とうとう会えた
ドドッ!
ぎゃうんっっ…!!
…ドサ…
(…え…?)
目の前で起きたことが理解できなかった。
(何が…)
リリーナの目に映ったのは、一瞬現れた黒い壁。
それが襲いかかる狼魔獣を防いだのだ。
壁が消える頃には、跳ね飛ばされた魔獣が今、目にしているような
横たわった状態になっていた。
サワ…サワ…
後ろから近づく気配に気づいたリリーナは
振り向き、その主を確認した。
それは見覚えのある…探していた人物。
「あ…あの時の…?」
黒服に黒いローブを被った人物。
くつろぎの会で木々が暴走した事件の時に
助けてくれたあのお方だ。
フードを深く被っているため目元は見えないが、
口周りから伺うに、青年に見えた。
彼は、リリーナが先ほど造り出した枝のドームに触れると
瞬時に消し去った。
そして、リリーナの前に立つと
そろそろ立ち上がってきた狼魔獣に向かって手のひらを向ける。
瞬時に黒いモヤがそれを包みこむ。
次に彼がぐっと手を握ると、同じように黒いモヤもぐしゃっと小さくなり、
魔獣ごとちりとなって消えた。
残った禍々しいゲートは
それに向けて、人差し指で上から下へなぞるような仕草をすると
同じように上から下へスッと消えてしまった。
全てがあっという間に片付いた。
リリーナはまたもや理解が追いついていなかった。
ただ、助けてもらったのは明白だ。
「ありがとう…ござい…ます。」
リリーナは黒いローブの彼を見上げて言うと、
彼は振り向いて、リリーナの頭に手を置いた。
親指だけを動かし小さく撫でてぼそっと言った。
「がんばったな」
覚悟を決めていたリリーナだったが、その言葉に胸のあたりが
じわっと熱くなるのを感じた。
それは目まで上がってきて、視界がゆらゆらと揺れた。
「は…い…」
尚も乗せられている頭の手が、今度は少し左右に動かされた。
「あ…っ!!ああ…!!」
背後で様子を見ていたマリエナが、急に声を出し始めた。
マリエナは目を見開き、黒いローブの彼を見て震えながら口を開いた。
「あぁ…、銀灰様…!!とうとうお会いできましたね!
…私をお迎えに来てくださったのね…!」
そう言いながら、ふらりと彼の元へと寄っていく。
(…銀灰??)
マリエナの口から出た名前に驚いた。
(この方のことを銀灰と…。まさか彼が銀灰の悪魔…?)
メリンダから聞かされていた溺愛ルートの『マリエナの恋愛対象』
であるらしい彼。
10年前のニジェゴフの天変地異の原因と言われる人。
森を一瞬で作り出す事ができるほどの魔力の持ち主で、人嫌い。
この10年、姿を表した話題なんてなかったのに、確かに現れた。
リリーナは改めて彼を見たが、彼は頭に置いた手を離すとマリエナの方を向いた。
(また…マリエナさんの魅了にかけられるんだ…)
くつろぎの会で、セラドをマリエナに連れて行かれた時の、切ない気持ちを
思い出した。
さっきマリエナが言っていた、魅了をキャンセルしてしまうほどの魔力は
今はリリーナからは到底出ていないと感じていた。
(見ているしか無い…)
マリエナが手を伸ばし、彼の元に辿り着こうかというところ。
彼も手を伸ばして受け止めようとした
…わけではなく。
銀灰は口角を下げると、マリエナの足元に黒い稲妻を落とした。
「きゃっ!」
かわいく尻もちをつき、上目遣いをしながら
「大丈夫ですよ?私はあなたのこと全て受け入れますわ。」
そう言うものの、マリエナの目は動揺し、まるで物語の内容が違うと
言わんばかりの表情も笑顔の裏に見えた。
「寄るな!」
といって、軽く握った右手を上に向かって開くと、マリエナの前に
黒い炎が噴出し、これ以上来られないようにした。
そして、ローブを翻し、動けないでいるリリーナを包み消した後、自らも消えた。
「ええ…なんで…?どういうこと?一緒に行くのは私のはずよ…?」
マリエナが呆然としながらぼそっと呟いた。




