反射的な対応ができるということは、それなりに経験を積んだ個体ということ。群れの中でも知恵の働くゴブリンが指揮を執っている可能性もある。


「……ふぅん、ちょっとはマシってこと?」


 口元にわずかな笑みを浮かべながら、槍を持ち直す。逃げる気配がないなら、仕留めるだけだ。ミレイは一歩踏み込み、刃の先を低く構えた。


 ゴブリンが再び距離を詰める。それを見計らい、ミレイは槍を一気に突き出した——が。


 ゴブリンは反応し、横に跳んで槍を回避する。だが、ミレイの狙いはそこではなかった。


 槍を外した瞬間、彼女は槍を逆手に持ち替え、瞬時に下から掬い上げるように突いた。


 ゴブリンの喉元を捉え、乾いた音とともに肉を貫通する感触が伝わる。ゴブリンは目を見開いたまま、地面へと倒れた。


「残り……三体」


 視線を走らせると、他のゴブリンたちは明らかに警戒し始めていた。仲間が次々に倒されていくのを目の当たりにし、今度は慎重に間合いを取っている。


(さっきの避け方……あれが普通なのか、それとも、群れのリーダー的存在がいるのか)


 観察しながら、槍を軽く回し、構え直す。


 その時、森の奥から、低く、唸るような声が響いた。


 ゴブリンたちが一斉に振り返る。その表情に、先ほどまでとは違う何かが宿る——。


「……へぇ」


 ミレイは、槍を握る手にわずかに力を込めた。


 どうやら、この群れはまだ"本当の戦い"を見せていないらしい。


 森の奥から現れたのは、一際大きなゴブリンだった。


 通常の個体よりも一回り大きく、筋肉質な体躯を持ち、手には粗雑ながらも鉄製の斧を握っている。皮膚の色も少し濃く、どこか知性を感じさせる鋭い目つきが特徴的だった。


(……リーダー格か)


 群れを率いる存在——ゴブリンリーダー。これまでの戦いの中で、ミレイは強い個体が指揮を執ることで、集団が統制されることを察していた。つまり、こいつを倒せば、残ったゴブリンたちは混乱し、戦意を喪失する可能性が高い。


「じゃあ、狙うのは……」


 槍を軽く回し、深く息を吐く。ゴブリンリーダーは低く唸りながら、残っていた三体のゴブリンに何かを指示した。すると、ゴブリンたちはミレイを囲むように散開し、各方向から同時に攻撃を仕掛けてきた。


(なるほど、ただの獣じゃないってことか)


 ミレイは冷静に動きを見極める。


 まず、左側から襲い掛かるゴブリンに対し、素早く槍を突き出す。だが、相手もそれを読んでいたのか、身を低くして攻撃を回避しようとする。しかし、その動きを見越していたミレイは、体重を後方へかけると同時に槍の柄を蹴り上げ、即座に軌道を変える。


「——っ!」


 槍の石突がゴブリンの顎を打ち抜き、勢いよく仰け反らせた。その隙に右側からの攻撃を回避し、斜め後方へと跳ぶ。だが、そこでゴブリンリーダーが動いた。


 大振りながらも重い一撃が、地面を砕く勢いで振り下ろされる。


(速い……!)


 ミレイは槍を前に突き出しながら、即座にバックステップで距離を取る。風圧が頬をかすめ、地面にめり込んだ斧を確認した。


 単純な力勝負では分が悪い。


「なら……速さで勝つ」


 槍を逆手に持ち替え、一気にゴブリンリーダーとの間合いを詰める。相手が斧を引き抜くよりも速く、一撃を叩き込むつもりだった。


 しかし、その瞬間——。


 ゴブリンリーダーの動きが、変わった。


 斧を引き抜くのではなく、地面にめり込んだままの状態で手を離し、そのまま突進してきたのだ。


「っ!」


 とっさに横へ跳び、突進を回避する。ゴブリンリーダーはミレイの動きを読み切っていたかのように、すぐさま振り向き、めり込んだ斧を蹴り上げた。そして、宙に舞った斧を再びキャッチすると、そのまま横薙ぎに振り下ろす。


 ミレイは身を低くして紙一重で回避した。


(思ったより……やる)


 冷や汗が一筋、頬を伝う。戦いながら、彼女の脳裏にはかつての実技試験での戦いが浮かんでいた。リカルドとの戦闘を通じて、自分がどれだけ未熟かを思い知らされた。それでも——。


(私の槍は、もうあの頃のままじゃない)


 地面を蹴り、一気に距離を詰める。ゴブリンリーダーが防御の構えを取るよりも速く、ミレイの槍が突き込まれる。


 ——鋭い突きが、ゴブリンリーダーの肩口を貫いた。


 絶叫が森に響く。リーダーの体がぐらりと揺れた。


「……終わり」


 ミレイは追撃の一手を加えようとした。だが、リーダーは倒れない。槍を突き立てられたままの状態で、驚異的な意志の力で踏みとどまると、最後の一撃を繰り出そうと斧を振りかぶった。


 ——ならば、迷う必要はない。


 ミレイは瞬時にナイフを抜き、槍を捨てるようにして相手の懐へ飛び込んだ。


「……っ!」


 振り下ろされる斧。その刃が当たる直前、ミレイは最後の力を振り絞り、ゴブリンリーダーの喉元へ鋭い一閃を刻んだ。


 刃が肉を裂く音とともに、ゴブリンリーダーの体ががくりと崩れ落ちる。


 ——静寂。


 森のざわめきが、ゆっくりと戻ってくる。


 息を整えながら、槍を拾い上げると、周囲を見回した。残されたゴブリンたちは、リーダーが倒れたことを悟り、一目散に森の奥へと逃げ去っていった。


「……なんとか、終わった」


 心臓が高鳴るのを抑えながら、ミレイは深く息を吐いた。


 戦闘の余韻と共に、自分の中で何かが確かに積み上がったのを感じる。


 ——新たな経験が、彼女をまた一歩、前へと進めていた。

度重なる経験を経て、スキルが最適化されました。


天賦の才 [S] Lv.-(統合: 【武術の才能】+【魔術の才能】+【スキル獲得率向上】)

 - 武術・魔術の両方に異常な適応力を持ち、極めて高い成長速度を誇る。

 - ただし、努力なしでは何も得られず、訓練と実践が不可欠。


生存本能向上 [A] Lv.4

 - 生存確率を最大化する行動を無意識に選べる。

 - 危険察知能力が向上し、敵の動きや環境の変化を先読みできる。

 - 極限状態でも最適な選択を取れるが、身体能力が追いつかない場合がある。


戦闘本能 [A] Lv.4(統合: 【戦闘直感】+【対人戦闘適応】)

 - 戦闘中の最適な攻撃・防御の判断速度が向上。

 - 相手の攻撃のリズムを掴み、無駄な動きを減らせる。

 - ただし、経験豊富な達人にはまだ遅れを取る可能性がある。


槍術適性 [B] Lv.4(統合: 【槍術】+【槍適性】)

 - 槍の間合い管理、連撃、変則攻撃が可能になった。

 - 速い連撃やフェイントが使えるが、熟練の槍使いにはまだ及ばない。


受け流し [C] Lv.2

 - 攻撃を最小限の動きでいなし、防御時の消耗を抑える。

 - カウンターの機会を生み出しやすいが、重い武器や強力な一撃にはまだ完全に対応できない。


威圧 [D] Lv.2

 - 戦闘中に放つ圧が相手の心理に影響を与え、一瞬の隙を生む。

 - ただし、精神力の強い者や格上の相手にはほぼ効果がない。


火魔法 [C] Lv.2

 - 炎の矢の威力が向上し、魔力消費もやや効率化。

 - 依然として制御が難しく、暴発のリスクあり。


魔力干渉 [D] Lv.1

 - 触れた魔法陣や魔術的な構造に影響を与え、弱い魔法障壁の除去が可能。

 - ただし、高度な術式には干渉できず、強引に破壊しようとするとリスクを伴う。


隠密行動 [B] Lv.4(統合: 【気配遮断】)

 - 自然な動作で気配を消し、戦闘中でも一瞬の消失が可能。

 - 物陰や視線の死角を利用した動きが洗練され、発見されにくくなる。

 - 低ランクの探索スキル持ちにはほぼ気づかれなくなったが、高度な探索者や魔力感知にはまだ通用しにくい。


即席戦闘技術 [C] Lv.3(統合: 【即席武器作成】+【食材選別】)

 - 自然のものを利用し、最低限の武器や防具を作ることができる。

 - 直感的に食べられる食材を選別できるが、毒物の判別精度はまだ低い。


精神耐性 [A] Lv.4(統合: 【精神攻撃無効】)

 - 恐怖・幻覚・精神支配系の攻撃を完全無効化し、どんな状況でもパニックにならない。

 - ただし、痛み・疲労・飢えなどの肉体的苦痛は普通に感じる。

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