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おうちに帰ろう

10年分の会話はし足りなかったが、お互い話したいことをひとしきり話せたようだった。

日も傾き、辺りも暗くなってきたため、戻らねばならないセラドに合わせて、

みんなも一緒にカフェを出た。

魔法騎士団の施設が学園寮の向こう側にあるため、4人で帰路をゆっくり帰っていた。



「ちゃんとご両親に挨拶に行けよ?」



「わかってるって。リリにも言われた。

ちょっと学園のゴタゴタが済んでから行こうと思っているよ。」



「ゴタゴタねぇ。リリーナのこととなるとお前は子供の頃からなぁ…」



「うるさい!」



リリーナはそんな2人を後ろで見ていて、自分の知らない兄の姿があって新鮮だなと

感じていた。

ノーは気に入りすぎてテイクアウトした、くまさんクッキーの紙袋を大事に持って

ほくほく顔で歩いている。



「君の兄はこんな面もあったんだね。私が一緒にいた頃はいつも静かで

ずっと感情を抑えているようだったからね。」



「ええ。のびのびとしたお兄様を見られてすごく嬉しいです。」



「うん。」



そうこうする内に、学園寮が見えてきた。

リリーナは、ハッとした顔をして足を止めて言った。



「いけない!お兄様、ノー!変身しなくちゃ…!」



そうして、2人を路地に押し込んだ。

その様子を不思議そうにセラドが見ている。



「?」



「あ、えっと。この2人は私の使い魔としてですね、

学園生活を見守ってもらってるんです…」



路地を背に説明をするリリーナの背後から一瞬漏れ出た、光のもやと黒いもや。

その直後にセラドが目にしたのは

リリーナの足元からててっと現れた、黒猫と二股しっぽの白猫だった。



「猫…?まさか、あの2人がこの猫になったというのか…?」



”そうだ。あそこは女子寮だからな。家族でも異性はダメだ。”



”私は性別などないけれど、間違われるのも面倒だからね、合わせているよ。”



それぞれがセラドに説明をした。



「なるほどな…高度な魔法が使えると、そういうこともできるのだな。

私はどちらかというと、体力の方が勝っているから、変身なんて不思議でならないよ。


…ところで、気になっていたのだが…この黒猫…屋敷で見たことが…?」



”そりゃそうだ。あれは俺だ。”



「… … …ははっ!

そうかそうか…!アッシュは…そうか!

ちゃんと見守っていたんだな…!

私がそんなに気を張って見守っていなくても全然大丈夫だったってわけか。」



セラドは口を大きく開けて笑った。

それに対して、黒猫姿のアシュレイは強く反発した。



”いや、違う…!違うんだ…。この姿では何もしてやれなかった。

家族が困った時、いつでも気にかけて手を差し伸べてくれたのはお前だ。

長い間ありがとな、セディ。”



アシュレイは照れ臭そうにセラドを見上げながら言った。



「ん…」



そういって、セラドはしゃがみ込み、猫頭を大きな手でわしゃわしゃとなでた。



”あ、こら!猫扱いするな…!!”



2人でわいわいとする様子を見て、ノーがリリーナの肩に乗ってきて頬に顔をすりつけた。



”面白いね。”



「そうですね。これが”親友”ってやつですね。」






心地よかったのか、はたまた歩くのが面倒になったのか、

黒猫アシュレイはセラドの広い肩に乗り、運ばれている。

ノーもそれをみて羨ましくなったようで、セラドの大きな腕に抱っこされている。

隣で歩くリリーナは、その猫まみれのセラドがおもしろいやら可愛いやらで

ずっと口元が緩んでいた。



”ところで、お前にカフェは似合わないと思うが、趣味にでもなったのか?”



割とひどい言い方で、セラドに理由を尋ねたアシュレイ。

確かに、どちらかというと、お茶の時間すら鍛錬しそうなイメージだったので

カフェに、しかも1人で行っていたことを、リリーナも不思議に思っていた。



「ああ、あれは…リリーナが前に勧めてくれたから行ってみたんだ。

演劇を観てからカフェに行く最高のコースがあるって…」



「わ、私が…?…ああっ!」



リリーナが記憶を辿ってみると、確かに以前、お勧めしたことを思い出した。

それを律儀に体験してくださるとは…とってもありがたく申し訳ない気持ちになった。



「貴重なお休みの日に…ありがとうございます!」



「いや、こちらも礼を言うよ、こんな経験初めてで、とても心が踊ったよ。

いい息抜きになった。ありがとう。

今度、一緒に行こ…むぐぐ」



”ナチュラルに兄の前でデートに誘うんじゃない。”



そう言って、自身のしっぽでセラドの口を塞いだ。



「…?違うぞ、一緒に観劇してカフェに行くという流れを楽しむだけだぞ?」



”セラド様…それが一般的にはデートと言われるんです…”



そう心の中で言いながらリリーナは話す。



「お気に入りの演者さんを見つけられるといいですね。そうするとまた

違った次元に入れて、より楽しめるんですよ!」



「そうなのか…1度観ただけでは、まだ本質は楽しめないということだな。

わかった。何度も観てみることにするよ。」



そう言い、セラドの右手はリリーナの頭をぽんぽんっとし、肩に流れてキュッとつかんだ。



”屋敷で猫の時に見ていたが、やっぱりお前のリリに対する距離感がおかしい。

手は…この手は…スッと外すのだ、スッと!!”



黒猫アシュレイはセラドの腕を伝い、尻尾で彼の手をパシパシと叩いた。



「?どういうことだ?私は普通に、話をしているだけだが…?」



”くぅ…これはもう…”



自分の行動が人を勘違いさせているということが、あまりわかっていない彼に

先にアシュレイの方が諦めてしまい、



「ん…まあ、セディらしいよ、こういうところ…!」



そう言って苦笑した。




そしてとうとう、寮の門の前に着き、セラドとはお別れとなった。



「セラド様、お付き合いありがとうございました。」



「いいや、私も良い時が過ごせたよ。ありがとう。」



「ノーくん。君ともまたじっくりと話してみたい。」



”うん。いつでもいいよ。”



そして最後に、黒猫アシュレイに顔を向けると、



「今度またゆっくり酒でも飲もうな。」



”…だな。”



そう約束をして、魔法騎士団施設への道を帰っていった。

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