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甘味と共に…近況報告会

固めのプリンをスプーンですくい、口へと運ぶ。



「ん〜〜〜!!!」



強烈な旨味とじんわり広がる甘さに、頬から耳の下にかけてジーンと痛くなる。

それを片手で押さえながらも、食べ進めていく。



「いいでしょう?プリン。」



「はい!噛みごたえがあって、程よい甘さで、このソースのほろ苦さとも合ってて…

この『ぷりん』もメリンダ様の記憶がある世界の食べ物ですか?」



「そうね。子供の頃から身近にある食べ物だったわね。」



「なんて贅沢!うらやましいです…」



そんな会話に耳をぴくつかせたのは、アシュレイ。

味わっていたプリンを飲み込むと、ぼそりと言った。



「記憶がある世界?」



「…ああ、そうですね。改めてご挨拶しますわ。

私はメリンダと申します。リリーナとは、王立魔法学園で仲良くしていましたわ。」



そこから、メリンダの中には、違う世界で生きていた時の記憶があり、

この世界が物語にそっくりだと言う事、断罪されるまでの出来事、それから

カフェのメニューはその世界のもから引用しているのだと説明をした。



「なるほど…そう言うことがあり得るのか…」



アシュレイは、この信じられないような話を飲み込もうとしていた。

自身も平坦ではない生き方をしていただけに、受け止められる範囲が広いようだ。



「ねぇねぇ、違う世界では、どんな魔法があったの?」



興味津々のノーがメリンダに尋ねる。

メリンダは、少し難しい顔をしながら答える。



「魔法…は存在していなくて、代わりに魔法のような事は

様々なエネルギー源を使って実現していましたわ…。

例えば、油の力で動く4つの車輪の乗り物…ボタンを押せばいつでも火が出るもの、

いつも冷たく冷やし続けられる箱…?あぁ、わかるかしら…!

とにかく、魔法がなくても不自由なく暮らせる世界でしたのよ…」



「想像がつきませんね。」



「だね、油は料理でしか使わないと思っていたよ。」



リリーナはかけらも想像がつかなかったが、メリンダの記憶の世界に大いに興味を持った。



「ところで、そろそろ聞かせてもらっていいかしら。

少し見ない間に随分と人気者ね?」



テーブルに両肘をつき、顎を支えたメリンダは、アシュレイとノーをチラッと見て

リリーナに目線を戻して言った。

それに、紹介していないことに気づいたリリーナは、改めて彼らを紹介をすることにした。


「ああそうだ、ご紹介が遅れて申し訳ありません。

こちら、メリンダ様から見て右の人はノーといって、人間の姿をした私の魔力です。

そして逆のこちらの人は、私の兄でアシュレイといいます。」



「…え??」



この紹介で、メリンダが一気に混乱した。



「あなた…お兄さん…いらしたの?

そして、魔力…ってこんなにはっきり具象化するものなの??」



「そうですよね…全くわからないですよね…

じゃあ、順を追って説明しますね。」



「ええ、お願いするわ。」



おでこに手をやっていたメリンダが、改めてリリーナ達に向き直ったところで

リリーナは話を続けた。



「ではまず、最後の方にメリンダ様に情報をいただいていた”銀灰の悪魔”ですが…」



「ああ、出現条件はわからなかったけど、あの後マリエナさんの前に現れたのかしら?

それで彼女の恋愛対象に…」



「勘弁してくれ…」



アシュレイの口からつい言葉が漏れた。



「?」



メリンダが不思議に思っているところへ、リリーナが事実を放った。



「正体は私の兄でした。」



「…」



「…」



「……えっ!!??」



少しの沈黙の後、メリンダが目を見開き、体をのけぞらせて驚いた。



「…ですよね。驚きますよね…。色々あって…何も悪いことはしていないのですが

銀灰の悪魔という存在になって、身を隠さなければいけなくなったんです。

で、これまた色々あって、私が解放して無事に兄として帰って来たんです。」



「そうなの…ね。あの噂の人物がこんな身近にいらしたとは…不思議…」



「はい…で、それから、このノーですが、訳あって今まで封印されていた、私の魔力を解放しまして、私の方に戻ってきたんですが、私の体がまだ全ての魔力が収まって制御できるほど耐性ができていなくて、入り切らない魔力で作られた意志のある存在です。」



「これは…言われなければ全くわからないわ…完全に人間に見えるわ…ね。」



そう感心しながら、メリンダはノーの手やら顔やらを見た。

まじまじと見られているが、ノーはさほど気にする様子もなく、にっこりとしていた。



「なんだか色々あったのね…。

でもリリーナ、久しぶりに会って感じたのは

前よりも生き生きとしているわ、あなた。」



「そうですか?私はメリンダ様がいなくなってとっても寂しいですよ?…でも確かに、悲壮感はなくて、こうして遊びにも来られているし…

今は一つ気になっていたこともすっきり解決しましたし、気分は晴れていると思います。」



それを耳にしたアシュレイが若干、口をへの字にしたようにも見えたが、

すぐにプリンを頬張ったため確認はできなかった。



「ふふ…!元気でよかったわ。」



「ふふ…!メリンダ様もとても楽しくお仕事をされていて安心しました。

グラフィムさんとも仲良く…?」



そう彼の名を切り出すと、途端にメリンダの顔が赤くなっていくのがわかった。



「そ、そ、そうね。毎日忙しいけれど、とっても充実しているわ。

彼のおかげで色々と助けられているし、感謝しているの…。」



「あれ?珍しく褒めてくれているね、嬉しいなぁ。」



そう言い、キッチンから出てきたのは、お久しぶりの顔、グラフィムである。

メリンダの想い人…すでに両方が想いあっているとは思うが。

リリーナはこの2人のやりとりが好きだ。



「え!グ…!?」



「いつもはさ、調理やらメニュー開発の時なんて厳しめじゃん。

でもまあ、メリンダの気持ちがわかってよかった。」



メリンダの屋敷で会った時の彼の印象からは、かなり砕けた感じとなり

それがよりメリンダとの仲の良さを感じさせて、リリーナはついついニヤついた。

グラフィムは右手をそっとメリンダの肩に置くと、赤らんで硬直しているメリンダをよそに

リリーナ達に話しかけた。



「リリーナ様、お久しぶりです。そしてお連れ様初めまして。

お食事は楽しんでくれましたか?」



「…はい!とても美味しかったです!」



「うん、なぽりたん美味しかったよ。」



「うむ、なかなかの腕前だった。

…しかし、キッチンは大変じゃないのかい?あれだけの注文量は1人では無理だろう?」



先ほど話していた疑問をアシュレイがグラフィムに投げかける。

すると、不敵な笑みを浮かべてグラフィムは言う。



「ああ、それは全く問題なく1人でこなしていますよ。」



それに補足するように、真っ赤な顔のメリンダが話した。



「グラフィムの技量はとにかくすごいの。屋敷の従者になる前は、何かしら言えない仕事を

していたらしくて、素早く完璧に物事を行うのは得意なんですって…」



そう言われ、ゆっくりとうなずくグラフィム。

“言えない仕事”に多少引っかかりはありはしたが、



「じゃあ、得意が生かせる場があっていいことだな。」



というアシュレイの大雑把なまとめで疑問は吹き飛んだ。



昔話や近況を話し合ううちに、ティータイムの時間となろうとしていた。

これ以上長居すると邪魔になってしまいそうだと察したリリーナは、

お暇することにした。



「ごちそうさまでした。」



「じゃあ、またきてね。」



「はい、もちろんです!」



そう挨拶を交わして、メリーナ喫茶店を後にした。







「楽しかったぁー!」



リリーナは大きく空に向かって伸びをしながら、元気にしているメリンダの様子が見れたのと、美味しいご飯が食べられたのを振り返り、とても幸せな気持ちになった。



「また来ようね。」



ノーがリリーナの肩にくっついてきて言った。

それに負けじと思ったかどうか、アシュレイの方も

リリーナにくっついてきて言う。


「まだ気になるメニューがたくさんあるしな。」



そうして三人でぎゅうぎゅうになりながら

中心街へと向かっていった。


それから、乗合馬車の出発時刻まで近隣で買い物を楽しみ、

空がそろそろ薄い赤みがかる頃、帰路についた。

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