第三章 〜少女との出会い〜 7
焚き火の小さな炎が揺れ、橙色の光が岩のくぼみに反射する。薪がはぜる音が静寂を破り、その微かな音が妙に心地よかった。
少女はまだ意識を取り戻さない。だが、呼吸は落ち着き、先ほどよりも安定している。薬草が効いたのか、それとも単に眠り込んでいるだけなのか——。
ミレイは火に手をかざし、じんわりと伝わる温もりを感じながら思考を巡らせた。
この森を抜けるべきか、それとも一度この村を確かめるべきか。高台から見えた時点では煙が立ち昇っていた。つまり、人が住んでいる可能性がある。だが、少女の様子からして、何か異常が起こっているのは間違いない。
「……この子が目を覚ましたら、話を聞こう。」
独り言のように呟く。
そのまま、焚き火の熱を感じながら、槍の柄を指でなぞった。ゴブリンの武器から回収した革紐を巻きつけ、握りやすく補強したばかりのそれは、ほんの少しだけ手になじむようになった。
だが、まだ不十分だ。
戦闘のたびに感じる。——もっと強い武器が必要だ、と。
このままでは、ただ生き延びるだけで精一杯だ。だが、生きるためには、戦わなければならない。
静かに槍を置き、背を倒木に預ける。
疲れが一気に押し寄せる。だが、完全に眠るわけにはいかない。
意識を半分だけ落としながら、火の揺らぎを見つめる。
——この世界で、生き抜くために。
夜は深まり、ミレイは浅い眠りへと落ちていった。
翌朝。
鳥のさえずりと、森の微かなざわめきが耳を満たす。
ミレイはゆっくりと目を開けた。夜露に濡れた空気が肌を撫で、火の気配はすでに消えていた。残った灰の中に、まだわずかに燻る赤い光が見える。
身体を起こし、隣で寝ている少女の様子を確かめる。
彼女の表情は穏やかで、少しだけ顔色が戻っている。唇も乾いてはいるが、昨晩よりは幾分ましだ。
「……目を覚ましそう?」
ミレイはそう呟きながら、少女の額に手をかざす。熱は引きつつある。回復の兆しが見える。
その時——。
少女のまぶたが、ゆっくりと震えた。
「……ん……」
弱々しい声が漏れる。
ミレイは身を乗り出し、静かに声をかけた。
「大丈夫?」
少女のまつげが震え、ゆっくりと目が開かれる。薄暗い森の光を映したその瞳が、ぼんやりと焦点を合わせようとする。
「……あなたは……?」
掠れた声が、戸惑い混じりに紡がれる。
ミレイは少女の視線を受け止め、言葉を選ぶように口を開いた。
「私はミレイ。あなたを助けた。」
少女の瞳がわずかに揺れる。そして、次の瞬間——彼女の表情に、張り詰めた緊張が走った。
「……ここは、どこ?……村は……?」
その言葉に、ミレイは僅かに眉を寄せた。
「村……?」
少女は、震える声で答えた。
「……私の……みんながいた村……。」
ミレイの胸に、一つの疑念が生まれる。
——この村に、一体何が起こった?




