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はじめてのカフェ

その日の放課後、早々にノーの使い魔登録をした後

アシュレイも連れて三人で買い物へと出かけた。



「何を買いに行くんだ?」



「ベッドです。ペット用のと、人用の簡易ベッドですね。」



「ベッド…リリ、今朝の件はそんなに気に触ることだったか?」



心配そうにリリーナを覗き込むアシュレイに対して、

リリーナは少し顔を赤くしながら説明をした。



「今日みたいな事が続くようなら、私の心臓が持ちません…。

お兄様は10年前の、私が子供の時の感覚のままなのでしょうけど…

なんと言うかですね…

いくら家族とはいえ、お兄様の容姿は青年なのですから、

こちらが…とっても緊張してしまうんです。」



「そう…なのか?」



「では、私は関係ないな。」



「いえ!?ノーもですよ?

容姿は中性的ですが、同じくあんなことをされると緊張します。」



「ふーむ…?」



いまいちリリーナの説明が刺さっていない2人に対して

これは説明が難しいと判断をしたリリーナは、強行することにした。



「とにかく!ベッドは1人1つ!行きますよっ!」



そうして猫の姿のアシュレイとノー、リリーナは夕方の街に繰り出した。





すっかり買い物も終え、魔法で荷物の転送も済ませた頃には

日も沈み、街灯がぽつぽつと灯り始めていた。


リリーナたちは、カフェのテラス席でお茶を飲むことにした。

寒い時期なので、テラス席には魔法でシールドが張られており、店内と同じく暖かかった。


暖をとりに立ち寄るお客さんも多く、店内は賑わっていた。

ここはカフェ・モーメント。

メリンダとよく通った劇場近くのカフェだ。


ざわざわ。


「あのお席の方、お顔がとても…」

「あの目で流し見されたい…」


場所柄、お客様が観劇帰り、演劇ファンが集まりやすい。

それゆえ、端正な顔立ちのアシュレイとノーが非常に目立っており、

お客さんがちらちらとリリーナたちを見ていた。

しかし三人とも天性の鈍感さゆえ、それには気づいていなかった。



リリーナは、2種のクリームがもりもり乗ってチョコソースがたっぷりとかかっている

2段重ねのパンケーキを堪能する。



「リリの味覚は甘味に振り切れているな…」



「確かに…」



それを見ながら、人間姿のアシュレイとノーはお茶を嗜んでいた。



「いいんです!好きなものは正義!

あ、これ私の好きな役者さんのセリフです。ふふ。」



リリーナも漏れなく場所柄、テンションが上がっていた。



「…そういえばお兄様、久しぶりのお茶じゃないですか?」



「ああ、そうだな…こうして椅子にゆっくり座って飲むのは…

家にいた時…10年ぶりくらいか。いいな。」



テーブルに収まりきらない長い脚をスラリと伸ばし、優雅に座る。

銀色の長髪から見える深みのある輝きを持つグレーの瞳。

ティーカップを綺麗に持つ姿。

ティーカップの中は『ロイヤルミルクティー』



”かわいい…!”



リリーナはニヤつきそうな口を手で抑えて、震えながら我慢をした。



「これは、おいしいな。」



一方、ノーの方もアシュレイと同じく、収まりきらない脚を伸ばし、座っている。

こちらは白い長髪を耳にかけると、クッキーに手を伸ばす。

手に取ったクッキーを見つめるゴールドの瞳に思わず惹きつけられそうになる。


だが、その横のクッキーに目がいってしまう。

『くまさんクッキー』



”かわ…!”



人の姿でものを食べることをほとんどしたことがないノーのために

簡単に手でつまめるものをと、頼んだものだったが、客層がほぼ女性なだけに

こういった店側のアレンジが逆にリリーナには効いてしまった。

リリーナは口が開きそうになるのを抑えて、歯を食いしばった。



”…これが『ギャップ萌え』というものですね、メリンダ様!”



リリーナは、いつかの日にここで話したことを思い出した。



「あ…」



思い出したといえば、一つ大事なことを言うのを忘れていたことに気づいた。



「お兄様、私が魔力を無事に取り戻してきたら、

なんでもお願いを聞いてくださると言いましたよね?」



「あ…あぁ、そうだな。何か決まったのか?」



「はい!私のお友達の喫茶店に行きましょう!今週末に!」



「友達の…喫茶店…?」



「そう、メリーナ喫茶店です!」

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