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29:クエスト発注

もうちょっとだけ蛇足話が続きます……!

 アプリに表示された地図を頼りに移動すること一日。

 事前の予定では行きで1日、調査に2日、帰りに1日と滞在時間の10%以上を消費してしまう行程だったのだが、仕方がない。

 



 昨日ギルドに依頼リストを確定し、正式に声をかけてもらうように頼んだ当日に全員から返事があった。

 というより、全員ギルド内で待機してくれていた。

 その場で簡単に用意などを取り決め、翌日の朝には出発することになったのだった。






 

 ベルグの北側の門から出ると目の前に広大な山々が広がっているのが見える。

 まだ春先ということで山頂付近はまだ真っ白な雪で覆われていた。


 平地のうちは手配した馬車――二頭の馬に幌付きの荷台を引かせ、俺はそこに乗らせてもらう。


 同じく体力があまりないというマリエッタさんも乗り込んだ。

 あとは各自の着替えと食糧を載せている。

 

 残りのメンバーは馬車を守るように、前後に分かれて徒歩と言うか早歩き程度の速度で進んでいく。

 さすが獣人というか、人間には無理な芸当だ。


 途中何度か心配になり馬車へ乗らないか尋ねたのだが、この程度は問題ないからゆっくりしておいてくれと言われてしまった。


 

 

 ちなみにこれぐらいの実力者を揃えたパーティーメンバーの場合、出先で魔獣などを狩った時の素材を持ち帰るためにこれぐらいの馬車は欲しいらしい。

 ランクの若い冒険者だと身を隠して回り道するような魔獣も、このメンバーだと余裕で狩れるそうだ。


 

 だがあくまでも今日の依頼は調査ということになっている。


 なるべく魔獣の出なさそうなルートを進み、なる早で調査を終わらせ街に帰る。

 そんなプランになっている。



 

 

 途中で休憩を何度か挟みながら、舗装のされていない山道を馬車で進んでいく。

 馬車の車輪はある程度弾力のある木製ということで、非常に揺れるため途中からは馬車を降りて歩くことになった。


 


 初日の行程は滞りなく進み、日が傾き始めたあたりで野営の準備に取り掛かり、すぐに夕食となった。

 ちなみに今回食事はすべて俺持ちだ。

 

 せっかくなので精をつけてもらおうと焚き火の上に鉄板を置いて焼き肉をすることにした。


 

 ◆◆◆◆◆

 

「いやぁー旦那に雇われて正解だったぜ!」

「ほんとうですね……調査系の依頼はあまり儲からないんですが、これはこれでアリですね」

「あー、それ私の肉……」


 額に一本のツノを生やした第二等冒険者のカミラさんは、俺の持ってきた棒付きフランクフルトが相当気に入ったらしく日本酒と交互に口へと運んでいる。


 

 もぐもぐと一心不乱に肉を食べ続けているのは受付さんに紹介してもらった、第二等冒険者のエコーさん。

 カミラさんとも友達らしく戦いでの連携はバッチリだそうだ。

 シルバーの毛に覆われた犬のような尖った耳にふっさふさの尻尾で、見た目だけだと犬か狼か判別し辛いが多分そういう感じだろう。



 エコーさんに肉を取られまくってるのは猫耳と尻尾を生やした魔技師のマリエッタさん。

 少しツリ目で気が強そうな風防なのに意外と気が弱い。

 この人がレイネに紹介された子なのだが、本領発揮は現地についてからということだ。


 


 もう一人、採取専門の冒険者であるハーフリング(小妖精族)のベルルさんは初手で日本酒にハマり、ほとんど食事を取らずにずっとちびちびやっている。



 


 

 「旦那、とりあえず周囲は大丈夫そうだ。魔獣の足跡なんかもない」

 「あぁ、ありがとうタマモさん」


 最後の一人、背後から音もなく現れたのはタマモさんという第一等冒険者で、頭からピンと先に尖ったやたらと長い狐耳が生えている。

 尻尾も誰かとそっくり金色の毛に覆われており、尾先が雪のように白い。


 顔合わせのときに『玉藻族』なのかと聞いたのだが、ただの狐耳族だと教えられた。




 

 (やっぱりこの人が、エイラたち玉藻族の始祖となる人なんだろうな……)


 身長も違うし顔も似ていないのだが、どことなくエイラの面影があるのだ。



 

 

「とりあえずタマモさんも食事にして。まだお肉はいっぱいあるし、なんなら皆んなが狩ってくれた兎肉もあるよ」


「いーや旦那、そこはこの旦那に用意してもらった肉一択だろ。タマモ、これ食ってみ、やべぇから」



 

 ちなみに焼肉と言っているが俺がマジックバックから出したのは、業務スーパーで買ってきた牛肉の塊だ。

 何に使うか想定していなかったので、バラ肉やもも肉などの塊をいくつか購入してあったのだ。

 

 その塊をナイフで分厚い目に切り分けて、鉄板で次々焼いている。



 

「そうだな、私もぜひご相伴に預かろう」

「お、タマモ姐さん、この酒もうめーらしいですよ。カミラとベルルがずっと飲んでますぜ」



 

「そうだな、野営中だし一口だけ頂こうかな。酔って依頼主に何かあったら、二姫にどんな目に合わせられるか判らんからな」


「――ひうっ……そ、そーだった。忘れてたけど旦那はライネ姐さんとレイネ姐さん同時に孕ませた猛者だった」

 


 

 エコーさんがビクッと俺に視線を向けられたのだが、どいう意図の視線なのかイマイチわかりかねる。

 え、これもしかして孕ませ魔とか、そういう噂が広がっているのだろうか。

 このあと40人ほど仲良くならなければならないのだが、変な噂が広がるなら他の街でヤルべきだろうか……。


 


 

「そうだぞ。あんり調子に乗ってハメを外すとまずいぞ――……ほう、この酒はまた美味いな」


 どうやら日本酒がお気に召した様子のタマモさんが、一升瓶からカップに注がれた日本酒をグッと飲む。

 すでに三杯目である。



 

「いやタマモ姐、それは大丈夫なんじゃないかねぇ?」

「どういうことだ? カミラ」


「だって、少なくとも私とマリエッタ、ベルルはライネ姐とレイネ姐、それからミカさんが旦那に紹介したってこことですよ」


「あ、そーだったね。これに追加してあと数人連れてけって言われて声がかかったのか私とタマモ姐さんだろ?」



「ふむ……確かにそういうのを嫌がるなら男衆を紹介するはずだな……なるほど?」


 ほんのり頬が桃色になっているタマモさんがチラリと視線を向け、それに呼応するかのようにカミラさん、エコーさんも視線を向けてくる。





 

「獲物の気分だなこれは」




 

 ちなみにハーフリングのベルルさんは、胡座で座っている俺の足の中にすっぽり収まって酒を飲んでいた。


「あ、私はまだお酒頂いていますし、この後、マリエッタと2人で見張りなんで皆様は気にせず」


 ベルルさんが俺を見上げてくるが、その顔は酔った雰囲気が全くしていない。

 そしてマリエッタさんは、エコーさんが食べる手を止めた瞬間、ここぞとばかりに肉を食べ始めたのだった。


 


 

 

「と、とりあえず元気なうちにテントを()()用意するよ。男用と女用ね」

「ふぅ~ん……?」

「あたしはいいぜ」

 

 幸せそうな表情で何度も肉へと手を伸ばすタマモさんを見ながら、カミラさんとエコーさんの呟きは聞かなかったことにした俺はマジックバックからテントを取り出し寝床の用意に取り掛かるのだった。



 

次回明日の20時投稿予定です!


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