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思いがけない再会

乗合馬車で行きと同じ2時間、揺られながらの帰り道。

リリーナは、ちょっとした小旅行にも感じられるほどの移動距離に

疲れて、アシュレイの肩を借りて少し休ませてもらっていた。


やがてウトウトして、すぅすぅと小さな寝息を立てて眠ってしまった。



「よかったね、リリーナが嬉しそうで…。こっちも嬉しくなったよ。」



彼女を挟んで向こう側にいるノーが、リリーナを見ながらアシュレイに話しかけた。



「そうだな。今日は行ってよかったな。あんな楽しそうなリリは子供の頃以来だ。

あと食事も美味かった…

あんなの口にしたことがなかったから、すごく新鮮だったな…」



思い出すように空中を見つめるアシュレイに対して、

ノーが腕組みをし、深くうなずく。



「くく…それを聞くと、リリーナはもっと喜ぶと思うよ?」



「リリーナが?喫茶店の者達ではなく?」



アシュレイが不思議そうに尋ねるが、ノーはそれを楽しむように、含み笑いをして

それから話を続けた。



「『お兄様の幸せと感じることを、沢山してあげたい』んだって。」



そう聞いたアシュレイは、照れ隠しだろう、口がキュッと小さくなり、

ノーから目を逸らすと、右肩で眠るリリーナを見つめた。



「…ふ」



そうしてアシュレイは、左手の人差し指で、優しくリリーナの鼻をぷるっと弾くと、

にまっと口角を上げた。



「…ん。」



リリーナはもちろん起きなかった。





そんなやりとりをしてから1時間と少し。

ようやく見知った王都の中心街へと入り、そろそろ馬車の停車場に着くと言う頃。



「…あれ…?」



そう言い、遠くの一点をまじまじと見始めたのはアシュレイ。

首を前に突き出すように、じっと見つめている。

それと同じくして、リリーナも目が覚めたようで、

アシュレイの肩の上でゆっくり目を開いた。



「もしかして…?」



という声が漏れ聞こえて、見上げると、いつも余裕のある表情の兄にはない

少し焦った顔がチラ見えする。

リリーナは肩からゆっくりと体を起こして尋ねた。



「お兄様…?どうされました?」



「リリ、停車場に着いたら付き合って欲しいところがある。」



「…はい?」



程なくして停車場に着いたところで、やや早足のアシュレイを先頭に、

リリーナ、ノーが続いた。

アシュレイは一点を目指して、ずんずんと進んでいく。



「お兄様?どうされたんですか、そんなに急いで…?」



「なんで…あそこに…あいつ…!」



独り言がぽろぽろ聞こえてはくるが、リリーナには原因は分からなかった。

とにかく着いていくしかなかった。


だがそれはすぐに判明した。


辿り着いたところは、先日の買い出しの時に訪れた、カフェ・モーメント。

休みということもあり、空席を探すのが難しいくらい、店内はとても賑わっていた。



「こっち…!」



アシュレイは店内を見渡すと、1点に向かい進んでいった。



「いらっしゃいませ。」



と店員が迎えるも、アシュレイがスルッと先に行くものだから、

カフェの利用かどうかはわからないが

リリーナは適当に話を合わせる。



「あ、えっと…ま、待ち合わせです。」



「あ、はい、どうぞ!」



快く迎え入れてくれた店員さんに感謝をしつつ、店の奥に進むアシュレイを追いかけた。



「私はまたクッキーが食べたいな…」



ノーはノーで先日のくまさんクッキーを思い出していた。



「ちょっと…お兄様!目的を教えてくださ…!」



そう、アシュレイに注意したところで彼の足が止まった。

テラス席の右端の席。

そこには見知った顔があった。



「…セディ…」



アシュレイがその人に向かって静かに言うと

その人のお茶を飲む手が止まった。

深い青緑色の髪を揺らし、ゆっくりと振り向き見えてきた薄グリーンの瞳。



”セラド様…”



アシュレイの目的はどうやら彼のようだ。

リリーナはノーと一緒に下がると、しばらく2人のやり取りを見守ることにした。



「その呼ばれ方は久しぶりだ…」



「俺もこの名を口にするのは久しぶりだ。」



静かに会話を重ねるアシュレイとセラド。

2人とも真顔で表情一つ変えずにいる。



「長年行方不明だそうだな…」



「色々あって戻ってこられた。」



「どれだけの人に迷惑をかけたか知っているか…」



「ああ、これから償っていこうと思う…」



「家族を守ってという約束をまだ守っているぞ…」



「ああ、感謝している。お前にしか頼めなかった事だ…」



「…」



「…」



「ったく…!アッシュ…!!

散歩が長いんだよ…!すっかり大人になっちまってるじゃないか…」



少しの沈黙の後、セラドは席を立ち、アシュレイに肩組みをして

再会を喜んだ。



「んだよ、セディだって渋い大人になってよ、なんだよこの筋肉…!」



アシュレイも、セラドの腕のパンパンな筋肉を人差し指で突きながら言った。

元々大の親友だった2人にはたとえ長年会っていなくとも、一瞬で埋め合わせられる

何かがあるのだなと、リリーナは感じて、2人の様子を微笑ましく思った。


リリーナはノーを促し、近くの2人席に座ると、メニューを開いた。



「くまさんクッキー注文しましょうか、ノー。」



「わ、やった!」



ちらっとリリーナの方を向いたアシュレイには、セラドと会話を楽しみなさいという

意味を込めて、手のひらで合図し、セラドの席に座らせた。

セラドも振り返り、リリーナに笑顔を向けた。

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