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雑草さえも花束に

作者: 四季式部

待ち合わせ場所はいつも通りモダンなガス灯をイメージしたこの町では有名な街灯の下だ。それにしても遅い。いつもは10分もすれば来るのだが。


「はー」息が白いとはしゃぐ僕の元にごめんごめんと手を合わせてきた友人ルイに挨拶するように「30分遅刻なんて通常だな。温かいのおごれよ」と返す。


今日は枝だけになってしまった木々に光が灯る。「きれーだな」白い息を出しながらルイが言う。今年も野郎二人でイルミネーションかよと思いつつ「来年は僕じゃないといいな」と嫌味を言ってやった。


お前もななんて言われた僕は出店に目をやった。


イチゴ飴にタピオカ、韓国風チーズホットドッグと焼きそば。活気にあふれていた。周りはやはりカップルや家族連れが多かったが、中には女性陣や高校生であろう集団が楽しそうに唐揚げなどを食べながら団欒していた。


僕たちは温まれそうな食べ物を買って食べ、その後も楽しい時間を過ごした。


ルイとはあの街灯で「また明日な」と別れた。


楽しかったなと冷えた体を摩りながら電車を待っていた。「あのこれ落としましたよ」と彼女が財布を渡してくれた。電車が通り、風と騒音が体に当たる。「ありがとうございます」大声で言ったつもりだが聞こえなかったらしくニコッと笑ってあざとく首をかしげる。風になびく髪はとても美しかった。


彼女は僕と同じ駅で降りるらしい。話をするうちに連絡先を交換するほど仲良くなった。「じゃあ僕こっちなんで」と白い息を吐くと「またお話ししましょうね」と手を振ってくれた。

久しぶりの感覚を思い出し嬉しくなった。


家に着くと寒さなのかわからないがぽっぺが赤くなっていた。胸を抑えながらガッツポーズをした。


「ジリリリリ」という音で目が覚めた。青空を見上げ白い息を吐いた。あれは夢だったのだろうか。そう思いスマホを見る。4件の着信が入っていた。「今日は楽しかったです!!」「今度オススメの映画があるんですけど一緒に見ませんか?」「お返事待ってまーす!」「おやすみなさい」読んでいると向かいにいたおじさんが冷たい視線で僕を見ていた。やばいニヤニヤしていたのかそう思いながら返信する。


「返信が遅れてすいません。全然いいですよー何ていう映画ですか」これでいいだろうか。そう考えていると「ヴッ」バイブが鳴った。「ハリボテの絆っていう映画なんですけど、ドラマでやってたのが映画になったんですよ!」


ドラマは見たことがあった。詐欺師が国に雇われて闇のお金を悪い詐欺師たちから取るという物語だ。大どんでん返しが人気を得ている。楽しさは詐欺を本物にするというキャッチコピーは刺さるものがある。


「僕も好きなんすよー見に行きましょー」そう返信するとまた、「やっぱ僕さんとは気が合いますね笑」僕も笑と送信して電車を降りた。


講義を受けている僕の横でガタンと物音を立てた。「スイセン」寝不足らしい彼は昨日イルミネーションを見た奴だ。僕と別れたあとバス停で待っていたという彼は高校生四人組が話す心理学とオカルトに加わり、少し話をしていたらしい。「お前よりも心理学に詳しいやつが一人いてさめっちゃ面白かったわ」なんて自慢する彼に何時まで高校生を付き合せたんだよと怒った。


講義が終わり食堂でカレーうどんを啜るルイに良い人見つけたと打ち明けた。「お前らしいわ4日楽しんで来いよ」そう口を拭く。こいつと友達でよかったなんて思った。


待ち合わせ場所はいつも通りモダンなガス灯をイメージしたこの町では有名な街灯の下だ。だがいつもと違うところがあった。手を振りながら近づいてくる彼女だ。


僕は悴んでいる手を振り返した。


「ごめん待った?」謝る天使に戸惑っていると手を握ってくれた。「今日寒くて」心まで温まった僕は今日という日を楽しんだ。


「映画楽しかったね~」笑う彼女に僕はプロポーズした。「はい」と可愛らしく照れ臭そうに言った。


「今日は雨が降るらしいよ」と話し声が聞こえる中、ルイはカレーライスを食べていた。「彼女出来たわ」というとカレーを吹きこぼしていたがすぐにおめでとうと奢ってくれた。


僕はなんて世界で生きているんだと実感した。


サンタクロースが仕事をしている中、僕たちはデートをしていた。「もし、私が結婚詐欺師だったらどうする?」ふと問う。


面白いことを言うなと「えーそしたらやだなー」なんて口から洩れた。


なんだそれと笑う彼女を見てぎゅっと手を握った。


食堂で「お前ニヤニヤきしょいぞ」と声をかけられた。「なんだルイか」ビックリしたがカレーパンを持ってる彼を見て安心した。


見てくれよ可愛いだろと一枚の写真を見せる。もちろん昨日のデートの写真だ。


「ちょおま」と指をさした。こいつ知っているぞ俺と声を荒げるルイを宥めた。


「こいつ俺の元カノっていうか昔結婚詐欺にあったって言ったろ」確かにルイは2年前結婚詐欺に会ったらしく15万円を取られたらしい。お前なのにと励ましていた。


「まじかでも僕さ大丈夫だよ」彼女は結婚詐欺の話題を昨日出していたし、彼女はもしかしたら昔の過ちと葛藤してるんじゃないかと思っていた。


どうにかなるよと言う僕に「いい作戦思いついた」と笑った。


今日は雪が降っている。待ち合わせ場所はいつも通りモダンなガス灯をイメージしたこの町では有名な街灯の下だ。遠くから感じる彼の視線が痛かったが、彼女は「会いたかったよー」と駆け寄ってきた。


今日は彼女を一段と知るつもりだ。


すこしおしゃれなレストランで僕は写真を見せる。こいつ友達なんだけど…面白おかしく話を誇張して彼を紹介する。計画がバレないように慎重にだ。


写真を見た瞬間彼女は目を大きくさせた。


「ごめんなさい」「よっ」ほぼ同時だった。僕は「へ?」となっていた。頭を下げていた彼女が「ルイ君いたんだ」と言ってルイにも謝った。友達の女子と来たら偶然会ったと装うルイは「うん」と返事をする。結局ルイの作戦なんてバレたわけだ。


女子を帰らせて僕たち三人で話をする。


彼女の言い分はこうだった。最初は僕をターゲットに詐欺しようとしていたが本当に楽しくて恋をしたんだと。


僕は笑って「僕は一目惚れしたのにな」と言った。彼女は申し訳なさそうに縮こまった。


ルイは「あの時俺から盗んだお金は」と言うと「必ず返します」と謝った。


一件落着した僕たちはルイと別れ二人で歩いていた。15万円は僕が払うよ。彼女と親友の問題だから、ここで払わないでいつ役に立つんだと説得させた。


彼女から口座番号を聞き、今持っている5万円を振り込んだ。今日は節分かなんて考えていた。


土曜日。いつもより暖かい。3月も終わりを告げたのかなんて考えていた。彼女に手を振る。久しぶりと最近の話をした。「あの5万円ありがとうございました」お辞儀をする彼女は「あと10万はもうちょっと待ってて」と言った僕を抱きしめた。


ルイはいい人見つけたなと手のひらを返していた。もうすぐ僕たちは卒業を迎える。そう考えながらラーメンを食べていた。


卒業式当日に彼女はおめでとうとケーキを作ってくれた。


僕も今日はプレゼントがある。そういうと花束を渡した。「わー綺麗ね」とても目を輝かせるので笑ってしまった。


そんなに?と聞く僕にとてもうれしいと彼女は喜んでくれた。じゃあ10日にいつもの所でと帰路に就いた。


彼女に「バイバイ」を告げ僕はまた、仮面を外した。



4月10日 日曜日 午前10時00分



助手席に座っている昨日までルイという仮名だった相棒は「もったいねー俺さお前に絶対お似合いだと思ったんだけどなー」と呟いていたが職業病で好きになれないんだと説明する。心の中で彼女とこの町に「来世で会おう」と誓いそして謝った。信号が青に変わる。


同時刻


待ち合わせ場所はいつも通りモダンなガス灯をイメージしたこの町では有名な街灯の下だ。それにしても遅い。いつもは彼が先についているのに、私は連絡をしたが「おかけになった電話番号は現在問扱いされていませんもう一度確認してください」という音声のみだった。


ふと街灯を見ると紙切れが貼ってあった。私は震える手で紙切れを開く。


僕が渡した花束はすべて道端で摘んだ雑草です。レンゲ、アカツメクサ、ハルジオン、オオアラセイトウ、オニタビラコ。1本の花でいいから貰えるような人になってください。僕たちのようにならないできちんと罪を償って


嫌な予感がして口座を見る。


私はなんて世界で生きているんだと実感した。


口座からは35万円取られていた。


滲んだ視界に包まれる。彼に対してなのか、はたまた自分の惨めさになのか私は分からなかった。


警察にお世話になれない私は自分の人生を恨んだ。名前も知らないあの人と共に。


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