メリンダの秘密
「知っていましたけど、さすがに応えましたわ。」
メリンダはポケットからハンカチを取り出すと、下まぶたにそっとあてた。
「私が教室に入る前、狙ったように立ち上がって、入り口まで来たかと思ったら
すれ違いざまに思いっきり地面を踏み込んで、ドアに向かって突進ですのよ。
あれは痛いわ…」
「ん…?」
「まさか今日だとは…入学以来、絶対に接しないように気をつけてきたのに…」
「ちょちょちょ…メリンダ…さま…?」
また1人の世界に入っていくメリンダを引き戻すように、声をかけた。
引き戻されたメリンダは、ハッとして表情を固めると、
「あ、あぁ、わ、わ、わたしったらまた!ごめんなさいね…!えっと…」
と言って、リリーナに向き直り、小さく咳払いをした。
「私、先見の力が少しありますの…。だから、先程のことは知っていましたの。
この力はごく一部の人しか知らせていないので、秘密にしておいていただけるかしら。」
「ええ!すごいです…。そんなすごい能力なのに秘密にしてしまうんですね。」
「そうね。良いこともだけど、悪いことも見えてしまうの。
そしてそれは、私の経験上、避けられないと知りましたの。
どう対策をとっても、強力な補正がかかって結果は変わらない。」
「補正…ですか?」
「ああっ!…とにかく、決められた運命は変えられないの。先程の私への
罪に問われることも、いつ起こるかはわからないけど、知っていたの。
でもやっぱり避けられなかった。」
メリンダは少し悲しそうに俯いた。
それを見て、リリーナも切なくなった。
「そうなのですね。確かに、お辛い能力ですね…。」
「子供の頃からだったから、少しは慣れたと思っていたのだけどね…」
リリーナは考えを巡らす。
自分ができることは何かないのか…
「そうだ!」
今度はリリーナがベンチの背もたれに手をおいて
メリンダにずいっと寄った。
「これからは、私とたくさん話しましょう!」
「え?」
「あの、少なくとも今私と話して、いつものメリンダ様に戻れましたよね…
話すことで、心に溜まったモヤモヤが少し晴れたと思うんです。
なんだか私でも役に立てることがあるなら、協力したいなって。
まあ、勉学の話はまだまだ釣り合いませんけどね!」
そういうと、メリンダがふふっと微笑んだ。
「おもしろい子ね…」
「大丈夫ですよ!運命には逆らえないかもしれないけど
せめて悲観しないように、話して発散しましょう!」
リリーナは力強く言った。
メリンダもそれに応えるように、くっと口角を上げて言った。
「嬉しいわ…ありがとう!ぜひそうさせて!」
「でも、ちょっとお願いがあるの…」




