16:レイネベルグ連合商会
――王暦922年、6月3日
クーポンの滞在期間が残り24時間となっていた。
『異世界滞在スタンプカード』にはスタンプが5つ追加され、合計8個溜まっていた。
どういうことかというと、この街の領主様が頑張った結果だった。
もともとあった3つのスタンプ。
それにユキネさんと母であり領主のキリネさん。先代領主のアカネさんで3つ。
「やっぱりあの三人、姉妹にしか見えないんだよなぁ……」
どうも彼女たちはある一定までは若いままで、寿命の数年前に一気に老けて亡くなるらしい。
寿命も平均で150歳ぐらいだそうで100歳ぐらいまでは普通に子供を作るらしい。
道理で400年も経過しているのに、曾孫がまだ生きているわけだ。
なお、残り2つは、キリネさんに紹介を受けた2人の女性だった。
2人は双子で頭の上から狐耳、腰からふさふさの尻尾が生えていた。
聞くと先々代のときからメイドとしてウミノ家につかえてくれている一族と聞いた。
そのふたりとも無事仲良くなり、無事スタンプが貯まり無事に一枚増やすことができた。
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『異世界旅行クーポン(96時間/残り00:23:42:542』
『異世界旅行クーポン(120時間)』
『異世界旅行クーポン(240時間)』
『異世界旅行クーポン(720時間)』
『異世界滞在スタンプカード』
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「おはようございます」
「よく眠れたかい? 朝食はどうする?」
「おにーさんおはようございます!」
すっかり慣れた宿屋の部屋で目を覚ました俺は1階へ降りて女将さんとミホちゃんに挨拶をする。
「じゃぁ朝ごはんお願いしてもいいですか。あと今日はよろしくお願いします」
「あいよ、任せときな」
今日は女将さんの本家――つまり『レイネベルグ連合商会』の本店であるリンデン家を紹介してもらえる事になっていた。
すでに領主のキリネさんから連絡は行っており、いつ訪ねても良いと連絡は貰っているのだが、場所もわからないので引き続きミホちゃんに案内をお願いしていたのだ。
そこに、久々に本家へ用があるということで女将さんもついてくるとのことで3人そろってお出かけなのである。
「じゃあ行こうかね」
「はい、案内よろしくお願いします」
ミホちゃんが先頭で俺と女将さんが後ろをついていく。宿の方は、お昼にお手伝いに来てくれている人が対応してくれるそうだ。
◆◆◆◆◆
「そんなわけで、ミホはミカ様のお名前に近い響きがいいと思って付けたわけさ」
俺は道すがら、女将さんからリンデン商会が今の形になるまでの話を聞いていたのだが、いつの間にかミホちゃんの話になっていた。
ミカが俺たちの家で住み込みで働き始め、リンデン商会は弟さんが継いだらしい。
だがその後、何らかのタイミングで弟さんが亡くなり、後継者としてミカが指名された。
そしてミカが引退するタイミングでレイネに跡を任せた……らしい。
その後はずっとミカの子供とレイネの子供が一緒になって商会を大きくしているとのことだった。
「じゃぁライネの子孫が領主、レイネとミカの子孫がリンデン商会を継いだ感じなんですね」
「そうそう」
「でもすごーい、おにーさんが私のご先祖様だなんて」
話の流れからミホちゃんにも説明したほうがいいだろうと、素性を含め女将さんに話をした。
ミホちゃんは俺の素性に目を輝かして喜び、自分の名前の話を聞かせてくれたのだった。
◆◆◆◆◆
「ようこそ~レイネベルグ家へ。初めましてぇ~、ハツネ・ウミノと申します」
レイネベルグ連合商会の本店にでもいくのかと思いきや、到着したのは商会長の屋敷だった。
そしてその大きな屋敷の前で出迎えてくれたのは、レイネに瓜二つの女性だった。
「…………あ、は、初めまして」
「あの~〜……なにか粗相してしまいましたでしょうか……」
「いえ……知り合いに……じゃくてあまりにもレイネにそっくりだったもんで」
「あらぁ、それは本当でしょうか? でしたらとても光栄でございます……なにしろレイネ様の御姿はあまりにも伝わっておらず……」
玄関で立ち話も何だというところで屋敷の応接室へと案内されながら、そんな話を聞いた。
どうやらレイネはあまり表舞台には立たず、主に地方を飛び回り貴重な素材を集めまわっていたらしい。そしてミカから代表を継いでからも、表舞台はミカや自分の子供たちに任せ、裏方仕事に徹していたとのことだ。
「それでも晩年は旦那様やお姉様ととても幸せに過ごされていたと伝え聴いておりますー」
そう嬉しそうに話してくれるハツネさんは尻尾の柄も、ゆらゆらとした振り方もレイネに本当にそっくりだった。
ちなみに女将さんは誰かと打ち合わせがあるらしく、別棟にあるという会議室へミホちゃんを連れて向かったので、今ここには俺とハツネさんの2人だった。
ハツネ・ウミノさん。レイネの子孫であり、俺の昆孫……つまり曾孫の曾孫だそうだ。
世代としてはユキネの一つ下である。
「それで……あのね……あ、いえ、あのですね」
「ふふっ、タメ口でいいよ。いつも通り話して」
「やたっ、えへへ……ノユキ様ぁ~。よこ、横に座っても良いー?」
「変わりすぎだろ……ハツネさんってまだ若いよね?」
「んー? 19だよー?」
19歳で商会の代表を務めているということはちゃんと優秀なのだろう。
そして19際といえば、俺が知っているレイネと同い年だった。
俺が許可したのが嬉しかったのか、ハツネさんは俺の隣にぴょこんと座ってきて、尻尾を腰に巻き付けてきた。
「そういうところもレイネそっくりだ」
「ほんと? でもお母様には甘え癖はやめなさいって言われるんだけど……なんかノユキ様はお父様みたいで……その……ん」
事前に女将さんから聞いた話だと、ハツネさんの母は他の街で隠居しているらしく、父親はハツネさんが生まれたころに亡くなったらしい。
俺は無言でハツネさんの頭を撫でてやると、そのままこてんと肩に頭を預けてきた。
耳がくすぐったい。
どうやら甘えたいモードのようなので、そのまましばらく甘えさせてやることにした。
◆◆◆◆◆
「じゃあハツネは冒険者として素材集めに徹していると?」
「そうー。偉い人とのお話とかは全部親戚のモモネちゃんがやってくれてるんだぁ~」
今は隣の国まで交渉事で出かけていていないらしいが、どうやらミカの子孫らしい。
今日のこの日にライネブルグから離れなければならないことを大層悔しがっていたそうだ。
「えへへ、だからね、私がその分ちゃんとノユキ様のお世話をするんだよー」
そう言いながら俺の腕を取って胸元へと押し付けてくる。
というか、そのまま俺に身体の匂いを擦り付けるようにゴロゴロとしてくる。
「……ハツネは旦那さんとか好きな人とかは?」
「居たことなーい。今はノユキ様が好き。すっっっごくノユキ様の赤ちゃんが産みたいって思ってる」
なるほどこういうところまでレイネにそっくりで、本当にレイネと話している気になる。
俺は苦笑しながらも、再び膝の上に頭を乗せてしまいゴロゴロしているハツネさんの髪を撫でるのだった。
次回明日の20時投稿予定です!
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