よく知っているけど、はじめまして
どれくらい経ったか…
リリーナが次に意識を取り戻したとき、目の前に広がる光景に息をのんだ。
地面には芝生。木々に囲まれた空間。
その木には小動物がチラチラと見え、小鳥のさえずりも耳にする。
ごく普通の森の中のイメージだ。
ただひとつ、全てが白いという異様なところを除いては。
「ここは…」
むくりと起き上がり、リリーナは空を見上げて、状況を確認した。
(ソファーに寝て、お兄様から魔力を戻してもらって…
何かにのまれそうな感覚が怖くて……でも…安心して…?)
「難しい顔になっているね。」
ニュッと現れた何かに、突然リリーナの視界が塞がった。
「ひぇっ……!!!」
何の気配すら感じなかったところからの出現に
かなり驚き、リリーナは思わずその場からささっと後退りをした。
「あぁ、ごめんね。びっくりさせちゃったね。
でも早くリリーナと話がしたくてさ、つい…!」
そう言う人物は、またこの世界と同じ。
白いローブに包まれ、白い長髪で薄いゴールドの目を持つ端正な顔立ちの人物。
性別…不詳。
リリーナは、その人物に興味を持たれているようだと知り、尋ねてみた。
「あなたは…?」
「うん。久々に戻ってきた、君の魔力だよ。ノーとでも呼んで。」
「私の…魔力…?」
「そうだよ、魔力が人?って顔してるね。魔力はそれぞれ保持者に対して
何か合図をするときに、視認できるように形を成すことがあるんだ。
その形はそれぞれで、動物だったり、物だったりする。
リリーナの魔力は、この人間の姿がそうってことだよ。」
「…は…ぁ。」
理解が追いついていないような返事に対して、ノーは少しクスッと笑うと
手をリリーナの頭にポンポンとやり、空を見上げた。
「ま、やっと戻ってこれたんだ。
これからはゆっくり話して楽しく過ごせるね。
…あ、そうだ。リリーナ、お茶しようよ。」
「ええ、…はい…。」
リリーナは、このノーという人型が自分の魔力だというのはわかった。
実際に自分の魔力と対話をするのが不思議で、もう少しこの人の話を
聞いてみたいと思って、誘いに応じた。
目を覚ました場所から少し歩いて見ると、開けた場所にガゼボがあった。
花で装飾された柱、それに舞い寄る白いアゲハ蝶。
そこには丸テーブルと、丸い座面で華奢な装飾の背もたれがついた椅子が二脚置いてあった。
テーブルの上には、アフタヌーンティーセット。淹れたての紅茶に
リリーナが好きなケーキやクリーム系の甘々スイーツがたくさん乗っていた。
(スイーツ…!)
とは思うものの、冷静を装っていると、
「ふふっ…もう、目がキラキラしてるね。」
と、ノーにすかさず見抜かれた。
「や…いえ…美しいスイーツだなと思って…」
と、取り繕ってみたものの、自分の意思を共有する
自身の魔力に嘘は通じない。
「はい、大好きです。好きなものばかりで心が躍りました。」
「ふふ、じゃあ座って。」
その人に促され、椅子に座ると、2人でのティータイムが始まった。
「お…おいしい…!」
急に現れた自分の魔力に少しは警戒していたものの、ティータイムが始まると
スイーツの美味しさにそんなことは解けて消えてしまった。
実際、あちらもそう言うつもりもなく、単純に話をする場として楽しんでいるようだった。
「でしょう?離れていたけど、少しだけリリーナの中に残っていた魔力から
ちゃんと情報を得ているからね、君の好きなものは全て承知しているよ。」
「う…やっぱりそうですよね。」
「さぁ、何から話そうか…
君の人生、後半は急激にハードになったよね。
ひとまずは、お疲れさま、かな。」
その言葉にリリーナの手が止まった。
「え…待って…どういう?
…私の人生が終わったような風に聞こえるんですが…」
それに対して、ノーはニコニコとしながら言った。
「うん、もうすぐ終わるよ。私がリリーナの意識を解放しない。
そうなれば、いずれ生命活動も終わる。」
「どうして…!?私、ここにずっといる気はないわ…!
お兄様にも戻るって約束したし、勝手に決めないで!」
リリーナは椅子を立つと、ノーに対して激しく怒りをぶつけた。
ノーはそれを見ると、少し目を開き驚いていた。
「だめだよ。君は小さい時から、魔力がないことに悩んだりしてたし、
学園でも嫌なことを見てきたり、命に関わるような危険なこともされてきた。
十分辛い目にあったからここにいるといい。
…ゆっくり休もうよ?」
「でも…!」
「君がニジェゴフの天変地異を起こした張本人と言っても、受け止められるかい?」
「… … え …?」
「ちょっと昔話をさせてもらうよ。」
ノーはそう言うと、リリーナも小さく頷いた。




