魔力を戻して…!
「うっ…うぅ…っ…」
突然の別れ宣言に、後から後から出てくる涙を止められるはずもなく、
リリーナは泣きじゃくっていた。
”…リリ…。”
ロニは困った表情で、リリーナの太ももに前足を乗せ、下から覗き込んでいた。
「…うぅ…ぇ…」
ぽす…ぽす…
リリーナに乗せた小さな前足で、かろうじて届く彼女の肘あたりを
何度か触れてみたが、泣きやむことはなく、反応はもらえなかった。
ロニは自分の前足を見つめて、少し切ない顔をした。
”この姿じゃ、頭すら撫でてやれない…”
そう言うと、目を閉じて自らをあっという間に黒いモヤに包むと
それがどんどん大きくなり、先程の黒服の人間姿と変えた。
そうして、リリーナの後ろに周り、そっと包み込むように抱きしめた。
左手では優しく彼女の頭を撫でながら。
「ふっ…う…」
「…ちょっと落ち着こう。
リリの気持ちはわかったよ。」
「ロニ…ぃ…私、助けたいよ…うぅ…」
「うん…」
「いなくなっちゃ…だめだから…」
「うん…わかった。」
そこまで会話を交わして、しばらくそのままでいると、
リリーナも少しずつ落ち着きを取り戻してきたようで
肩を揺らす頻度が減ってきた。
そうして、話ができる状態になったところで、リリーナが口を開いた。
「あの…ね。私、魔力が戻っても、さっきあなたが言った
不幸は起きないんじゃないかと思ってるの。」
「どうして…?」
「確信は持てないのだけど、今、ロニから伝わってくる私の方の魔力…
何かを言いたそうな感じがする…の。」
「そうなの…か?こんなに俺の中で暴れている魔力が
リリと話したいなんて…?」
「伝わってくるの…ううんと…でも、暴力的なものじゃなくて、
なにか純粋なこと…?な、気がする…」
「それって、このまま俺が持ったままで、話し合えないのか?」
「だめ!…それじゃあロニが辛いのが変わらないじゃない!」
「でも…!長年俺が持ち続けた魔力だから、変質していたとしたら、
リリに戻った瞬間にどうなるか…もしかしたら暴走するかもしれない。
許容量に収まり切らず、魔力にくわれて魔人になるかもしれない…
…俺は…怖いよ。リリを失いたくない。このままで…いよ」
一旦承諾はしたものの、心配事が先行して、一歩踏み出せないでいるロニ。
だが、リリーナから発せられた、次の発言で、ロニの心は大きく揺らぐこととなった。
「大丈夫。私、自分のためにこの魔力と向き合ってみたい…!
それに、あなたはいつも…私を守ってくれている…
でももう、これからは自身の幸せに目を向けて欲しいの…
アシュレイ…お兄様…!」
「…!」
背後でロニの全身がピクリとなり、硬直するのをリリーナは感じた。
「な…なんだ、どうしたんだリリ?お、お、俺はお前の兄になった覚えはないぞ。」
人間姿のロニはふいっとそっぽを向くと、耳をキュッと触った。
「ふふ…。6歳より前の記憶がないとは言ってたけど、断片的には覚えてるのよ?
お兄様は、嘘をつく時は耳をさわる癖がある。猫の時もしてたわ。」
「こ、こんなの、たまたまだろう……」
「そうかな…?私のことを『リリ』と呼ぶのはこの世にお兄様だけしかいない。
これも…たまたまなの……?」
「… …」
それを聞いて、ロニは黙ってしまった。
そうして、後ろから抱きしめているリリーナの右肩あたりに顔を寄せ
耳にキスでもしそうなくらい近づいて、耳元でそっとつぶやいた。
「あたり。」
耳にかかる吐息に、少々びっくりして、耳を押さえながら、彼を振り返るも、
それはそれで顔が近くなって…彼のフードに顔を突っ込んだ形になったけど
ドキドキした。
「か、か、からかっていますよね??」
「ふふ、…まったく、鋭い妹だね。俺の負けだよ。」
そういって、口角をあげると、左手で撫でていた頭をくしゃくしゃと
大きく撫でた。
「とにかくですね!私の魔力のせいでお兄様はやりたいことができなかったのです。
そして、私は守られすぎ。自分の魔力だから、自分でなんとかできないとダメ。
しっかり向き合って、自分のものにする!お兄様を守るわ!!」
「ふー、昔から、一度決めたら曲げないのは変わらないな。
こうなったらもう、俺もお手上げだ。」
「じゃあ…」
「うん…魔力を戻すから、頑張ってみろ…」
そう言うと、アシュレイは、フードをあげて初めて顔を見せた。
綺麗な銀の長髪がこぼれ出て、うっすらと目にかかる。
その目もなんとも神秘的なグレーで、猫の時とはまた違う深い輝きを持っていた。
口元はうっすらと笑みを浮かべていて、拝みたくすらなった。
久々に思い出させてくれた。これが、メリンダが言っていた『尊い…』か、とリリーナは思った。
そんなアシュレイだったげが、
リリーナをじっと見つめていたかと思うと、急に自分の頬をリリーナの頬につけて
まるで猫のようにすりっと頬を撫で付けた。
(やわ…すべすべ…?)
「んんんっ…!!?お、おにぃい、さ…ま…!?」
仰天してのけ反り、ソファーから落ちそうになったところを
すかさずアシュレイが腕で支えた。
「死ぬなよ。絶対に。戻ってきたら何でも言うこと聞いてやるから。」
(なんでも…何でも…ナンデモ…!!?)
「なんでもですね!約束しましたよ?」
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