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メリーナ喫茶店

「立ち話も何だから、いらっしゃい!」



そう言って、メリンダは三人を店内へと招き入れた。


店内に入ると、リリーナは一瞬でこの雰囲気の虜になった。

自然に口が開き、笑顔となって店内を見渡す。


その店内の様子はというと、中央に大きなテーブルがあり、その中心にはなんと細めの木が生えている。

枝葉が広がっているのでこの席に座ると、まるでピクニックをしているかのような気分に

なれそうだ。


その木の席の周りには、ナチュラルウッドの2人席と4人席がいくつか。

丁寧なフラワーアレンジメントが各席で存在感を放っている。


一番奥には、クッションをいくつも携えたL字の生地張りソファーと、

それに沿うように低めのテーブルが置かれていた。

近くにはこれまた大きめな鉢植えの木が置いてあり、それがちょうど照明を挟んでチラチラと光を落とすので、まるで木漏れ日の下にいるような感じになれそうだ。



「なんと…建物の中なのに、自然に囲まれた感覚になりますね…!素敵…。」



「嬉しい!リリーナにそう言ってもらえて…。

頭を捻りに捻って、考えた甲斐がありますわ!

リリーナ達にはぜひとも、あちらのソファー席に座ってもらいたいわね。」



メリンダが手を向けた先は、その木漏れ日席。



「やった!…じゃなくて…素敵なお席にご案内ありがとうございます!」



「ふふ…!じゃあちょっと待っていてね。」



そう言い、メリンダはキッチンへと戻っていった。

リリーナたちはそのL字ソファーへひとまず座った。

リリーナが真ん中に、左手にノー、右手にアシュレイといった位置関係だ。


ここでようやく珍しく静かだった2人が口を開いた。



「あの子がリリーナの大好きなメリンダなんだね?」



ノーがクッションにもたれながら尋ねた。

リリーナもクッションを抱えてうなずいた。



「そうです。あの方のおかげで学園生活を楽しく過ごせたんですよ。」



「メリンダ嬢、少し雰囲気が変わって伸び伸びとしたな。」



アシュレイは浅くソファーに腰掛け、2個重ねたクッションを肘置き代わりに使っていた。



「ですね…!色々我慢されてましたし、念願のやりたいことができているからですかね。」



改めてソファー席から店内を見回すと、開店時間からそんなに経っていないというのにすでにお客さんがポロポロと入っていた。

この調子だとすぐに席が埋まってしまうだろう。なかなかの繁盛店だと伺える。



「お、この冒険小説はリリの部屋にもあったな。」



そう言いアシュレイが手を伸ばしたのは、ソファーの背後にある大きな本棚。

さまざまなジャンルの書籍がびっしりと詰まっている。


リリーナはそのタイトルをまじまじと見てみると、自分が今まで読んだことがあるものばかり。

本を取り出し、ページをめくり、好きなくだりを探し出す。



「ここ…そうそう!」



「ふふ…!気づいた?リリーナが読んでいたタイトルを思い出して、たくさん入れさせてもらったわ。」



「メリンダ様…!何だか嬉しいです。こんなところまで知っていてくださったなんて!」



「当たり前でしょう!だってお友達なんですもの。さ、どうぞ。」



くすくすと笑うメリンダは、綺麗なカットグラスとレモンやライムの輪切りが入った水のピッチャー、そしてメニューを差し出した。

リリーナは早速メニューを開いてみる。ノーとアシュレイも同じく覗き込んだ。



「…わぁ!メリンダ様が言っていた、おむ…ら…いす、に

な…ぽり…たん?がありますね!」



「おむ…?なっぽ…?なんだそれ?」



不思議そうな顔でメニューの名前を見つめるアシュレイ。

それに対して、メリンダは得意げに説明をし始めた。



「そうよ。まずはオムライス。しっかりと味がついた赤いご飯が、ふわっふわの卵の衣に包まれているの。

その上からは濃厚なソースがたっぷりかかっていてね、その3つをスプーンに乗せて

口に運んだ時の幸せと言ったら…計り知れないものですわ。」



オムライスの説明を聞きながら、頭の中で想像をしていたアシュレイの顔は

説明が終わる頃にはすっかり、ほわんとした顔になっていた。

どうやら美味しそうなものが想像できたらしい。



「次にナポリタン。これはパスタなのだけど、なんと炒めるの。

ケチャップと具材と共に熱を加えると、ケチャップの酸っぱさが飛んでとっても濃厚で

まろやかな味に仕上がるわ。具材のソーセージがパリッとしていて、口当たりのアクセントになっていて、そのコントラストといったら…たまらないわ。」



今度はナポリタンの説明を聞いていたノーが、両手で鼻と口を覆い、目をキラキラさせていた。

こちらもとても美味しそうなものが想像できたようだ。


リリーナは2人を微笑ましく見た。

さて、せっかく珍しいメニューがあるので、3人違うものを注文したほうがシェアできて良いかと思い、あと1品何かないかを探していた。

それを察したメリンダはすかさず、リリーナが持つメニューを1ページめくると

中央あたりを指差して言った。



「リリーナにはこれがおすすめよ。」



「ん…?ぴざ…とぉー…すと??」



「そう!厚みのある四角いパンの上に、トマトソースが塗られて、その上にベーコン、

チーズをたっぷり乗せて焼くの。3分もしないうちにチーズがとろーっと溶けてくるわ。

ベーコンからにじむ塩味のオイルと共に一口をかじる時の満足感は…振り切れると思うわ。」



ごくり。



リリーナの喉が鳴った。

それはメリンダにも聞こえたようで、彼女はクスッと笑った。



「メリンダ様…説明がお上手すぎて、お腹が空きました…

先ほど説明いただいた、おむらいす、なぽりたん、ぴざとーすと…をお願いします。」



「承知いたしました。じゃあ、飲み物は合いそうなものを持ってくるわね。

奢りだからお気になさらず!」



「わ、ありがとうございます!…ほら、2人ともお礼、お礼。」



リリーナは両手をノーとアシュレイの背中に回して、

軽くぽんぽんと叩き行動を促した。

それに応えて、2人はメリンダに向かって軽く会釈をした。



「ありがとう。」



「遠慮なく…いただきます…。」



言われた方のメリンダも、笑顔で丁寧にお辞儀をした。

そうしてキッチンへと体を向けたところで、リリーナに再び振り向いた。



「ああそうだわ。」



「?」



「こちらのイケメン達のことも、後でじっくり聞かせてね?」



そう言い、メリンダはキッチンへと戻っていった。



”そうだ、この事を話さないとって思っていたんだった…!”



リリーナはつい店内やメニューに見とれてしまったが、この2人のことをメリンダに

説明しなければいけないという、今日最大のミッションがあったのを思い出した。

誤字指摘ありがとうございます。

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