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にぎやかな三人

「ふう。」



それぞれが想像を膨らませた食べ物を目の前にして、見た目も味にも感動を覚えて

完食した頃、ちょうどお昼時のピークとなった。

メリンダは忙しそうにキッチンとホールを行ったり来たりしている。



「そう言えば、料理は全てグラフィムさんが担当するって言われてたわ…

まさか…1人でこの量をこなしているのかしら?」



「いや、流石に1人では無理だろう。もう1人くらいいるんじゃないか?

俺なら小人を何人か召喚して手伝ってもらうかな。」



アシュレイは両手を頭後ろに組んで、少し上を向いて想像しながら言った。



「召喚って…それは、お兄様が闇属性だからできることですよ?

でも…お手伝いさんはいそうな感じですね。このスピード感で言うと。

あとでメリンダ様に聞いてみましょう。お料理おいしかったってお礼も言いたいですしね。」



「ところでこの硬いものは食べられるのかな?」



急に違う方面から切り込んできて、舌をベッと出してリリーナに見せるのはノー。

彼が飲んでいたのはクリームソーダ。舌の上に乗っているのは、さくらんぼの種だった。



「ああ、それは種なので出しましょうね。」



「わかった。しかしこれは美味しいな。シュワッとした緑色の飲み物なんて見たことがない。」



種を紙ナプキンに置いたノーは、そう言いながらストローで勢いよく啜る。



「っはー!喉がピリピリするっ…!」



ノーなりに楽しんでいるようだった。

リリーナは青年の外見に対して、この子供のような仕草に、微笑ましいを通り越して

にやけそうになったので、慌てて口元を両手で隠した。


まあそれはアシュレイにしっかりと見られていて、案の定突っ込まれた。



「リリはいつからそんな観察マニアになったのだ。子供っぽいのがそんなにいいのか…?

年相応の仕草に見せるのが、大人というものだぞ?」



「はぁ…まあそうで…!!」



リリーナが少しはしゃぎすぎたと反省を込め、アシュレイに向かって話そうと顔を向けた時

とんでもないものを見てしまった。


アシュレイが飲んでいるのはミルクセーキ。

ストローが差し込まれているにもかかわらず、豪快にグラスに口をつけて飲んでいたのだが

そのせいで、上唇の上に泡のヒゲができていたのだった。



「……お…」



「ん?」



リリーナは教えようにも、その姿が可愛らしいやら、あれだけ言っておきながらのこれで、面白いやらで、言葉が続けられなかった。

アシュレイは何かいいたげで言えないリリーナを不思議な顔で覗き込んだ。



「なに?リリどうした??」



「ふ…!」



近づくアシュレイの顔に耐えかねて、思わずリリーナは口を片手で押さえてうつむいた。



「なんだ…?リリ…??」



「あー…これだね。」



そう言って、うつむくリリーナの向こうから、紙ナプキンを持ったノーの手が伸び、

アシュレイの上唇の泡を拭った。

そしてそれをアシュレイに見せて



「おヒゲができてたよ?」



「えっ!!?」



素直に報告したノーに、アシュレイの顔がどんどん赤くなる。

すぐさまノーの持つ紙ナプキンを奪い取ると、くしゃくしゃっと丸めて

拳の中にしまい込んだまま、膝に手を置き、そっぽを向いた。



「初めての飲み物だしな…」



そう小さくつぶやいた。

リリーナはしばらく震えながらうつむいていたが、ようやく堪えなくても良いほどまでになったところで、体勢を戻し、自分のレモンスカッシュを飲もうとしたのだが、

なぜかコースターの上にはグラスがない。



「あら…?」



と言ったところで



「レモンって甘いの…?」



とノーが言うのが聞こえた。

まさかとそちらの方を見ると、やはり自分の飲み物をノーが飲んでいたのだ。



「ノ…ノー!?じ…自分のがあるでしょう?」



「え?食べ物も分けあったから、飲み物も味見くらいいいと思うんだけど?」



「ダメだろ…」



それに参戦してきたのは、そっぽを向いていたアシュレイ。

ノーの様子に、若干のよくない感情がこもったような目を向け

先ほど紙ナプキンを隠した拳を、さらにグッと握った。



「味見していいなら俺もしたかった…!」



「すればよかったじゃない…!」



「そこはだな、いくらか遠慮というものがだな…」



リリーナを挟んで舌戦が始まった。



「え…ちょっと…2人とも…」



「なんでリリのものを勝手に飲むんだ!」



「代わりに私のクリームソーダーを飲ませてあげるからいいんだ。」



「それだとまたストローを…もっとダメだ。」



「お兄様…!ノー!」



リリーナの声は届かない。

リリーナは軽くため息をつくと、両手の人差し指をくるくるっと動かした。



「ここはお店ですよ!」



シュ!シュ!



「!?」

「!?」



「あっま…!!」



リリーナは自分のレモンスカッシュにふんだんに入っているレモンの輪切りを

魔法で二人の口の中に滑り込ませたのだった。

それは、超甘党のリリーナのために特別に仕込まれた砂糖漬けのレモンで、

サイダーに浸されてもなお激甘だった。

そのあまりの甘さに、2人の舌戦は中断された。



「静かに、楽しく過ごしましょう!」



「…」



2人は静かに上下に頭を動かすと、激甘なレモンの輪切りを少しずつかじった。


それからしばらくは、本を読んだり、会話をしたり、

リリーナはメリンダ働く様子をちらりちらりと見たりして、あっという間に

お昼のピークタイムのが過ぎ、人も一旦引いてゆったりとした時間となった。



コト…



テーブルに置かれたのは、山のような形の黄金色のもの。

茶色いソースがひたひたにお皿に満ちて、甘い匂いがする。



「はい、食後のデザート。プリンっていうのよ。」



一仕事終えたメリンダが、三人のために持ってきてくれた。

満腹でありながらもさらに食欲をそそる、そのプリンと言われるものに

三人とも目が輝いた。

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