表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/107

第三章 〜少女との出会い〜 7

 焚き火の小さな炎が揺れ、橙色の光が岩のくぼみに反射する。薪がはぜる音が静寂を破り、その微かな音が妙に心地よかった。


 少女はまだ意識を取り戻さない。だが、呼吸は落ち着き、先ほどよりも安定している。薬草が効いたのか、それとも単に眠り込んでいるだけなのか——。


 ミレイは火に手をかざし、じんわりと伝わる温もりを感じながら思考を巡らせた。


 この森を抜けるべきか、それとも一度この村を確かめるべきか。高台から見えた時点では煙が立ち昇っていた。つまり、人が住んでいる可能性がある。だが、少女の様子からして、何か異常が起こっているのは間違いない。


「……この子が目を覚ましたら、話を聞こう。」


 独り言のように呟く。


 そのまま、焚き火の熱を感じながら、槍の柄を指でなぞった。ゴブリンの武器から回収した革紐を巻きつけ、握りやすく補強したばかりのそれは、ほんの少しだけ手になじむようになった。


 だが、まだ不十分だ。


 戦闘のたびに感じる。——もっと強い武器が必要だ、と。


 このままでは、ただ生き延びるだけで精一杯だ。だが、生きるためには、戦わなければならない。


 静かに槍を置き、背を倒木に預ける。


 疲れが一気に押し寄せる。だが、完全に眠るわけにはいかない。


 意識を半分だけ落としながら、火の揺らぎを見つめる。


 ——この世界で、生き抜くために。


 夜は深まり、ミレイは浅い眠りへと落ちていった。


 翌朝。


 鳥のさえずりと、森の微かなざわめきが耳を満たす。


 ミレイはゆっくりと目を開けた。夜露に濡れた空気が肌を撫で、火の気配はすでに消えていた。残った灰の中に、まだわずかに燻る赤い光が見える。


 身体を起こし、隣で寝ている少女の様子を確かめる。


 彼女の表情は穏やかで、少しだけ顔色が戻っている。唇も乾いてはいるが、昨晩よりは幾分ましだ。


「……目を覚ましそう?」


 ミレイはそう呟きながら、少女の額に手をかざす。熱は引きつつある。回復の兆しが見える。


 その時——。


 少女のまぶたが、ゆっくりと震えた。


「……ん……」


 弱々しい声が漏れる。


 ミレイは身を乗り出し、静かに声をかけた。


「大丈夫?」


 少女のまつげが震え、ゆっくりと目が開かれる。薄暗い森の光を映したその瞳が、ぼんやりと焦点を合わせようとする。


「……あなたは……?」


 掠れた声が、戸惑い混じりに紡がれる。


 ミレイは少女の視線を受け止め、言葉を選ぶように口を開いた。


「私はミレイ。あなたを助けた。」


 少女の瞳がわずかに揺れる。そして、次の瞬間——彼女の表情に、張り詰めた緊張が走った。


「……ここは、どこ?……村は……?」


 その言葉に、ミレイは僅かに眉を寄せた。


「村……?」


 少女は、震える声で答えた。


「……私の……みんながいた村……。」


 ミレイの胸に、一つの疑念が生まれる。


 ——この村に、一体何が起こった?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ