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第五章 〜城塞都市ファル=ガルド〜 3

 村を後にし、森の中を歩きながらミレイは進む方向を見据えていた。木々の間から差し込む朝の光が、霧の残る地面を薄く照らしている。鳥のさえずりがかすかに聞こえ、風が葉を揺らす音が心地よい。


 リーナが少し後ろを歩きながら、ふと尋ねた。


「……ねぇ、ミレイ。どこに向かうの?」


 ミレイは足を止めずに答える。


「森を抜けた先に、大きな都市があるはず。高台から見えた。」


 リーナは目を見開いた。


「……それって、もしかしてファル=ガルド?」


「ファル=ガルド?」


「うん。すごく大きな城塞都市。お父さんが商売をしていたことがあるって聞いたことがある。」


 ミレイはその名を頭の中で繰り返した。高台から見えた城塞都市のことを、リーナが知っているというのは偶然ではないだろう。


「……だったら、そこに行けば何か情報が得られるかもしれないね。」


「うん。でも、都市に入るのは簡単じゃないよ。特に今は魔王軍の動きがあるって聞いたことがあるし、検問が厳しくなってるかも。」


 ミレイは少し考える。たしかに、大きな都市であれば警備も厳しいだろう。検問をどう突破するか、あるいは別の手段を探す必要がありそうだ。


「とにかく、まずはそこを目指そう。」


 リーナは小さく頷いた。


「……うん。」


 二人は再び歩き出す。森の中を抜け、都市を目指して。


 森の木々が少しずつ疎らになり、視界が開けてきた頃、ミレイはふと足を止めた。肌に感じる空気が、さっきまでとは違う。どこか、ざわついているような——。


「……なんか、変な感じがする。」


 リーナが不安そうにミレイを見上げた。


「どうしたの?」


「ううん……なんでもない。」


 違和感は拭えないものの、確信が持てるわけではない。慎重に進みながらも、ミレイは周囲の様子を観察し続けた。


 そのまま歩き続けるうちに、やがて森の端が見えてきた。前方には開けた平原が広がり、その向こうに確かに都市の影が見える。


「……あれが、ファル=ガルド?」


「うん……でも、思ってたよりも、なんだか……静か。」


 リーナの言葉に、ミレイも違和感を覚えた。遠目からでも、都市の城壁が高くそびえているのが分かる。だが、門のあたりに目を凝らしても、人の往来がほとんどない。通常、大きな都市ならば行き交う人々や馬車が見えるはずなのに。


「近づいてみよう。」


 慎重に進みながら、二人は街道へと向かう。


 城塞都市ファル=ガルドの巨大な門が目の前に現れた。分厚い鉄製の扉がそびえ立ち、両側には石造りの城壁が広がっている。門の前には数人の兵士が立ち、旅人や商人らしき人々が列を作っていた。


「やっぱり、検問があるね……。」


 リーナが不安そうに呟く。門の前では、荷車を引く商人や旅人たちが順番に書類を見せ、兵士たちが一人ずつ確認していた。時折、質問されているようだが、会話までは聞き取れない。


 ミレイは門の脇に目をやった。城壁の一部には見張り台があり、そこから兵士が周囲を警戒している。


「正面から入るのは……ちょっと難しそうだね。」


「うん、でも、どうしよう? 他に入る方法はあるの?」


 リーナが心配そうにミレイを見つめる。ミレイは少し考え、門の周辺を見渡した。正面突破は難しいが、別のルートを探す余地はありそうだ。


「まずは、様子を探ろう。」


 そう言って、ミレイは街道の脇にある少し離れた岩陰へと移動し、慎重に門の様子を観察し始めた。

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