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第五章 〜城塞都市ファル=ガルド〜 6

 訓練場へ案内されたミレイは、そこで待ち受けていた試験官の姿を目にした。


 リカルド——黒鉄の鎧をまとい、鍛え抜かれた肉体を持つ壮年の戦士。鋭い眼光はまるで獲物を見定める猛禽のようだった。


「お前が新人か?」


 低く響く声がミレイを射抜く。彼の手には長剣が握られていた。無駄な装飾はない。戦場で研ぎ澄まされた、実戦向きの剣だった。


「はい」


 ミレイは短く答え、槍を握り直す。すると、リカルドは興味深げに目を細めた。


「槍使いとは珍しいな。どれほどの腕か……楽しみにさせてもらおう」


 周囲に集まった冒険者たちが期待の目を向ける中、リカルドは一歩踏み込んだ。


「では、始めるぞ——」


 その言葉と同時に、長剣が閃いた。リカルドの動きは鋭く、隙がなかった。


(速い!)


 刹那、ミレイの生存本能が警鐘を鳴らす。


 考えるより先に、体が動いた。


 槍の柄を素早く傾け、長剣の一撃を受け流す。だが、リカルドは怯まない。すぐさま体勢を立て直し、次の一撃を放つ。


 ミレイは後方へ飛び退き、距離を取った。


「ほう……反応は悪くない」


 リカルドが口元をわずかに歪める。だが、彼の猛攻は止まらない。


 踏み込み、踏み込み、繰り返される正確無比な剣撃。まるで、間合いという概念そのものを潰すかのような接近戦。


(距離を詰められるのはまずい……!)


 槍の優位は間合いの維持にある。だが、リカルドはその優位を瞬時に崩してきた。


 技術の差は歴然だった。


(……でも、負ける気はしない)


 鼓動が高鳴る。


 恐怖はない。


 ミレイの精神は驚くほど冷静だった。


 再び剣が迫る。ミレイは最小限の動きで回避しながら、槍を滑らせるように繰り出した。


「……!」


 リカルドの目がわずかに見開かれた。


 槍の軌道を読み切った彼は紙一重でかわし、反撃の刃を突きつける。


「っ!」


 ミレイは槍の柄を素早く回し、剣を弾く。再び間合いが開く。


 そこからの攻防は拮抗したものになった。


 ミレイの槍の間合いと鋭い反応速度が、リカルドの剣技を受け止める。しかし、リカルドは剣の角度を巧みに変え、徐々にミレイを追い詰めていった。


「本当に怖がらないんだな……」


 剣を振るいながら、リカルドが呟く。


「戦いは恐怖と向き合うものだ。だが、お前にはそれがない……その冷静さは、ある意味で危険だ」


 ミレイは一瞬だけ息をのんだ。


(危険?)


「本当の戦場では、恐怖は命を守る盾にもなる。だが、お前はそれを持たない。だからこそ、気づかぬうちに限界を超えてしまうかもしれん」


 その言葉と同時に、リカルドの剣が急激に速度を増した。


 ミレイは即座に反応し、槍を横薙ぎに振る。しかし——


「——っ!」


 金属音と共に、ミレイの槍が大きく弾かれた。


 バランスを崩し、後ろに飛び退く。彼の言葉が脳裏をよぎる。


(私は……恐怖を感じない)


 そのことが、どこか引っかかった。


 リカルドは剣を下げ、試合を終了させるように口を開いた。


「試験合格だ」


 そう言うと、彼はミレイを見据えながら、ゆっくりと息をついた。


「戦闘技術は未熟だが、鋭い反応と生存本能を持っている。だが、お前は戦いに"危うさ"も抱えている。そのことを忘れるな」


 ミレイは槍を握り直しながら、胸の奥でその言葉を反芻した。確かに、彼女は恐怖を感じずに戦うことができている。しかし、それが必ずしも強さとは限らない。むしろ、それによって無謀になり、死地へと足を踏み入れる可能性すらある。


「……ありがとうございます」


 短くそう答えたミレイに、リカルドはわずかに口元を緩めた。


 ギルドの受付へ戻るとミレイはCランクでの登録となることを伝えられた。


 それを聞いた周囲の冒険者たちがざわめく。


「新人でCランク? 冗談だろ?」

「おいおい、普通はFランクから始まるもんじゃねぇのか?」

「試験で何をやらかしたんだ……?」


 そんな中、リーナは目を輝かせながらミレイの手を握った。


「すごいよ! Cランクになったんだね!」


 受付嬢は落ち着いた口調で説明を始めた。


「本来、新人はFランクからのスタートですが、ミレイさんは試験で優れた戦闘能力を示されました。そのため、例外的にCランクからの登録となります。ただし、Cランクとは一般的に熟練した冒険者が到達するランクであり、経験が求められます。気を抜かないようにしてくださいね」


 ミレイは静かに頷いた。これは単なる特別扱いではなく、彼女自身が試験で示した実力による評価なのだ。


「それと、Cランク以上の冒険者には最低限の装備がギルドから支給されます」


 受付嬢の言葉に続けるように、リカルドがミレイの槍を見て口を開いた。


「その槍とナイフ……どう見ても即席の武器だな。戦闘で使うには不十分だ。せっかくの実力があっても、装備がそれでは台無しになる」


 ギルドの倉庫から運ばれてきたのは、しっかりとした鉄製の槍と、鋭く研がれた狩猟用ナイフだった。


「この槍とナイフを支給する。Cランク以上の冒険者には、それなりの装備が必要だからな」


 ミレイは手に取ると、その重みと質感を確かめた。即席の骨製武器とは比べ物にならない安定感がある。


「……ありがとうございます」


 そう呟くと、リカルドは少しだけ目を細めた。


「これからも見ているぞ。自分の成長を怠るなよ」


 その言葉に、ミレイは深く頷いた。

戦闘直感(C → B)Lv.3 → Lv.4

 - 戦闘時の最適な攻撃・防御の判断速度が向上。

 - 相手の攻撃のリズムを掴む精度が上がり、無駄な動きを減らせるようになった。

 - ただし、経験豊富な対人戦闘の達人にはまだ遅れを取る可能性がある。


槍術(D)Lv.1 → Lv.3

 - 槍を用いた戦闘の基礎スキルを獲得し、熟練度が一気に向上。

 - 攻撃範囲の活用、突きの精度、回避時の動作が洗練された。

 - Lv.3に達したことで、基本戦闘では隙のない動きが可能に。

 - ただし、高度な槍術技法や応用技はまだ未習得。


生存本能向上(B → A)Lv.3 → Lv.4

 - 危機察知と最適行動の判断速度がさらに向上。

 - 闘争中でも冷静に状況を把握し、反応速度が強化された。

 - ただし、体力や身体能力の限界を超えた動きはまだ不可能。


気配遮断(C → B)Lv.3 → Lv.4

 - より自然な動作で気配を消すことが可能になり、 戦闘中でも一瞬の消失が可能 になった。

 - 物陰や視線の死角を利用した動きが洗練され、発見されにくくなる。

 - 低ランクの探索スキル持ちや一般兵士にはほぼ気づかれなくなった。

 - ただし、 高度な探索スキル持ちや魔力感知を持つ相手にはまだ通用しにくい。


獲得したスキル

槍適性(B)Lv.4

 - 槍の間合い管理が格段に向上。

 - 速い連撃と変則攻撃を織り交ぜられるようになった。

 - ただし、まだ熟練の槍使いには及ばず、対応力に課題が残る。


対人戦闘適応(D)Lv.2

 - 初めての本格的な対人戦を経験し、対人戦のリズムや心理を少し理解し始めた。

 - 単純な動きの読み合いやフェイントへの対応が向上。

 - ただし、 経験値不足でまだ相手の「意図」まで読むのは難しい。

 - 戦闘経験豊富な相手には 技量で圧倒されやすいが、少しずつ適応できるようになった。


威圧(E)Lv.1

 - 戦闘中に無意識に放つ圧が、相手の心理に影響を与える。

 - 相手の動きを鈍らせたり、一瞬の隙を生むことが可能。

 - ただし、精神力の強い者や格上の相手にはほぼ効果がない。


受け流し(D)Lv.1

 - 攻撃をただ防ぐのではなく、最小限の動きで力を逸らす技術。

 - 防御時の消耗を抑え、カウンターの機会を生み出しやすくなる。

 - ただし、重い武器や強力な一撃にはまだ完全には対応できない。

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