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動き出した人たち

週明け。

いつものように三人で朝食をとった後、ノーとアシュレイに見送られ、

リリーナは寮を出て通学路を進む。

これまたいつものようにマリエナ、ユーストス、ヴェクトルが先を行くのを見ながら…と

思っていたのだが、ヴェクトルがおらず、2人で登校する姿が目に入った。



「あれ…?」



そう思った瞬間、リリーナの頭によぎったのは先日の誤解事件。



”もしかして…!あの時汗をたくさんかいたヴェクトル様と、寒い中で長話をしていたから…

風邪でもひかれたのでは…!!”



自分のせいだ…と確信して、謝らなければ…ああ、今日の授業のメモを渡さなければ…

などと必死に考えていたところに



「おはよう。リリーナ嬢。」



うしろから聞き覚えのある声…。

その声に振り返ってみると、予想通りヴェクトルがいたのだった。



「え!!どうし…て??」



「ん?どうしてって…?私が来たら何かいけなかったかい?」



「いえ!そういうわけではなく…ええっと…??」



先を行くユーストス、マリエナの2人と、ヴェクトルを交互に見て、

リリーナは困惑した。



「はは…今日はどうしてあの2人と一緒じゃないかって?

ただの忘れ物だよ。」



そう言って、手に持っている道具袋を見せた。

それを見てリリーナは安堵の表情を浮かべた。



「あ…そうなんですね。…よかった。

私はてっきり体調を崩されたのかと…」



「ああ!そっちか…。うん、問題ない。これでも体は丈夫な方だよ。

リリーナ嬢の方は大丈夫なのかい?」



「ええ、はい。私は甘いものさえ食べれば、いつでも元気ですから。」



「くくっ…!君は…そうだね。

じゃあついでに一緒に行こうか。」



「え…でも…」



リリーナは、自分と一緒に行くことで、マリエナにヴェクトルが魅了にかかっていないことを

知られるのではないかと、心配になった。

が、それも察していたようで、ヴェクトルは安心させるように言った。



「大丈夫、そのための忘れ物口実だから。」



「…なるほど!それなら自然ですね…って…ん?」



”口実…え、口実?忘れ物ってわざと…?”



「え、ちょ…ヴェクトル様?」



「行くよ?遅刻は勘弁だからね?」



その話題には触れる間も無く、先に行ってしまったヴェクトルを小走りで追いかけるリリーナ。

その後は、先に行く2人には追いつかないように、ゆっくりと並んで足を進めた。




その間、週末にカフェ巡りをしたこと…もちろんメリンダやアシュレイの事は伏せながら…

などを話し、ヴェクトルの方は、植物園に行っていたと聞いて、意外な趣味…!と

内心驚いたりしながら、話が盛り上がった。


そして、例のピンクのモヤに包まれた教室に到着する前には、彼はスイッチが入ったように、

自然にリリーナからスッと離れていき、魅了がかかったふりをし始める。



「ユーストス様、マリエナ嬢。全然追いつけなかったよ…!」



「ヴェクトル様が忘れ物なんてとっても珍しいことですわね…

でも始業に間に合ってよかったですわ!」



マリエナが彼の腕にそっと触れる。

ヴェクトルが彼女に笑顔を向ける。


そんな様子を見ながら、リリーナはなんとも言えない感覚になった。



”…?なんだろう…変な感じ…。”



教室に入り、自席に座って深呼吸をすれど

まとわりつくように払拭できない感覚がとても気持ち悪かった。



「やだぁ…!」



「まいったよ…」



もう視界の外にいるはずなのにこんなにもクリアに声を拾ってしまう。

それが耐えられなくなり、思わず下を向き目を閉じ、手に力が入るリリーナ。



フシュッ… …!!



その瞬間、何かが吹き飛んだ感じがした。


リリーナは驚いて、顔を上げて辺りを確認してみた。

それは一目瞭然。ピンクのモヤが綺麗さっぱり消えていたのだ。


それと同時にマリエナの周囲にわらわらといた人が、それとなく離れていく。

ユーストスは、静止したまま瞬きを数回した後、



「ああ…すまない…」



とマリエナに触れていた手を、そっと離して、会話を続けていた。


ヴェクトルはというと、少し青ざめた顔でリリーナを見ていた。

魅了にかからない彼には、リリーナのようにピンクのモヤは見えないものの、

リリーナから何か放たれ、それが魅了を吹き飛ばしたことは分かっていた。



”どうした…!?”



とでも言わんばかりに目で訴えている。それに対して



”だって…なんだか気持ち悪い感覚になってしまって…!”



とは伝えられる訳もなく、リリーナは申し訳ない顔で頭をコクリと下げた。





そして今度は先ほどから感じていたチクチクというか、ぐっさりと刺さりそうなほどの

強い目線に目を向ける時が来た。



ギロリ



マリエナだ。

魅了を吹き飛ばした直後からこの恐ろしい目がリリーナに向いている。

もちろん、彼女以外には見られないように。



”怖っ…!”



その形相が恐ろしくて、思わず顔を伏せたリリーナは改めて自分のしたことを思い出す。



”またやってしまった…前も魅了を吹き飛ばしてしまったのに…

わざとじゃないんだけど…”



と、考えているうちに、視界にピンクのモヤが流れてくるのが見えた。

リリーナは顔を上げると、あっという間に教室はにモヤが充満し、元通りとなった。


リリーナは恐る恐るマリエナの方に目を向けると、

もう先程のように、ユーストスたちと会話をしていた。

ヴェクトルもすでに目線はこちらにはなく、同様に盛り上がっていた。


「…」



ここでよせばいいのに、リリーナは試してみたいことを思いついてしまった。



”今まで偶然にこのモヤを消してしまったけれど、もしかしたら…

消そううと思ったら消せるんじゃないかしら…”



そうして、リリーナは頭の中に、充満した煙を一気に吹き飛ばすような風のイメージを浮かべ、

両手を合わせて軽く握った。



フシュッ…!



するとピンクのモヤはリリーナを中心として、そこから風が吹くように

飛ばされ消えて行ったのだ。



”私の意思で…できた!”



魔力が戻ってから自らの意思で強い魔法を使ったのは初めて。

ただでさえ強力なマリエナの魔法をいとも簡単に消し去ったということは

マリエナの金の魔力量を上回ることを証明したようなものだ。

リリーナは両手を見つめて改めて、自分の魔力量に驚いていた。



「リ、リ、リリーナ様…!!?」



カツカツと足早にリリーナの元にやってきたのはマリエナ。

目は無理やりにっこり、口元はひくひく、震えながらの姿がそこにあった。



「マ…マリ…エナさん?」



「ちょっと…本日は2人でランチでも…いかがでしょうか?

お話ししたいことがたくさんありまして…」



2度も魅了を消されたので、何かを言いたかっただろうが

もちろん皆に聞かれる状態では言えるはずもなく、

必死に我慢しながら、冷静を努めているのがよく分かった。



「え?ああ…そ、そうですね。そうしましょうか…」



リリーナもいつかはじっくり話さねばと思っていたのでちょうどよかった。

少し警戒はしつつも、この機会を逃すまいと、話に乗った。

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