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第三章 〜少女との出会い〜 3

 五体。粗末な布を纏い、錆びた短剣や棍棒を手にしている。黄緑色の皮膚、爛々と光る赤い瞳。獲物を前にして、口元には下卑た笑みが浮かんでいた。


 ミレイはすぐに状況を分析する。ゴブリンは単体では脅威ではないが、群れで行動することで狡猾さを発揮する。特に、彼らは弱った獲物を狙う習性がある。少女の状態を見れば、長くはもたない。


「……私一人で、五体か。」


 声を押し殺し、槍を握り直す。


 まともな戦闘経験はまだ少ない。狼とは違い、相手は知恵を持つ。武器を持ち、チームで動く。だが、冷静に見極めれば勝機はある。


「奇襲……それしかない。」


 ミレイはゆっくりと息を吸い、木陰に身を隠した。生存本能が告げる。「動くな。今は機を待て」。


 ゴブリンたちはまだミレイに気づいていない。彼らの意識は完全に少女へと向けられていた。一体がにたりと笑い、手にした短剣を弄ぶ。


「っ……」


 少女がわずかに身を縮める。恐怖に震える彼女を見下ろし、ゴブリンたちは愉快そうに甲高い笑い声を上げた。


 その瞬間。


 ミレイは地を蹴った。


 疾風のごとく、槍を構えながら駆ける。狙うは最も警戒の薄い個体——短剣を弄んでいたゴブリン。


 ——突く。


 槍の穂先がゴブリンの喉を貫いた。異形の者が目を見開く間もなく、槍を引き抜き、鮮血が飛び散る。


 その一撃が、戦闘の幕を開けた。


 ゴブリンの喉を貫いた槍を引き抜くと、鉄臭い血の匂いが鼻をついた。倒れた個体が地面に崩れ落ちる。その瞬間、他の四体が一斉に動き出した。


「ギャアアッ!」


 警戒の叫び。残ったゴブリンたちは武器を構え、ミレイに向かって殺到する。短剣、棍棒、そして石を握る者までいる。戦意を剥き出しにし、彼女を取り囲もうと動いた。


「……囲まれるわけにはいかない。」


 生存本能が警告を発する。乱戦になれば勝ち目はない。だからこそ、敵の陣形を崩す必要がある。


 ミレイは瞬時に動いた。槍を持つ手を滑らせ、敵の攻撃が届く前に大きく横に跳ぶ。ゴブリンの棍棒が地面を叩き、土埃が舞い上がる。回避の後、槍の柄を持ち直し、一番近い敵へ向かって突きを繰り出した。


 ——だが、避けられる。


 ゴブリンが身を翻し、槍の穂先がわずかに空を切る。ミレイはすぐさま踏み込み、体ごと押し出すように槍を振るう。今度は敵の腹を浅く裂いた。ゴブリンが悲鳴を上げるが、致命傷には至らない。


 ——武器の軽さが響いている。


 即席の槍では切れ味が悪い。貫くには十分な速度が必要だが、ゴブリンは小柄な分、動きが素早い。


「……なら。」


 戦闘直感が働く。体が勝手に動く。


 ゴブリンが反撃に移ろうとした刹那、ミレイは地面を蹴り、さらに距離を詰める。槍の先端ではなく、柄の部分を強く振るい、側頭部へ叩きつけた。


 鈍い音が響く。


 ゴブリンの体が揺らぎ、膝をつく。ミレイは逃さず、槍を突き立てる。


 ——二体目、撃破。


 残るは三体。


 だが、その時。


 背後から鋭い風切り音。


 直感が叫ぶ。「避けろ!」


 ミレイは即座に身を低くし、頭上を何かが掠める。ゴブリンの一体が石を投げたのだ。鋭い衝撃音とともに、後ろの木にぶつかり、木の皮が剥がれ落ちる。


 息を整え、槍を握る手に力を込める。ゴブリンたちはまだ動きを止めていない。次の攻撃に備えて構え直す。


「……仕留めきらないと。」


 彼女は槍を構え直し、再び走り出した。

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