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アシュレイが抱えているもの

「…気分はどうだい?」



リリーナを見つめながら、心配そうにアシュレイが尋ねた。

というのも、目覚めはしたが、急激に体に魔力が入ったことで、リリーナの調子が整わなかったからだ。

ノーがリリーナの中の魔力量を自分に移して調整したり、アシュレイはどんどん消費していく体力を治癒魔法で補ったりして、なんとか体調を取り戻すように、2人でつきっきりだった。

そのおかげか、リリーナもだいぶ顔色も良く、呼吸も整ってきていた。


アシュレイは、彼女が寝ているソファーベッドに腰掛け、絶えず頭を撫でていた。



「もう大丈夫です。…ごめんなさい…。受け皿が整っていないとこんなにも辛いんですね…

お兄様は長年これを保持し続けたなんて…本当にすごいです…」



「俺は…、俺自身の魔力も元々多かったから、保持は苦ではなかったよ。

心配するな…。」



「まあ、ひとつ面倒といえば、私が騒いでいたことくらいか?ふふ…」



リリーナの頭付近でくるんと丸くなり、寝ていたノーが顔も上げずに、

片目を開けてちらっとアシュレイに目線を送った。



「まあそれだな。お前がしょっちゅうリリーナに会わせろって暴れてたからな。

…もう、リリの中では絶対にするなよ!?」



「そんなのさっきリリーナに誓った。『一緒に』乗り越えるってね。」



そう言い、少し照れているのか、ふたつの尻尾を大きめに揺らしていた。

それを見て、アシュレイはノーに対して張っていた緊張感を解いても良いと思った。



「はは、もう信頼関係を築けているとは大したものだ。お前はリリを大切に

思ってくれてるんだな。…まぁ、そうだな。これで安心できるよ。」



そうして、リリーナを撫でていた手を止めると、そのまま頬に伝わせ、

むにむにっと軽くつまんだ。



「?…ほふぃーふぁふぁ…?(おにいさま?)」



突如、イメージもしなかった子供のいたずらのようなことをされて、

リリーナの頭には「なぜ?」がたくさん溢れた。



何度かほっぺたをつまんだ後、



「仲良くやっていけそうだな。

…じゃあ、そろそろ…捜索隊が出てしまう前に送ろうか。」



と、アシュレイは立ち上がった。


確かにこの森の中の小屋に来た頃は太陽がてっぺんに届く前くらいだったのに

今は、森の中、しかも家の中でわかりづらいが、薄暗さを感じる。

数時間は経過しているだろうと感じた。



(演習の時間は…日が暮れるまで。…そろそろ終わる頃かしら。

このままここでゆっくりしていたら、本当にマリエナさんが描いていた

行方不明にされてしまう…)



そう思ったリリーナは、ゆっくりと起き上がった。

めまいもない。一時的かもしれないが魔力が落ち着いたのを感じた。


そうしたところで、リリーナはふと疑問に思ったことをアシュレイにぶつけた。




「お兄様…『送ろうか』ではなく『行こうか』にならない理由がありますの?」




鋭いツッコミに、立ったまま数秒動きを止めたアシュレイ。



「ふむ。するどい、リリーナ。

まるで共に行動しないような言い草、どういうことかな?」



ノーも同様に思ったようで、リリーナと同じくアシュレイを見つめた。

アシュレイは振り返らずに話し始めた。



「ああ…その…

俺はこのまま行方不明として、ここにいるほうがいいと思うんだ。」



「!…どうして…です…?私はそうは思いません。

私に時間を使った分、今度はお兄様の時間を満たしたいのです。」



「俺が戻ったら、家に迷惑がかかる。

リリーナには及ばないが、俺には人並外れた魔力量がある。それにこの属性だ。」



「属性…」



「そう、俺は闇属性。この国では滅多に現れない属性だ。

しかも、過去のこの属性持ちがしてきたことから、その印象は良くない。」



「闇…といえば、影から異形のものを召喚したり、一瞬で物を消し去ったり…と

聞きますね。」



「まあ、世間的には良い印象ではないよね。」



リリーナに続いてノーも話を付け足す。



「さすが長年共に過ごしていただけある、言ってくれるな。」



「そりゃあそうだろう。私は光属性、闇属性と共生なんて

気の張ることをしていたんだからな。」



ノーは鼻をフンと鳴らした。



「だから、犯罪を犯した者、国の隠密になっている者、戦の前線に立つ者など

様々だが、属性を聞いたものはほとんど眉をひそめる。そんな奴が家にいるとどうだ?


当時は風魔法と属性を偽っていたけれど、成長した今はもう

溢れ出る魔力の気配から気づかれてしまう。家に迷惑はかけたくない。」



やっとこちらに振り向いたアシュレイの表情は、

少し悲しげでどうしようもない怒りが滲み出ていた。



「だから帰らない…どこの家がそんな属性ごときで家族を疎むと思います?」



「それがだな…」



「家族はみんな知っていますよ、お兄様の属性。

なんなら、食卓での定例の話題でもありましたのよ。」



「え……?」



アシュレイは信じられないと言った表情で、思考が止まっていた。

それを見ながら、リリーナは少し得意げに話し始めた。



「魔力が戻ったので私、色々と思い出したのですけど、

お兄様がよく披露してくださったマジックは、闇属性の魔法ですよね?

一瞬で色んなものを消したり出したりして楽しませてくれましたし。

それを使って、部屋の模様替えも手伝ってくれて、あの時は楽だったなって

お父様がおっしゃってました。」



「…う…」



「あと私が寝られないからって、出してくださった謎の魔導人形も…

ぴょこぴょこうごいて可愛いって、抱きしめて寝てましたが、

あれ実は召喚した小さい魔獣ですよね…?

夜中に様子を見にきたお母様が、何度も驚かされたわって

笑い話のネタとなっていますわ。」



「あ…明け方までに召喚を解いていたからバレてないと思っていた…。」



「ふふっ。わかりましたか?家族はとっくにお兄様の属性は知っていますし

なんとも思っていませんよ。」



それを聞いて、アシュレイは床にしゃがみ込んだ。



「ふぅーーーー…… なんだ…」



そこへソファーベッドから降りたリリーナがきて

彼の背中に優しく手を置いた。



「ですので、『送ろう』じゃなくて『行こう』ですね?

それでもお兄様が、ここでひっそりなんてわがままを言うのでしたら、

私は毎日ここから学園に通いますよ!」



「え…?いや、ま、ま、まてまて。それは嬉し…じゃなくて、そうはいかないだろう、

こんな辺鄙なところから…はぁあ、無茶言うな。

…わかった。

ここに籠るのはやめて、その…リリが言うように

自分の時間を充実させるために動いてみるよ。」



「やった!」



リリーナはノーと顔を合わせてにっこりとした。



「そうと決まれば、早速みんなで戻りましょう!

あ、ただしお願いがあります。」



「…ん?」







学園寮、リリーナの部屋。

窓から夕日が差し込む。



たし、たし。

寮の部屋に現れたのは、リリーナと白猫姿のノー、そして

ロニ…もとい黒猫姿のアシュレイ。



「流石に兄弟とはいえ、人間の姿だと同居は許されないから

ロニでお願いしますね。使い魔登録もしてますし。」



「ああ、この姿には慣れているから問題ない。」



「今度まとまったおやすみには家族に会いに行きましょうね。」



「わかったよ。」

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