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第三章 〜少女との出会い〜 6

 ミレイは周囲を見渡し、わずかに起伏のある地形を探す。ほどなくして、木々の間に大きな岩が重なり合うくぼみを見つけた。倒木が入り口を覆うような形になっており、簡単には外から見つからなさそうだ。


「……あそこなら、少しは安全かも。」


 少女の体を支え直しながら、慎重にくぼみへと足を運ぶ。足元の枯葉が擦れる音がやけに大きく聞こえる。心臓が強く脈打つのを感じながら、それでも前へ進む。


 くぼみにたどり着くと、少女をそっと地面に寝かせた。彼女の呼吸は浅く、不安定だ。今すぐ手当てしないと危険かもしれない。


「……まずは、薬草を試してみよう。」


 ミレイは拾った革袋から薬草を取り出し、慎重に葉を裂く。苦味のある香りがふわりと立ち上る。適当に使っても意味がない——いや、逆に悪化させる可能性だってある。


 目を閉じ、過去の経験を思い出す。ループの中で何度も繰り返した日々——その中で見た知識が、今の自分を助けてくれるかもしれない。


 熱を持つ傷には冷やす処置が有効。だが、この草は乾燥している。水に浸して揉み、湿らせてから貼り付けるべきか。


「……うん、それでやってみよう。」


 そばの小川まで行き、薬草を水で軽く湿らせる。適度に絞り、少女の傷口にそっと押し当てる。


「これで、少しは……。」


 少女は微かに眉をひそめるが、苦しむ様子はない。じわじわと薬効が染み込んでいくことを願いながら、ミレイは深く息をついた。


 ——次に、やるべきことは。


 周囲の安全確保と、自分の回復。


 まだ気は抜けない。


 夜になる前に、食料の確保と焚き火の準備をしなくてはならない。ミレイはくぼみの外へと目を向けた。小さな獲物なら、槍を使えば狩れるはずだ。慎重に森の奥へ足を進め、獲物を探す。


 ほどなくして、小さな鳥が木の根元をつついているのを見つけた。息を潜め、槍を構える。動きの癖を観察しながら、静かに間合いを詰める。


「……今。」


 槍が素早く突き出され、鳥の動きが止まる。狩りの成功を確認し、ミレイはゆっくりと息を吐いた。これで最低限の食料は確保できた。


 戻る途中で、薪に使えそうな枝も拾い集める。くぼみの近くに戻ると、石を並べて簡易的な炉を作り、拾った枝を組んで火をつけた。


「……頼むよ。」


 指先に意識を集中し、魔力を込める。火魔法の制御はまだ不安定だが、慎重に出力を調整しながら、焚き火へと魔力を放つ。


 パチッと小さな音がして、炎が枝に燃え移る。暖かな光がくぼみを照らし、少女の顔にもかすかに安堵の影を落とした。


「よし……これで、夜を越えられる。」


 ミレイは鳥の羽を取り除き、火で炙る。香ばしい匂いが漂い、空腹が一層際立つ。それでも、少女が回復するまで、まずは見守らなければならない。


 食事を終えた後、ミレイは槍の強化を考えた。ゴブリンの持っていた武器は使えそうにないが、彼らの持っていた革の紐を使えば、槍の強度を少しは増せるかもしれない。


「……少しでも、マシにしないと。」


 槍の柄を強化し、手に馴染むように調整する。わずかではあるが、戦闘時の耐久性が上がるはずだ。


 焚き火の明かりの中で、ミレイは槍を握り直す。今夜は、静かに、慎重に夜を越えなければならない。


「……明日は、どう動くか決めなきゃ。」


 穏やかとは言えないが、わずかな安心感の中で、ミレイは少女を見守りながら、夜を迎えた。



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