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31:実はできるらしい

 鉱山調査から帰って翌日。

 この日はたまたま授乳と寝起きのタイミングが合ったライネとレオネ、ミカの4人で揃って朝食を取ることができた。


「ねむーい……」

「お姉ちゃん、はいミルク」

「ありがとうレイネ」


「ミカ、はいお皿」

「あ、ご主人様ありがとございます」

「ミカ、そろそろ俺の呼び方変えない? そのうち子供が勘違いしちゃわない?」

「かっ、考えておきます」


 ミカはどうもまだメイドというポジションが気が楽だと言う感じなのだろうか。

 

 ちなみに赤ん坊たちはリビングの窓際でメイドたちが抱っこして寝かせてくれている。


「やっぱり授乳って大変?」

「んんー、大変なのは眠さだけで子育て自体は楽しいわよ。愛おしさしかないって感じ?」

「そうだよねー。ねーあとでノユキも抱っこしてあげてね」

「おう、3人とも既に個性があって可愛いよな」


 他愛もない話に花を咲かせながら、パンとスープ、サラダを口へと運んでいく。



 

 今日はこれから領主館へと向かう予定になっている。

 昨日ギルドへ鉱床発見を報告したところ、すぐさま偉いさんが出てきて、今日にでも領主へと報告してほしいと言う事になったのだ。


 


「でも凄いわね、ダイヤの鉱脈を見つけるだなんて。そのスマホだっけ? それの力なの?」


 


「まぁそこは不思議パワーって事で……」

「――はっ!? ま、まさかご主人、次はミスリル……ですか?」

「ミスリル?」


 ミカはあの時俺が口走ったことをバッチリ覚えていたらしく、家族には隠す必要もないので、ライネとレオネにも説明しておくことにした。


 

 


「ということは、次の調査で行く先でミスリル鉱が?」

「十中八九そうなるかなって思う」

「えー! いーなー! ミスリル武器うらやましー」

「そうよね。短剣でもいいから欲しいわよね」


 やはり冒険者はダイヤモンドよりもミスリル武器に惹かれるらしい。向かいに座っているライネが珍しくおねだりの視線を向けてくるし、隣のレイネも尻尾でサワサワしてくる。


「加工できる伝手があるならお土産に持って帰ってくるけど」

「やった! 伝手ならここと王都に鍛治師の友達がいるから頼めると思う!」


 ミスリル武器を作るのにどれぐらいの鉱石が必要なのかに着いては『モノによる』という至極真っ当な答えが返ってきた。

 というのも、通常のナイフにミスリルでコーティングするのが1番安上がりのミスリル武器らしい。



 

 刀身も含めすべてミスリルで作った大剣や長剣だと、この屋敷が買えるぐらいの金額――必要量は馬車の荷台満タン程度でも足らないそうだ。

 そもそも、ミスリルの採掘量自体が『偶然見つかる』レベルなので、作ろうと思ってそうそう作れるものではないそうだ。



 

「それはそうと、領主様なぁ……会うの緊張するなー」


 人に会うことは問題ないのだが、どうやって見つけたのかを聞かれるのが1番面倒なのだ。


 一応ライネ曰く、結界を張ったのは俺だと言うのは知られているから、不思議パワーだって言っておけば問題ないと言われた。


 本当にそれで納得してくれりゃいいけど。




「失礼します」


 脳内で領主様対応をシミュレーションしていると、メイドさんのサリーが困り顔でリビングへと入ってきた。

 

「ご主人様、お客様です……その、どういたしましょうか?」


 予約をしていてもこんな朝早くに客はこないだろうという朝の早い時間帯。

 それもあってサリーは聞きに来てくれたのだろうが、俺には誰か尋ねてくる心当たりは無いので、とりあえず玄関へと向かうほうが早いだろうと席を立つことにした。


 



「ちょっと見てくるね」

「あ、私も私服だしご挨拶するわ」


 先に食べ終わっていたライネが着いてきてくれるそうなので、2人で玄関へと向かったのだった。


◆◆◆◆◆


「あれ、タマモ?」

「だ、旦那っ」

「あれータマモどうしたのー?」

「レイネ、久しぶりだな」


 玄関の待合用のソファーで座ってキョロキョロしていたのは昨夜ギルドで別れたばかりのタマモだった。


「昨日、ノユキについて行ってくれたんだって? ありがとうね」

「はは、なかなか楽しい経験だったぞ。色々」


 タマモがチラリと視線を俺へ向けてきたことに当然気づくライネ。

 


「えー、別にいいんだけど、ちょっと意外。カミラなら大丈夫かなって思って紹介したんだけど、タマモまで。へぇ~ふーん……」

「な、なんだよライネ……わ、私だって……その……一応女だそ」


「男なんて全員滅べばいいって言ってたのに……えっ、まさかタマモあなた……そのっ……え? まさかそこまで!?」


「~~っっ!」


 ライネに色々と核心を指摘されたのか、タマモは顔を真っ赤にして不自然にソワソワし始める。


 ポーカーフェイスが下手くそすぎるけど大丈夫だろうか、この一等冒険者は。


「まっ、それだけノユキがいい男だったってことだよね! んで、どうしたの?」


 自分の友達とイチャイチャしてきたという事実にもこのライネのあっけらかんとした態度。分かってはいたけど、ヒヤヒヤしていたのは俺だけのようだ。




 

「そ、それが旦那……これを見てくれないか?」


 そう言って立ち上がったタマモがくるりと振り返る。


「あ……あー……」


 タマモの腰から立派な尻尾が3本、ゆらゆらと揺れていた。


「あれー? 尻尾増えてない? え? 増えたの?」


 エイラの時と同じく尻尾が増えていたタマモ。これはもう、俺のせいだと言うことは確実なのだが、そのことを聞きに来たのだろうか?





「その……旦那、これ本当に9本まで増えるのだろうか? その……すでにズボンやスカートの穴が……」


 なるほど、それは死活問題だなと気付いてしまった。

 元々ライネたちのズボンも尻尾を通す穴が空いていて、結べるように紐もついている。


 ライネたちのような細い尻尾なら2本や3本に増えたところで問題はないが、タマモのような毛量が多いフワッフワの尻尾だと2本の時点で尾穴を通せないのだろう。



 

「その……増えるなら増えるで用意しなきゃならなくて……装備も対応させないとと思ってな……」


「明日4本に増えてたら増えるかも……増えなくても俺が原因ならまた一緒に寝たら増えるかも……?」


「ねーノユキ、これ増えたらどうなるの?」

「魔力が増えるし、余った魔力を貯めておけるらしいよ」


 ライネにもタマモに説明したように教えたのだがやはりピンとこないようだ。

 

「それなんだが旦那、魔力を貯めるということと、貯めた魔力を使うやり方、なんとなく分かったんだ」


 タマモは俺の拙い説明で色々試して、尾の魔力を解放するやり方をなんとなく理解したらしいが、気持ちがおかしな方向に昂りすぎて途中でやめたらしい。



 

「昂るってレイネみたいに?」

「レイネというより、もっとこう……狂化したカミラみたいな感じだと思う」



 それはきっとナツミにチラリと聞いた神獣化と言うやつじゃないだろうか。

 ナツミもエイラに聞いただけだから詳しくは知らないと言っていたが、どうも巨大な狐の姿になるとかならないとか。


 

「あー、タマモ、その尻尾に貯めた魔力を解放するの、ちょっとやめた方がいいかも」


「やっ、やっぱりそう思うか?」


「あぁ」


 

 こんな時エイラに話を聞ければなと思うが、仕方ない。


 そう思っていると突然スマホのプッシュ通知が鳴り、何かのバナーが待ち受けにポップアップしていた。


「――っ!?」


 ――『自由周遊クーポン』で王暦1227年11月15日に移動しますか?


 スマホの待ち受けにはそんな通知が表示されていたのだった。


 

 

次回明日の20時投稿予定です!


もし気に入っていただけた方は「ブクマ」や下の評価【★★★★★】などよろしくお願いします!

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