部屋
私は今、円柱状の一室にいる。
そこは暗く、不穏さを感じさせる。
部屋には何もなく、3m四方の出入り口がある。
壁画には、人に限りなく近い魚が描かれている。
人に限りなく近い魚たちは、壁画の中で踊り狂っている。
壁画はとてもリアルで、少しグロテスクな風貌をしている。
この円柱状の奇妙な一室は、高さが10m、底面の円の直径が6m程だ。
この円柱状の部屋は水で満たされている。
部屋の床には、蛸の頭を持った巨大な怪物の姿が描かれている。
それは触手に覆われていた。
それの皮膚の表現は奇妙で、なんとも忌まわしい感じがした。
私はこの円柱状の部屋に、何か懐かしさに似た感覚を覚えた。
その時、何かの泳ぐ音が聞こえた。
それは部屋の外から聞こえてくるようだった。
その音の大きさが、泳いでくるそれらの数の多さを物語っていた。
私が部屋の中から見たものを語ろう。
彼らの姿は、限りなく人に近い魚だった。
ただし彼らの本質、彼らの存在は人間とは全く異なるものだった。
彼らの中には金色の装飾品を身につけているものが何匹かいるようだった。
彼らは人ににた四肢を持っているが、それには水掻きがついている。
それらが一心不乱に何処かを目指して進む様子は、正に狂気的なものだった。
しかし、私は興味によってか、狂った想像によってかは分からないが、彼らについていく事にした。
私は彼らを一心不乱に追いかけた。
彼はあの蛸の怪物の彫像の並ぶ廊下の中を、狂ったように、救いを求めるように進んでいった。
私は彼らになんとか追いつくことが出来た。
私は彼らと共に、悍ましい壁画と狂気的な彫像の並ぶ廊下を進み続けた。
私達は階段を上がり、廊下の外に出た。
そこには、異常極まりない非ユークリッド幾何学的な外形を持つ多くの建造物からなっている都市が広がっていた。
それらは明らかに異質で、これまでに人類が見たことのないものだっただろう。
暗闇の中、ランタンのような青い光に照らされ、海底都市の異常な形相が浮かび上がっていた。
私は感嘆に似た感覚を覚えた。
私はいつの間にかベッドの上にいた。
時計は6時を指している。
あれは夢だったのか?
いや、確かに夢ではなかったはずだ。
証拠は一つも無いが、確信できた。
あの夢が悍ましく、また素晴らしいものだった事を私は忘れないだろう。
頭の中に、ある言葉が染み付いている。
海底都市で魚人達が言っていた言葉。
いあ いあ くとぅるふ るるいえ うがふなぐる ふたぐん。
私は忘れないだろう。




