第三章 〜少女との出会い〜 4
残ったゴブリンの一体が低く身構え、獣のように飛びかかってくる。棍棒が振り下ろされる寸前、ミレイは足を滑らせるように身を沈め、槍を横へ払った。ゴブリンの脚を刈るように叩きつける。
「ガアッ!」
バランスを崩したゴブリンが前のめりに倒れる。すかさず、槍の穂先を逆手に持ち替え、その背へと突き刺した。
感触が伝わる。骨を貫き、臓腑を裂く手応え。だが、躊躇う余裕はない。
槍を抜くと同時に、背後から突進してきたもう一体のゴブリンが短剣を突き出してくる。とっさに槍を横に払い、その攻撃を弾く。金属が擦れ合い、火花が散った。
「……っ!」
敵の動きが速い。連携して、隙を狙ってくる。
ミレイは一瞬、背後の木に追い詰められた。ゴブリン二体が同時に攻めてくる。だが——
「——ここで終わるわけにはいかない。」
呼吸を整え、最後の一撃を狙う。
次の瞬間、ゴブリンの一体が素早く横へ回り込んだ。ミレイの槍のリーチでは対応しづらい間合い。短剣が閃き、胸元へ向かって一直線に突き出される。
ミレイは即座に判断し、槍を逆手に構え、咄嗟に前へ突き出した。しかし、間に合わない——!
刹那、彼女の左手が腰に伸びた。反射的な動作。懐に収めていた骨のナイフを抜き、短剣を防ぐように振るった。
「——っ!」
ガキン、と鋭い音。骨の刃とゴブリンの短剣がぶつかり合う。予想以上の衝撃に、ミレイの手がしびれる。だが、それでも止まらない。
そのまま腕を捻り、ナイフを押し込むように突き立てた。ゴブリンの首筋に刃が食い込み、悲鳴が上がる。血が噴き出し、異形の体がよろめく。
ミレイは即座に足を踏み込み、残る最後のゴブリンへと向き直った。
「あと一体——!」
ゴブリンは仲間の死を見て、怯えたように後ずさる。しかし、それでも戦意を失っていない。棍棒を握る手が震えながらも、なおも隙をうかがっている。
ミレイは深く息を吸い、槍を構え直した。
最後の一体。このゴブリンを倒せば、戦いは終わる。
だが、敵もそれを理解しているのか、無闇に突っ込んではこない。距離を保ちながら、小さく唸り声を上げる。ミレイも焦らず、一歩ずつ間合いを詰めていく。
「……どうする?」
敵は隙を狙っている。ならば、こちらから揺さぶりをかけるしかない。
ミレイは小石を蹴り、わざと前方に転がした。ゴブリンの視線がわずかに動く。その一瞬——
「今だ!」
ミレイは足を踏み込んだ。槍を突き出す——が、ゴブリンも待ち構えていたように棍棒を振り下ろす。攻撃の軌道を見極め、ミレイは咄嗟に槍を引き、棍棒を避ける。
だが、それだけでは終わらせない。
槍を逆手に持ち替え、横薙ぎに振るう。ゴブリンの脇腹を深く裂き、黒い血が飛び散る。
「ギャアアッ!」
悲鳴を上げ、ゴブリンが膝をつく。
ミレイは迷わなかった。
即座に槍を構え直し、全体重を乗せるように突き出す。槍の穂先がゴブリンの喉元を貫いた。
ゴブリンの目が大きく見開かれ、そのまま動かなくなる。
静寂が訪れる。
ミレイは荒い息を吐き、槍をゆっくりと引き抜いた。地面に倒れたゴブリンの体から、最後の熱が消えていく。
「……終わった。」
槍を支えにしながら、膝をついた。全身が疲労で重い。筋肉が張り詰め、腕はしびれている。
だが、生きている。
初めての複数戦。それを一人で乗り切ったのだ。
ゴブリンの死体を見下ろしながら、ミレイはゆっくりと立ち上がった。
戦闘直感(D → C)Lv.3
- 戦闘時、敵の動きをより素早く察知し、最適な攻撃タイミングを本能的に理解できる。
- 近接戦闘の精度が向上。
槍術(新規・D)Lv.1
- 槍を用いた戦闘の基礎スキル。
- 攻撃範囲・突きの精度向上。
陣形分断(新規・D)Lv.1
- 複数の敵を分散させ、有利な戦場を作るスキル。
- 環境を利用し、敵を効率よく捌くことが可能。
気配遮断(D → C)Lv.3
- 敵に察知されにくくなる能力。
- 伏撃や奇襲時により効果を発揮。




