形而上学的転生
俺は、勇者。奴は、魔王。
俺は奴と対峙していた。
なぜって?それは、そういう風になっているからだ。
俺の剣が、奴の心臓をつらぬいた。
奴の身体が、倒れる。
勇者が、魔王を滅ぼしたのだ。
なぜって?それは、そういう風になっているからだ。
その刹那、俺は悟った―「奴は俺、俺は奴だった」のだと。
俺は奴に転生し、俺に倒される。奴は俺に転生し、俺を倒す。
勇者あっての魔王、魔王あっての勇者。
これを「色即是空、空即是色」という。
転生とは、つまるところ、やむことのない循環。
それも結局は、零なのだ。