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30:尻尾は増えるもの


「しっ……ぽが……なんだこれ……魔力がとてつもなく増えて……」


 翌朝。

 ついこの間、聞いたことのあるようなセリフが耳に入り目が覚めた。

 

 とてつもなく重い瞼を無理やり開き、テントの隅を見るとタマモが2本に増えた尻尾を手にし、ありえないものを見るように見比べていた。

 やっぱり想像していた通り彼女がエイラの遠いご先祖様になるのだろう。



 (ってことは、エイラって俺の子孫ってことじゃん……)


 

 「えぇ……タマモ姐さん、そりゃ……猫又?」

 「いや、私は狐であって猫じゃ……」


 タマモの声を聞きつけたのか、隣のテントで寝ていたらしいマリエッタが自分の猫尻尾を手に取りながら、タマモの尻尾を見ていた。



「マリエッタさんは、猫又なんだっけ?」

「いえ、自分はただの獣人です――猫又族はエリートというか、魔力を大量に保持するようになった存在と言うか……そんな感じだったと聞いています」


 猫又というのが居るのなら、それも純血種という特定の一族なのかと思ったが、マリエッタさんの言い方だと「特定のフラグで猫又に変化する」というようにも聞こえる。

 詳しい話を聞いてみたいが、本人としてはそういう話は子供の頃の御伽話で聞いただけなのであまりおぼえていないらしい。




「あー、そうだ、タマモの件だけど、それ猫又とかじゃなくて九尾になるんだよ」

「きゅ……九尾? 九本になるってことなの!?」



「おや? タマモ姐さん、おはようございます。どうされました?」

「姐さん、今朝は尻尾のボリュームすごいっすねぇ―!」


 ちょうど早朝の見張りと見回りから戻ってきたのか、カミラとエコーが元気よくテントへと戻ってきた。



「カミラ、エコー……これ、何か病気なのか? だっ、旦那! 何か知ってるなら教えてくれないか?」


 普段からキリッとした表情しか見せない姉御肌の冒険者も流石に慌ててアワアワしている。


「えっと、何故知っているのかの理由は答えられないんだけど知ってる範囲で説明するよ」



 このままでは今日の調査が進まないかも知らないの で、俺はエイラに聞いたことや、体験したことをかい摘んで説明することにした。



 


「……つまり、これは私に莫大な魔力が溜まっているということ……なのか? たしかに魔力量が増えた感じはするが……この尻尾には更に溜まっていると?」


「ええっと、俺も聞いただけの話なんだが、ある程度貯まると尻尾に貯蔵されるみたい」

「つまり魔力の貯蔵庫みたいなものなのか?」

「そんな感じらしいよ。具体的にどうすればどうなるかってのは分からないんだけどな」


 確かエイラは魔力を解放して云々という話をしていた気もするが、微妙に覚えていない。

 こんなことならもっと聞いておけばよかった。


 

 

「ふむ……ではとりあえず旦那の言うことを信じようか。少しバランスが……よっと……取りづらいな。少し体を動かしてくる」



 

 タマモはそういうと、尻尾をゆらゆらさせながら外へ出ていった。


(あー……明日になったら3本になってるかもって伝えるの忘れてた)


 

◆◆◆◆◆


 マップでプロットされていた場所――そこは山脈というより、黄土色の岩が突き刺さっているようにも見える巨大な山肌。


 途中で馬車から降り、木々が生い茂る山道を通り抜けた先に、雲の高さを超えるほどの高い壁がそそり立っていた。



「この辺りは山が半分崩れてできた壁肌だな。その昔、ドラゴンのブレスで抉れたとかいう噂もあるんだが」


「上が見えないな」


「少なくともここから登ることはできないだろうな」


 地図アプリを確認するとまさに今俺たちがいる付近に赤色の点がプロットされていた。



「えっと、この辺りなんだけど掘れるかな」

「うん……お任せください」


 魔技師であるマリエッタさんはリュックから細長い棒のようなものを何本も取り出した。



「これは魔力が詰まっていて、特定の方向に向けて衝撃を加えることができる……ここに埋めて……カミラさん、あの辺り少し掘ったりできます?」


「あいよ――この辺だな?」


 マリエッタさんが壁に何本も棒を埋めていく。

 まるでダイナマイトのようだなと思いながら、皆の作業を見つめる。


「合計12本……亀裂を考えるとこの辺りにも入れたほうが崩れやすいよ」


 ハーフリングのベルルさんが岩肌を見ながら、衝撃を与えるべき箇所を支持していく。


「はい、できましたー。じゃあ魔力を通すのでみなさん、あっちの木のほうへ隠れてください。崩れた岩が飛んできますから」


 俺たちはマリエッタの指示で少し離れた大木に身を隠す。


「はい、耳を塞いでー口を開けておいてください。爆破!」



 直後凄まじい爆発音と共に、小さく崩れた石の雨が木々の枝葉を通り抜け落ちてくる。


「あいたっ! 旦那、大丈夫か? ほれ」


 カミラが俺の頭を抱き寄せ、マントを被せてくれる。


 「あぁ、ありがとう……しかしすごい爆発だなー。マリエッタさんすごいな」

「えっ、えへへ、ありがとうございます。こんな道具しか作れないんですけどね……あ、そろそろ土煙が晴れましたよ」


 普段の狩りだと罠ぐらいにしか使えないかもしれないが、鉱山を開拓するにはマリエッタさんのような魔技師は引っ張りだこだろうなと考える。


「旦那、見てください」

 

 そんなことを考えていると、抉れて穴が空いた岩肌の様子を確認していたベルルさんに呼ばれた。



「なんで既に坑道が……いやこれは自然洞窟か?」


 表面の岩肌を爆破したらその向こうに洞窟があった。

 そんな感じの穴がすっぽりと開いていたのだった。



「私は奥を確認してくる。カミラ着いてこい。エコーは見張りを頼む」


「はいよ!」

「承知しました」


 タマモとカミラが警戒しながら洞窟の奥へと向かうのを確認し、エコーが辺りの警戒を始める。


「大きな音がしましたし、魔獣が寄ってこないとも限らないので」

「なるほど……それでベルルさん、この辺りはまだ鉱石とかはないですか?」


 そう――みんなには鉱石の調査と言うことにしていて、何が掘れるとかは伝えていないのだ。


「……ベルルさん?」


 反応がないのであたりを見回すと、洞窟から少し入った先で壁に向かって4つん這いになっているベルルさんの姿があった。


 (小さいから気づきづらい)



 

「旦那様……あの、どうしてここの調査を? 何があるかご存知だったのですか? その……普通は鉱石調査ってのはチームを組んであちこち穴を開けて、調べてを繰り返すんです。何度も何度も」


「へ、へぇ……」


「ベルルどうしたのさ? もしかして初手で面白い鉱石でも見つかったの?」


「面白い? マリエッタ、これを見て笑ってられるのも今のうちにだよ。これ、ほら」


 爆破で砕け、奥へと飛び散った鉱石の一部だろうか。真っ黒な岩をマリエッタに差し出すベルルさん。


「黒い石」

「表面はね……だけど、この断面」



「白いね」

「ダイアモンドの原石だ」

「へぇ〜……」


 渡された岩とベルルの顔を見比べ、何を言われたのかを飲み込んでいる様子のマリエッタさん。



 

「って、ダイアモンド――っ!? えっ、帝国産?」

 

 こんな浅い地層からダイヤモンドが出るのかと言う疑問もあるが、初手で目的のものが見つかってしまった。


 


「マリエッタそんな大きな声を出してどうした?」

「エ、エコーさん、だだだだ……ダイヤ!」

「はぁ?」


 マリエッタの声で周囲警戒から戻ってきたエコーに興奮状態で説明をするマリエッタさん。

 ベルルさんは既に洞窟の奥へと入って行ってしまった。


「ダイアモンド? これが?」


 エコーさんは加工済みのキラキラ輝くものしか知らないらしく、原石というものについてマリエッタさんが説明を始めた。


「へぇ……つまり旦那はダイアモンドが取れる場所を掘り当てたってことか。すげーな」


「すげーなじゃないわよ! いま帝国でしか取れない宝石なのよ! それが王国で取れるなんて……えぇ」


 事の重大さを理解しきれていない面々に、この辺りは将来的に坑夫町もできるレベルになるとベルルが力説するのだった。


◆◆◆◆◆


 あれから、洞窟の奥を調査していたカミラが戻り、行き止まりの壁を何度か爆破を繰り返し、徐々に地下深くへと掘り進みながら調査を進めた。


 その結果、ムラはあるがダイアモンド原石が取れる鉱山になることはほぼ確定したらしい。


 どれぐらい取れるかはこの先の調査次第だが、少なくとも1日で数十キロの原石を手に入れることができた。


 これを馬車に積み、ギルドに持ち帰ると今回のミッションは終了だ。


 (……巨大な魔獣とかとのバトルがなくて良かった)



 正直、メンバーを考えるとそんなフラグかと思っていたのだが、ほとんど戦闘もなく終わってしまった。


「じゃあ、今回の調査は終了で、帰路もよろしくお願いします」


「おう、任せとけー」


 全員で手分けして馬車にサンプルとして確保した原石を積み込んでいく。

 ベルルとマリエッタが興味津々だったので、調査という名目で原石をいくつか持たせておいた。


 


「良いんですか……?」

「別に誰のものでもない岩山から出てきた()()()()()()だしな」


「――っ、ありがとございます!」


 目をキラキラさせながら渡した原石を見つめ、どうやって研磨しようか相談を始めるベルルとマリエッタ。


 

「旦那ぁ〜あたしらには〜?」

「君たちは、次の依頼で手に入るものをプレゼントしよう」

「次?」

「あぁ、多分次の調査で取れるものの方が、タマモとカミラとエコーは喜ぶと思うんだよなー」


 明日街へと戻り、みんなの予定が問題なかったら次の依頼として『ミスリル鉱山(予定地)』のポイントの調査を頼む予定なのだ。


 今回のポイントで問題なくダイヤモンド原石が出たと言うことは次も確実にミスリルが取れるだろう。


「まぁ、次は何が出るかは秘密だけど、少なくとも空振りはないと思う」


 俺は帰り道でみんなの予定を確認しつつ次の調査日を決めることにしたのだが、全員予定があっても開けてくれるそうなので、戻ってライネたちに相談することにしたのだった。

次回明日の20時投稿予定です!


もし気に入っていただけた方は「ブクマ」や下の評価【★★★★★】などよろしくお願いします!

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