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騒ぎの主

"ひどい…"



蔵書室に入り、辺りを伺う3人。

先ほど投げ出された司書以外に、ここを利用していたであろう人が4人。

いずれも、気を失っていた。

流血はないものの、痛みからくるのだろう、苦痛の表情がにじんでいた。


それを一人一人、治癒魔法をかけて、辛さを取り除いていくリリーナ。



「すぐ楽になりますからね…!」



そう言って、多めの出力で瞬時に治癒していくリリーナ。



「とばさないほうがいいよ?リリーナ。

まだ何が起こるかわからないから、少し温存しながら…ね?」



「あ、はい…でも…」


「戦場では、先を想定しながら動くのが鉄則だ。

敵が現れた時に、魔力が枯渇していたなど、あってはならない事だ。」



その言葉に、リリーナはドキッとさせられた。



"戦場…そうだ、今は演習じゃない…

自分を理解して行動しなければ、足手まといになってしまう…!"



「申し訳ありません。気をつけます…!」



リリーナはそう言って、改めて自分に気合いを入れ直した。

目に力が入った様子を見てアシュレイとノーも小さくうなずいた。




しかし気配が無い…。

先程まで大暴れし、このような惨状を作った張本人は

一体どこへ行ったのだろうか。



先頭左をノー、右をアシュレイ、その後ろにリリーナという陣形で

慎重に進んでいく。



"おっ…と…"



本棚から落ちて散乱する本たちが、地味に足元を掬う。

もし戦闘になった場合を想定して、リリーナはその後から

本をできるだけ端に寄せて進んでいた。


そうして、蔵書室の中央あたりに着いたところで、

ノーとアシュレイは立ち止まって一度周囲をぐるりと見回す。



"おかしい…"



"急に痕跡もなく消えるなんて…おかしくない?"



"ああ。外に逃げた様子もない。ここにいるはずなのに…"



そう話し合う2人を見ながら、リリーナは足元の本を手に取り、

右側の山に置こうとしていた。



「重た…」



いくら分厚くて装丁が豪華とはいえ、想像していた重みより遥かに

重量があったため、思わず口に出てしまった。


それに反応して、ノーとアシュレイの耳がピクピクと動きリリーナを見た。



「あ…ごめんなさい…」



敵の様子を探る今では声を出すなんてあるまじき事。

申し訳ない気持ちを目一杯に、小声で謝った。

すると、アシュレイの表情がみるみる怖くなっていった。

それ程にまで怒らせたか、とリリーナが思うかどうかのところで

彼が声を張り上げた。



"手を離せ、リリ!"



「え…?」



それに反応できるでもなく、その瞬間、リリーナが両手で抱えていた本から

薄紫の粘質状の液体がボトボトと垂れて足元に溜まっていった。



「ひゃ…!」



リリーナは慌てて本を離し、本棚を背に後ずさった。

その本はべしゃりと粘質の海に落ちると、程なくして今度はグラグラと揺れ始めた。



「お兄様…」



"ああ、それだな…!"



そう言い、全員身構える。

揺れ続けた本はやがて静かになり、一拍置いた後、

バサっと開いた。


そしてそこから、大量の粘液が飛び出してきてアシュレイとノーに向かって

触手のようなものが何本も伸びてきた。

それをすかさず、的確に魔法を当て、退ける。



"粘質の弱点は何だった…?"



"火…だね。"



"クソッ…よりにもよって、こんな燃えやすいところで出るとは…!"



"火事にならないように、慎重に行かないとね…!"



そう言い、アシュレイが小さな火球を触手にぶつけてみると、

触手は蒸発して消え去った。



「なるほど…属性…」



彼らを見ていたリリーナは、それを真似て火球を作ろうとしたが

細かな魔力の調整が必要なため、今の自分では本棚を燃やしかねないと思い、

違う方法を探った。


ひとまず、物理攻撃耐性と魔法耐性の補助魔法を全員にかけて

彼らの戦いを見守った。



"そういえば…先生に連絡を…!"



あれだけバタバタと音を立てていたので気づかれるだろうと思いきや、

蔵書室は校舎の端にあるため、きっと誰も気づいてない。


そう思ったリリーナは、手のひらを開き、紙のようなものを出現させた。

指をペンがわりにしてそれに書き入れると、今度は両手でそれを

上から包み込むようになぞる。

するとたちまち鳥の姿となり、次にリリーナが入り口に指をスッと向けると

指示通りに飛び去っていった。



「よし…これで連絡はできた…」



そう思った矢先、リリーナは足元に違和感を感じた。



「…?」



"まずい…リリ!!"



火球で触手に応戦していたアシュレイが叫ぶと同時に、

先ほど本から粘液がこぼれる際に、リリーナに付着していたものから

触手が飛び出し、リリーナを締め上げた。

それは首や身体に巻きつき、更には足元からの太い触手が彼女を持ち上げ、

本棚よりも高い位置に掲げられる状態となった。



「あぁ…ぐっ……!!」



"リリ!!"



"待ってて…!"



そう言い、ノーが小さい火球をリリーナの足に絡みつく触手にぶつける。



「あっ…ぅ…!!」



触手は消えたものの、リリーナの肌も少し赤くなってしまった。



"ごめん、リリーナ!"



"じゃあこっちはどうだよ…!"



そう言って、今度はアシュレイが、火球を剣のような形にして手に纏わせると

リリーナの腕に絡む触手に飛びかかる。

スパッと触手が切れたものの、リリーナを傷つけまいと遠慮したため、

切り落とすことができず、皮一枚で繋がる形になってしまった。

そうなると触手はたちまち再生し、元通りとなってしまった。



"ああっ!くそっダメだ…!

どうすればいいんだ…!"



「うっ…」



苦しむリリーナを前に、術を考えあぐねていると、

ノーが思いついた様子で口を開いた。



"あるよ…方法…

リリーナに頑張ってもらわないといけないけど…ある!"

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